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がん研究10か年戦略(第5次)を4大臣合意 DCT、RWD、PRO活用した研究手法確立で革新的新薬創出

公開日時 2023/12/27 04:52
高市早苗科学技術政策担当相、 盛山正仁文科相、武見敬三厚労相、斎藤健経産相の4大臣は12月25日、「がん研究10か年戦略(第5次)」を合意した。新規モダリティに基づく新薬開発の加速や、ドラッグ・ラグ/ロスの課題をあげ、それらを解消する新規薬剤・治療法の開発研究を推進する方針を明記した。日本主導の国際共同臨床試験による新薬創出を推進するほかDCT(分散型臨床研究)を活用した新規薬剤・治療法の開発、リアルワールドデータ(RWD)を活用した臨床試験の手法に関する研究なども盛り込んだ。さらに患者の多様な価値観に対応するためPRO(患者報告アウトカム)を用いた研究手法の確立にも取り組む。

がん研究10か年戦略(第5次)は、今年3月に閣議決定した「第4期がん対策推進基本計画」の全体目標を実現するための政策課題と、具体的な研究事項を明確化したもの。①がんの予防、②がんの診断・治療、③がんとの共生、④ライフステージやがんの特性に着目した研究、⑤がんの予防、がんの診断・治療の開発、がんとの共生を促進するための分野横断的な研究-について具体的な研究テーマを列挙した。

◎ドラッグ・ラグ/ロスの解消に向けた未承認薬や適応外薬に関する臨床試験の実施

医薬品関係では、米国を中心とした新規モダリティに基づくバイオ創薬の潮流や、中医協でも議論となったドラッグ・ラグ/ロスの顕在化に対する課題認識を明示し、その解決策を踏まえた新規薬剤・治療法の開発に政府を取り組む必要性を強調している。具体的研究事項では、ドラッグ・ラグ/ロスの解消に向けた未承認薬や適応外薬に関する臨床試験の実施や、ゲノム解析、マルチ・オミックス解析等によるバイオロジーに基づく疾患区分を踏まえた新規薬剤・治療法の開発に資するバスケット型・アンブレラ型の臨床試験を推進するとした。

また、既存薬剤のドラッグリポジショニング等の適応拡大を目的とした臨床試験やバイオエンジニアリングを駆使し、より広範な治療対象への拡張を狙うプラットフォーム型治療(再生医療、武装化抗体、がんワクチン等)開発に関する研究なども視野に入れた。さらに二重特異性抗体等の改変型抗体、ネオアンチゲンワクチンを含むがんワクチン、CAR-T細胞療法・TCR-T 細胞療法の遺伝子改変T細胞療法をはじめとする新規技術開発に関する研究などにも取り組む。

◎新規薬剤の創出を目的とした日本が主導する国際共同臨床試験

このほか、日本を含む欧米先進国を中心に行われている国際共同臨床試験について、日本が主導するスタディをベースに新規薬剤の創出を行う考えを盛り込んだ。また、これらを実現するためのDXの活用として、被験者が医療機関を受診せず、在宅で臨床研究に参加できるDCT(分散型臨床研究)の手法確立や、遠隔手術等の遠隔医療による新たな治療法の開発に関する研究なども明記した。さらにリアルワールドデータ(RWD)の活用を含む新規治療・技術の有効性・安全性の検証および実装に係る臨床試験やRWDの活用等により少数例で新規治療法の有効性を検証できる臨床試験の手法に関する研究などにも取り組むとした。

◎患者ニーズに応じた新たな標準治療の確立 「PRO」で多様な価値観を評価

一方で多様な患者ニーズに応じた新たな標準治療の確立では、「がん患者やその家族等の多様なニーズへの対応を目的とした患者報告アウトカム(PRO=Patient Reported Outcome)やその他の患者の多様な価値観を評価する方法に関する研究」についても明記された。

政府は、個々のがん研究の進捗状況や、がん患者を含む国民のニーズ等を正確に把握した上で、基本計画の見直しも踏まえ、本戦略の中間評価と見直しを行うとした。なお、実行期間は、「各研究成果を臨床現場まで届けるには一定の期間が必要とされる」ことや、基本計画との関係等も踏まえ、「2024年度からのおおむね10年程度」とした。 
 
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