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中医協 費用対効果制度改革でラグ・ロス主張の業界に「一種の脅し」保険償還、保険制度含めた建設的議論を

公開日時 2025/08/07 08:33
中医協費用対効果評価専門部会は8月6日、製薬業界からヒアリングを行った。米国製薬工業協会(PhRMA)が米トランプ大統領の最恵国待遇薬価の導入を引き合いに、日本で費用対効果が拡大されると、「ドラッグ・ラグ/ロスが悪化するリスクが大きく高まる恐れがある」などと発言したことに対し、診療・支払各側から反発する声が相次いだ。診療側の長島公之委員(日本医師会常任理事)は、「ドラッグ・ラグ/ロスが悪化するというような、一種、脅しに聞こえることが非常に多い」と指摘。承認から薬価収載までの期間の短さなどを含めた「相対的な評価」に基づく議論を求めた。支払側の松本真人委員(健康保険組合連合会理事)は各国で医療保険制度や患者負担のあり方が異なるにもかかわらず直接的な比較に終始する製薬業界に対して「思慮がない」と断じた。

◎PhRMA・傳委員 米トランプ大統領令でドラッグ・ラグ/ロス悪化のリスク「大きく高まる恐れ」

日米欧製薬3団体は、「費用対効果評価を価格設定や保険償還の可否判断に使用している他の国では、革新的な医薬品への患者さんのアクセスする機会が大幅に低下している。より限定的な活用を行っている日本でさえ、更なる薬価引き下げと予測可能性の低下をもたらしている」などと批判。「ドラッグ・ラグ/ロスの悪化と、日本と世界の研究開発投資ギャップの拡大を防ぐことが重要」として、「骨太の方針2025 に明記されている通り、費用対効果評価制度導入後6 年間運用されてきた現在、検証は不可欠。制度の拡大ありきで議論を進めるのではなく、現行の運用を見直し、改善すべき」と主張した。

米国研究製薬工業協会(PhRMA)の傳幸諭在日執行委員会委員は、「費用対効果評価制度は、ドラッグ・ラグ/ロスの状況を悪化させないためにも、有用性系加算の評価と価格調整を行う現在の活用範囲を維持すべき」と述べるなど、現行制度の拡大に反対の姿勢を鮮明にした。PhRMAの傳委員はさらに、米トランプ大統領が最恵国待遇の導入に対する大統領令に署名したことを引き合いに、「日本が参照国となる可能性があり、企業が日本での特許期間中の薬価引き下げが米国での価格に波及することを懸念し、日本への新薬導入に慎重になることで、ドラッグ・ラグ/ロスが悪化するリスクが大きく高まる恐れがある」などと述べた。

◎診療側・長島委員「日本の薬価は保険償還に直結。世界でも圧倒的に魅力的なはず」

これに対し、診療側の長島委員は「日本市場の魅力について基本的な認識を確認させてほしい」と切り出した。PhRMAの提出資料に、CEA(費用対効果評価)を使用している国で631日、CEAを使用していない国でも267日とのデータが提示されていることを踏まえ、「日本は新薬承認されれば原則60日で保険償還される。圧倒的に早い。比べ物にならない」と説明。さらに、承認された品目の保険償還の割合についても言及。「日本ではほぼ大部分が償還され、これも圧倒的に優れている」と述べた。そのうえで、「日本の薬価が保険償還に直結しているという意味では、世界においても圧倒的に魅力的なはず。そのことを前提として薬価の制度について議論すべきだと思うが、日本の市場としての魅力をどう評価されているか」と業界側に質した。

◎日本の魅力度認めるも 製薬協・宮柱会長「日本の予見性低さは非常に障壁」

これに対し、製薬業界側はPhRMAの傳在日執行委員会委員は、「非常にベネフィットというか、魅力的だ。これを壊さないでいただきたいというのが我々のお願いだ」と述べた。欧州製薬団体連合会(EFPIA)の青野吉晃理事長も「(薬価収載までの期間の短かさなどは)間違いなく日本市場の魅力。非常に魅力的なアクセスの担保を維持するためにも、この精緻な薬価制度の補完的な位置づけである、そういう観点に立って、ぜひ制度の議論をお願いしたい」と述べた。

一方で、日本製薬工業協会(製薬協)の宮柱明日香会長は、「日本の薬事制度や保険償還は、世界に誇れるスピード感を持った制度だ。スピード感を持って患者さんへのアクセスを作り上げることができているというふうに評価している」と述べた。そのうえで、「薬価制度という観点も含めて鑑みると、薬価がついた後に毎年のように価格が下がるなど、市場としてどう見られているかというと予見性が低い国であると感じられている。新規の医薬品を企業として投資しながら(日本に)持ってくるかどうかという議論においては、やはりこの予見性の低さというものが非常に障壁になっているというのも事実であると考えている」との見解も示した。

◎診療側・長島委員 業界からの意見は「しばしば批判、マイナスの指摘だけ」と苦言

診療側の長島委員は、「業界からの意見がしばしば、極めて批判、マイナス点の指摘だけになっている。例えばドラッグ・ラグ/ロスが悪化するというような、一種、脅しのように聞こえるようなことが非常に多いが、これだけ日本の市場が魅力的であるということを大前提として言っていただきたい。、相対的な評価をしていただかないと、建設的な議論にならない」と苦言を呈した。

◎支払側・松本委員 各国で異なる医療保険制度、負担方法考慮しない業界に「思慮がない」

支払側の松本真人委員(健康保険組合連合会理事)も、費用対効果評価がアクセスを妨げていると“断言”する業界の姿勢に疑問を呈した。松本委員は、「費用対効果評価がアクセスに関する主要因であるかのようにミスリードする。各国で医療に関する保険制度や負担方法も違う。そういうことを踏まえた上での主張でなければ、いかにも思慮がないと指摘させていただきたい」と断じた。

◎「まずはより広い範囲で価格調整することが保険償還の納得性につながる」

また、製薬業界が「骨太の方針2025 に明記されている通り、費用対効果評価制度導入後6 年間運用されてきた現在、検証は不可欠。制度の拡大ありきで議論を進めるのではなく、現行の運用を見直し、改善すべき」と主張したことにも反発。「我々健保連としては、これまでの費用対効果評価の実績から追加的な有用性と費用のバランスをどのように考えるかについては、一定の知見が蓄積されてきたものと認識している。まだ客観的検証が足りないという業界の認識とはかなり乖離があるように感じている」と述べた。

費用対効果評価制度は薬価制度の補完的位置づけであり、「有用性系加算の評価と価格調整を行う現在の活用範囲を維持すべき」とする業界の意見にも見解を表明。「保険者として、薬価はベーシックな部分にプラスの加算がされているという構造になっている。そのベーシック部分も含めて薬価の妥当性を、費用対効果という視点で評価することは極めて重要だ」と指摘。「究極的には保険償還の可否の判断に用いるということも考える余地があると思うが、まずはより広い範囲で価格調整することが保険償還の納得性につながるということは改めて指摘させていただく」と述べた。

◎骨太方針曲解する業界にクギ 骨太方針2025は費用対効果評価の“更なる活用”明記

業界が骨太方針を再三引用していることにも触れ、「“更なる活用に向け”という枕詞がついていることを改めてご指摘したい」と断じた。費用対効果評価をめぐっては、政府が今年6月に取りまとめた骨太方針2025に、「費用対効果評価制度について、客観的な検証を踏まえつつ、更なる活用に向け、適切な評価手法、対象範囲や実施体制の検討と併せ、薬価制度上の活用や診療上の活用等の方策を検討する」と明記されている。


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