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日本肥満学会 肥満症治療薬・ウゴービの適正使用でステートメント発出 PMDAも周知

公開日時 2023/11/30 04:50
医薬品医療機器総合機構(PMDA)は11月29日、日本肥満学会が策定した「肥満症治療薬の安全・適正使用に関するステートメント」をPMDAホームページなどで周知した。ステートメントは、2024年2月発売予定の肥満症治療薬・ウゴービ皮下注(一般名:セマグルチド、製造販売元:ノボ ノルディスク ファーマ)の適正使用を注意喚起するもの。ステートメントでは、ウゴービは「肥満症」の治療薬であり、減量と減量による健康障害の改善が医学的に必要な対象に限って適正に使用されるべき薬剤だと指摘。健康障害を伴わない「肥満」は同剤の適応にはならないと強調した。

ステートメントでは冒頭に、ウゴービは「肥満症治療薬であり、適応となる疾患である肥満症に対する十分な理解のもと、安全・適正に使用されることが望まれる」と記載した。そして、▽健康障害を伴わない(したがって肥満症とは診断されない)肥満に用いるべきではない、▽低体重や普通体重など適応外の体重者に対し美容・痩身・ダイエット等の目的で用いる薬剤ではない――という点に「十分留意すべき」とした。

◎「肥満」と「肥満症」は異なる概念 肥満だけではウゴービの適応にならない

ステートメントでは、ウゴービの適応症、安全性、最適使用推進ガイドラインの遵守――のそれぞれで声明をまとめた。

ウゴービの適応症である「肥満症」については、肥満症診療ガイドライン2022を引用する形で、「肥満に起因ないし関連する健康障害を合併するか、その合併が予測され、医学的に減量を必要とする疾患と定義されている」とした。具体的には、肥満(BMI 25kg/m2以上)に加え、減量によりその予防や病態改善が期待できる「肥満症の診断基準に必須の11の健康障害」のいずれかを伴うものを肥満症と診断し治療の対象とする、と解説した。

11の健康障害は、1)耐糖能障害(2型糖尿病・耐糖能異常など)、2)脂質異常症、3)高血圧、4)高尿酸血症・痛風、5)冠動脈疾患、6)脳梗塞・一過性脳虚血発作、7)非アルコール性脂肪性肝疾患、8)月経異常・女性不妊、9)閉塞性睡眠時無呼吸症候群・肥満低換気症候群、10)運動器疾患(変形性関節症:膝関節・股関節・手指関節、変形性脊椎症)、11)肥満関連腎臓病――となる。

その上でステートメントでは、ウゴービの効能・効果である「肥満症。ただし、高血圧、脂質異常症又は2型糖尿病のいずれかを有し、食事療法・運動療法を行っても十分な効果が得られず、以下に該当する場合に限る。▽BMIが27kg/m2以上であり、2つ以上の肥満に関連する健康障害を有する、▽BMIが35kg/m2以上」を詳細に解説。「すなわち、肥満症の中でもBMIが35kg/m2以上である場合は高血圧、脂質異常症又は2型糖尿病のいずれかを有する場合、27kg/m2以上35kg/m2未満である場合は、高血圧、脂質異常症又は2型糖尿病のいずれかに加えて、11の健康障害のうちのいずれか1つを含め、計2つ以上の健康障害を有する場合、保険適用となる」とした。

ウゴービの使用時に注意すべき点も記載。肥満症治療の基本である食事療法・運動療法・行動療法をあらかじめ行っても十分な効果が得られない場合で、薬物治療の対象として適切と判断された場合のみ考慮することを求めた。また、内分泌性肥満、遺伝性肥満、視床下部性肥満、薬剤性肥満等の症候性肥満の疑いがある患者では原因精査と原疾患の治療を優先するよう指摘した。

なお、「肥満」とは、「脂肪組織に脂肪が過剰に蓄積した結果BMI25kg/m2以上を示す状態」のことだと説明。「肥満と肥満症は異なる概念であり、肥満は疾患ではないため、この存在のみでは本剤の適応にならない」と指摘した。

◎インスリン製剤、SU薬、グリニド薬との併用で「低血糖を来す可能性が増大」 十分注意を

ウゴービの安全性に関しては、糖尿病の有無にかかわらず単独で使用する場合には、「低血糖を生じるリスクは少ない」とした。ただ、他の血糖降下薬、特にインスリン製剤、スルホニル尿素(SU)薬、グリニド薬と併用する場合は「低血糖を来す可能性が増大することに十分な注意を払う必要がある」と指摘した。

また、血糖降下薬を不適切に減量すると、「望ましくない高血糖や急性代謝障害を引き起こす可能性もある」とし、「糖尿病に対する治療が行われている場合には、投薬を含めた治療状況を十分に把握した上で本剤による治療を行うことが望ましく、糖尿病治療を行っている医師が処方するか、糖尿病治療を行っている医師と十分に連携をとった上で処方するべき」だとした。

添付文書に記載のある「重大な副作用」や「特定の背景を有する患者に関する注意」などにも注意を払うよう求めた。投与の中止や中断は、「医師の管理下で行われるべき」とし、中止後の健康障害の変化などに十分注意するよう指摘した。

ウゴービは最適使用推進ガイドラインの対象品目のため、ステートメントでも同ガイドラインに記載のある施設・医師要件、患者要件、投与の継続・中止の判断基準――を遵守して使用するよう求めた。

ウゴービは週1回皮下投与の持続型GLP-1受容体作動薬。GLP-1受容体を介して、脳における食欲の調節機構に対して作用することなどにより、肥満症患者に対して体重減少効果を発揮することが期待されている。23年3月27日に承認され、11月22日に薬価収載された。製造販売元のノボ ノルディスク ファーマは24年2月22日に発売予定と発表している。
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