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中医協薬価専門部会 外国平均価格調整で米国価格の除外、適用限定を視野 外資系企業に影響も

公開日時 2017/01/26 03:52

中医協薬価専門部会が1月25日開かれ、外国平均価格調整の抜本的見直しに着手した。昨年、乾癬治療薬・トルツが高薬価となったことから問題視されており、薬価制度の抜本改革でも、8項目の柱の一つとされている。この日の薬価専門部会では、診療、支払各側から、保険制度の違いや自由価格であることなどから、「米国での価格を除外すべき」との声が相次いだ。制度の趣旨があくまで価格の”調整”であることから、大幅な薬価引き上げとなるケースを除外するなど、対象を限定した制度運用を求める声もあがった。米国系企業など外資系企業の薬価への影響があることも想定される中で、“米国ファースト”を掲げるトランプ政権となった影響を懸念する声も各側からあがった。厚生労働省保険局の中山智紀薬剤管理官は、「しっかり覚悟をもって検討していきたい」と不退転の決意で臨む姿勢を示した。

外国平均価格調整は、薬価算定方式によらず、外国価格とのかい離が大きい場合に米、英、独、仏の4か国の平均額を用いて調整を行う制度。かねてより米国は自由価格で民間保険が主であることなどから、諸外国に比べ高薬価であることが指摘されていた。実際、過去3年間の薬価をみても、米国の価格は平均で日本の3.41倍となっている。また、米国では、実際の市場実勢価格を正確に把握する仕組みがなく、リストプライスを活用している点についても問題視されていた。一部州政府での購入価格は公表されているものの、「公的なもので、患者数などに対して網羅性があるものでの価格の把握はできない」(中山薬剤管理官)のが現状だ。一方で、調整に用いられている4か国はいずれも新薬創出国であり、“世界最大の新薬創出国”である米国の取り扱いの是非をめぐっては議論となっていた。

この日の中医協薬価専門部会では、診療、支払各側から米国の価格を除外すべきとの声があがった。「米国の市場実勢価格を正確に把握できないのであれば外すべきではないか」(診療側・松原謙二委員、日本医師会副会長)、「米国は薬価が自由価格で、民間保険。日本は公定価格で公的保険だ。同様に参照するということには違和感がある」(支払側の吉森俊和委員・全国健康保険協会理事)などの意見が相次いだ。診療側の安部好弘委員(日本薬剤師会常務理事)は、米国が世界最大の新薬創出国であることに理解を示しながら「十分に参考にしながらリストプライスの在り方については参照しない。平均の中に用いないという考え方もある」との考えを示した。


◎加茂谷委員「透明性、公平性の担保の観点からルールの簡素化を」



もうひとつの論点となったのが、外国平均価格調整すべき医薬品の範囲だ。支払側の幸野庄司委員(健康保険組合連合会理事)は、保険医療材料では外国平均価格調整が価格の引下げにしか用いられていないことを引き合いに、「材料と同じように引き上げの場合は、調整の必要がないのではないかということも検討要素ではないか」と提案した。


専門委員の加茂谷佳明委員(塩野義製薬株式会社常務執行役員)は、「対象範囲もさまざまな例がある。対象や適用も限定的となるルールを検討してほしい」と指摘。問題となったトルツでは、企業側からの要求により、外国価格調整による価格の引き上げが行われた経緯がある。類似薬効比較方式で算定されたにもかかわらず、同種・同効薬のコセンティクス(ノバルティスファーマ)、ルミセフ(協和発酵キリン)の倍の1日薬価となった。そのため、すでに同種・同効薬が市場に存在するにもかかわらず、外国平均価格調整で価格が引きあがるような特殊なケースについては、適用を除外することを求める考えを示した。


また、加茂谷委員は、外国平均価格調整のルールが再三変更してきた経緯があることから、「このルールの適応が補正措置という観点に立つと変遷を繰り返してきている。ルールそのものが複雑になってきている。透明性、公平性の担保の観点から簡素化を考えていただきたい」と訴えた。


米国をはじめとした外資系企業にとって、外国平均価格調整の議論が影響を与える可能性も指摘された。支払側の幸野委員は、トランプ政権が発足したことから、米国の価格を参照価格から除外することで、「(医薬品の流通など)他に影響を与える懸念がないのか」と指摘し、慎重な議論を求めた。支払側の中川委員もMOS協議の議論を引き合いに、米国の製品が公平に扱われることを求めている可能性を指摘し、「相当な覚悟をもってこの議論をしていかないといけない」と協調した。これに対し、厚労省保険局医療課の迫井正深課長は、各国の制度運営が「価格の設定や市場の流通状況は公平公正で、色々な企業に平等に適用されるべきという平等の原則を適用する」ことをもとに成り立っているとした上で、「確かに米国の政権は変わったが、従来も今後も適切な制度運用をしていく」考えを示した。

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