ディオバン臨床研究不正 東京高裁二審も無罪 新たな立法措置の必要性に言及も

公開日時 2018/11/20 03:51
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ARB・ディオバンの医師主導臨床研究におけるデータ改ざんをめぐる控訴審で東京高等裁判所は11月19日、薬事法(現・医薬品医療機器等法)66条(虚偽・誇大広告)違反に問われたノバルティスファーマと同社・元社員の白橋伸雄被告を無罪とした一審判決を支持し、検察側の控訴を棄却する判決を言い渡した。学術論文を広告と認定するかが焦点となったが、二審でも、学術論文は「専門家向けの研究報告」であり、顧客誘引性がないことから、広告に該当しないと判断した。一方で、薬事法(現・医薬品医療機器等法)の課題も見えるなかで、「新たな立法措置で対応」する必要性に言及する場面もあった。

白橋被告は、京都府立医科大で実施された医師主導臨床試験「KYOTO HEART Study」の2本のサブ解析でデータ解析を担当。広告資材に活用するため、急性心筋梗塞や脳梗塞での有用性を示すようデータを改ざんし、虚偽データに基づいて執筆させた論文を医学誌に掲載、Webなどを通じて医学界に広く伝播させたとして起訴された。ノバルティスファーマも元社員への監督不十分を理由に両罰規定を問われていた。一審では、「意図的な改ざんだった」など不正を認定した。一方で、「それ自体が購入意欲を喚起・昂進させる手段としての性質を有するとは言い難い」と指摘。薬事法66条1項(効能、効果に関連する虚偽の記事)に該当しないとして、無罪判決を言い渡していた(関連記事)。

◎広告の”準備行為”も誘因性認めず 学問の自由阻害への懸念も

二審でも、一審と同様に、論文掲載が広告に該当するか、が焦点となった。芹沢政治裁判長は、白橋被告らの行為について、「広告の準備行為」と認めるにとどめた。広告の三要件のひとつである誘因性を主観的・客観的に備えていないとして、「顧客を誘引する手段に該当しない」とした。「たとえ、被告人がデータを作成・提供したデータが虚偽で、研究者らを情を知らない道具として利用して、論文を投稿させたとしても、66条1項違反には当たらない」と述べ、実質的な販促行為を主張した検察の訴えを退けた。

芹沢裁判長は、薬事法の立法趣旨や経緯をたどり、これまでも厚労省が学術論文を薬事法による規制対象としてこなかったと説明した。「研究内容に誤りがあると刑事罰を視野に入れて故意か過失かを詮索されかねず、自由闊達な研究の発展が阻害される懸念もある」と指摘。学術論文を規制の対象に加えることで、学問の自由を侵害することへ懸念を示した。一方で、さらに虚偽データを用いた論文掲載について、「何らかの対応が必要だが、第66条1項での対応には無理がある。新たな立法措置で対応することが必要」とも述べた。

◎データ改ざん 東京高裁では事実認定 言及せず


なお、一審では白橋被告のデータ改ざんが認定されたが、高裁判決では事実認定については言及しなかった。

◎ノバルティス「社会的・道義的責任感じる」 

ノバルティスファーマは同日、「再び無罪判決という結果になったが、この問題の本質は医師主導臨床研究で弊社が適切な対応を取らなかったことにあると考えており、社会的・道義的責任を感じている」とのコメントを出し、社会的責任を果たす企業風土・文化への改善を継続する姿勢を強調した。

◎J-CLEAR桑島理事長「医師、製薬企業はモラルを」と警鐘 ”悪しき前例”懸念も

以下、有識者コメント

臨床研究適正評価教育機構(J-CLEAR)・桑島巖理事長
(厚労省・高血圧症治療薬の臨床研究事案に関する検討委員会委員)

我々としては不正を明らかにし、事実関係を質すことがまず大事だと考えてきた。不正論文を広告に用いたことが明らかになっても、法律で裁けないことには課題がある。一方で、あまりに医学論文を縛ってしまうと研究が阻害されてしまう懸念もあり、難しい問題だ。現行では処罰のないなかで、最終的には医師、製薬企業のモラルが重要だ。J-CLEARやメディアの目などを通じた監視システムも必要だろう。ディオバン事件が悪しき前例とならないことを切に願う。 

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