佐藤製薬 日常の気付きから爪白癬の受診啓発に 医療用医薬品部門で初のTVCM制作
公開日時 2025/06/30 04:52

ふとしたことで気付く足先の異変、それって爪白癬かも―。日本人の13人に1人が感染しているとされる爪白癬の推計患者数は約1000万人。ただ、実際に受診しているのはわずか1割程度にとどまる。そんな隠れた疾患への気付きや受診につなげようと、佐藤製薬はこの春、医療用医薬品部門では初となるTVCMを制作した。臨床現場の声も取り入れながら、登山家の野口健さんが出演したCM製作の舞台裏を医薬マーケティング部次長の芝野太郎さんと同部の宮澤忠さんに聞いた。
◎推計患者1000万人の“身近な疾患” 臨床現場の声を基に「爪の異変は皮膚科へ」
「じいじの爪、なんか変だよ」「えっ、そう?」。孫とのやり取りから爪の異変に気が付くおじいちゃん。そこへ「その爪の変色・変形は、爪水虫かも。治療するなら皮膚科へ」と呼び掛ける。制作したCM「孫の指摘」編の一幕だ。実際に子どもや孫に指摘をきっかけに受診する患者も多いという臨床現場の声を基につくられた。「年のせいかな、と思われがちだが、実は爪白癬という病気かもしれない。CMを通じて身近に感じてもらい、『爪の異変は皮膚科へ』という行動変容につなげてもらいたい」とのメッセージが込められているという。
爪白癬は進行すれば爪の変形や痛みにつながり、歩きにくくなるなど日常生活に支障を来すことも。白癬菌がうつることが主な原因とされ、放っておけば家族にうつしてしまうかもしれない。CMでは、飄々としたやり取りやコミカルな音楽が印象的だが、そんな疾患の特徴もきっちり伝えた。
◎世界的アルピニストの野口健さん起用 長丁場の撮影も「気さくに雰囲気づくり」

CMキャラクターに起用された野口さんは、現役で世界の山に挑戦を続ける言わずと知れた世界的アルピニスト。過酷な環境下での経験から足や爪のケアの重要性を知り尽くし、幅広い世代に親しまれていることから白羽の矢を立てた。早朝から夜遅くまで長丁場のCM撮影にもかかわらず、「疲れを一切見せず、スタッフや僕らにも気さくに話しかけてくれた。現場の良い雰囲気がCMにも表れた」(宮澤さん)と撮影の舞台裏も明かしてくれた。
◎爪白癬の認知率向上、市場拡大に成果 「患者と医療機関つなぐ架け橋に」
CM制作は2023年10月に始まった「足と爪からはじめる健康幸福プロジェクト『あしふく』」の一環。これまでも新聞やSNSでの疾患啓発や市民公開講座などを展開しており、「さらに広く取り組みを知ってもらおう」とCM制作に踏み出した。佐藤製薬と言えば、ユンケルをはじめとして数多くのCMを手掛けるが、意外にも医療用医薬品部門としては初めて。「特にテレビCMはハードルが高く、企画として走り出すまでにもチャレンジの連続だった」と振り返る。

数々のハードルを乗り越えて完成したCMは、爪白癬の受診が増える季節を前にこの4月に放映された。放映後の効果検証は現在進行中だが、同社によると、CM視聴者の爪白癬の認知率はそれ以外の人に比べて約2倍になった。また、爪白癬を適応症とする薬の市場拡大につながるなどの一定の成果も見られているという。芝野さんは「あくまでもゴールは患者さんが疾患を治していただくこと。疾患啓発を通じて、患者さんと医療機関をつなぐ架け橋としての今後も担っていきたい」と意気込みを語った。