日本調剤 長生堂製薬の製造管理上の不備に伴う影響額40億2600万円 株式非公開化のコメント避ける
公開日時 2025/05/15 04:51

日本調剤は5月14日の2025年3月期通期決算説明会で、長生堂製薬の製造管理上の不備に伴う医薬品製造販売事業の通期業績への影響額が計画比マイナス40億2600万円に及んだと公表した。業績のマイナス影響は主に自社品および受託品の売上減少に伴うもの。製造停止に伴う医薬品原薬の廃棄等で営業利益も計画比マイナス15億円となった。日本調剤の笠井直人社長は、「私どもグループとして、この度の行政処分を重く受けて受け止め、再発防止および品質管理の向上にグループ一丸となって取り組む」と強調した。また、一部報道にあった株式の非公開化について笠井社長は、「当社は従来から企業価値向上に向けて様々な経営戦略上の可能性を検討しており、その一環として非公開化に向けた入札プロセスを実施しているのは事実」と認めながらも、「それ以上のコメントは控えさせて頂きたい」との回答に終始した。
日本調剤の25年3月期連結業績は、売上高は前年同期比5.9%増の3605億1200万円。営業利益は31.8%減の62億円3900万円となった。調剤薬局事業における処方箋枚数が増加する一方で、医薬品製造販売事業における製造管理上の不備によるマイナス影響がみられた。このうち医薬品製造販売事業は、売上高は前年同期比0.7%減収、営業損失は6億円。24年12月の新規薬価収載4成分7品目の販売が堅調に推移したものの、24年4月の薬価改定による影響に加え、長生堂製薬の川内工場における製造管理上の不備による影響が業績伸長の足を引っ張った格好だ。
日本調剤の笠井社長は、医薬品製造販売事業の品目ポートフォリオに触れ、「全体の販売品目は減少しているが、収益性向上が見込まれる自社製造品比率は増加傾向にある」と指摘。「業界再編による少量多品目ビジネスから軌道修正が求められ、製造品目の選択と集中を図る流れとなっている」と認識を示しながら、「注目商品のリソース集中を通じて1品目あたりの生産量を増加させ、自社製造品比率を引き上げて、生産の効率性を推進したい」と強調した。
◎日本ジェネリック・井上社長「増収基調を維持しながら品目の絞り込みを行った」

日本ジェネリックの井上社長(長生堂製薬社長兼務)は、「我々が取り組んでいるのは、品目の選択と集中、いわゆる品目統合になる」と述べ、「フルラインナップにこだわるのでなく、得意品目に設備や人的リソースを集約する考え方をずっと進めている」と説明。「ピーク時680近くあった品目を25年3月末に434品目まで増収基調を維持しながら絞り込んだ」と明かし、「やっぱり製造の“塊”を作ることによって1品目単位の生産量を増やすことによって、生産効率を上げ、原価低減を図っていくという動きを随時やっている」と強調した。
井上社長はまた、「重要なのは開発戦略。強みの調剤現場の意見を集約するなどで力はついてきた。あとは販売力だが、少人数のMR体制なので病院内での採用薬は若干劣勢の部分はあるが、つくば工場・第2工場の品質管理、製造管理は高く評価頂いており、売りたいという会社もあることから、他社の営業チャネルを活用する取り組みも実際出てきている」と期待感を示した。
◎調剤薬局事業 2025年3月から5年間 「構造改革および収益性改善の期間に位置づけ」
笠井社長は調剤薬局事業の成長戦略について、「2025年3月から29年3月期までの5年間を構造改革および収益性改善の期間と位置づけ、抜本的な取り組みを推進する」と断言。その一つとして「既存店舗の収益性改善や統廃合」に取り組む姿勢を鮮明にし、「構造改革を行っても改善の見られない不採算店舗は閉局する」と強調した。また、これ伴い生じた人的リソースを収益性の高い店舗やエリアに集中させて収益性の改善に取り組む方針を明示した。
また調剤業務の機械化による効率化を推進するとし、約100店舗に導入した調剤ロボットを今後約5年間で全国店舗へと拡大するとした。また、業務効率化の観点からは、「AI薬歴」の活用を進める。さらに、今後のAIを活用して高レベルで標準化された店舗運営を行うため、「AIエージェント」の薬局業務への活用も検討する。このほかにも笠井社長は。「人口減少の影響を受けにくい地域を中心にハイブリッド型の出店を強化し、厳格な出店基準のもと、引き続き自力出店を中心としながらも、M&Aによる追加での出店を検討する」との方針を示した。