【FOCUS 医師が有効と考える情報源】「MR」2年連続首位で完全復権 「時間軸」意識した活動が重要
公開日時 2024/01/31 04:52
ミクス編集部が医師850人を対象に「有効と考える医薬品の情報源」を調査したところ、「MR」が2年連続で首位をキープし、コロナ禍を通じてインターネットに譲ったポジションを完全に取り戻した。ただ、MRとの面談はリアル回帰にあるものの、医療機関の訪問規制やアポイント制などで面談数はコロナ以前に比べ伸びていない。医師側はリアルとネットのハイブリッド・アプローチをMRに期待した。一方で、Web講演会等の視聴後に行った医師の行動を調べたところ、「視聴内容に疑問を感じたが問い合わせしなかった」との回答が開業医41.0%、勤務医32.7%となり、視聴直後の「時間軸」を意識したアプローチの重要性が改めて問われた。
調査は、m3.com(エムスリー)の登録医師850人(開業医400人、勤務医450人)を対象にインターネットで調査したもの。調査結果は2月1日発行のMonthlyミクス、ミクスOnlineで詳報する。
編集部はコロナ禍を経て医師がどのように医薬品情報にアクセスしているかを調査した。コロナ感染が拡大した2021年~22年の情報源トップはインターネットが首位に躍り出たが、前回調査(23年版)で「MR」が首位に返り咲き、今回の24年版調査で2年連続トップをキープするなど、完全復権を果たした。なお、23年5月以降のMR活動は、コロナに伴う訪問自粛要請が徐々に解除されたことから、リアル面談への回帰傾向が高まっており、医師が知りたい医薬品の情報をMRから直接聞く機会が増えていることを浮かび上がらせている。
◎医師がリアル面談する企業数 1週間で「1~3社」が全体の5割
ただ、気になるのは、医師がリアル面談する企業数を調査したところ、1週間で「1~3社」が全体の5割を占め、1人の医師が直接会うMRを限定しているということ。コロナ以前のように医局や病院の廊下での立待ちができないなかで、医師とのコミュニケーション機会をどう作るかは課題だ。MRにとって1回あたりの面談精度を向上させ、医師の嗜好やニーズを把握し、社内にある様々なデータとベンチマーク分析できるスキルが求められている。
◎医師がMRから入手したい情報 開業医「専門医と非専門医の連携」 勤務医「医療ビッグデータ」
今回の調査では、医師が「MRから入手したい情報」について聞いた。第1位は製品情報で全体の6割強を占めた。注目したポイントは、製品の「安全性情報」がわずかながら「有効性情報」を上回ったところ。近年は希少疾患や難病などアンメット・メディカルニーズの高い革新的医薬品が数多く上市されており、医師側も承認時のデータに加えて、有害事象を含む安全性情報を求める傾向にある。「有効性・安全性」の時代から、「安全性・有効性」を意識した活動が求められている。また、開業医・勤務医の違いでみると、開業医がMRから入手したい情報として「専門医と非専門医の連携」を上げたのに対し、勤務医は「最新の医療ビッグデータ(レセプト情報、診療情報)」をあげた。
◎機会損失を防ぐ 時間軸(タイムライン)を意識したアクションができるMR目指す
医師のインサイトを見る限り、「MR」を通じた医薬品情報へのアクセス意欲に変化はない。むしろ革新的な新薬が数多く上市される状況において、迅速かつ深い情報を求めている。一方で、コロナ禍など社会的背景を踏まえて、リアルでの面談機会が思うほど伸びていないことに加えて、ネット情報に対する医師側のアレルギーも殆ど感じられず、リアルとネットを組み合わせた情報提供活動が定着していることが明確化された。ただ、ネット情報が多用されることで、医薬品の情報流通に対する「時間軸」の概念に変化があるように感じられる。
Web講演会の「視聴内容に疑問を感じたが問い合わせしなかった」との回答があるということは、MR活動において「機会損失」を生んでいることにも他ならない。一方で、医師が抱いた疑問に対し、「メールでMRに問い合わせた」や「電話でMRに問い合わせた」との回答も少なからず存在している。MRにとって、医師からのリアクションを受ける「想像力」、「対応力」が求められ、加えてコロナ以前に無かった概念として、「タイムライン(時間軸)」を意識したアクション(アポイントや面談の依頼)をいかに展開できるかが重要になってきた。
◎「こんなMRなら毎回会いたい!」
なお、今回の調査では「こんなMRなら毎回会いたい!」についても聞いた。第1位はフットワーク、第2位は“的確な質問への回答”だった。そこに一つのヒントが隠されているのではないかと編集部は考えた。詳細なデータを含めてミクス2月号をご一読いただきたい。
(ミクス編集長 沼田佳之)