ノバルティス・プリシーノ社長「日本のイノベーションエコシステムに貢献」 日本は「戦略的優先地域」
公開日時 2025/04/18 04:51
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ノバルティス ファーマのジョンポール・プリシーノ代表取締役社長は4月18日、就任後初の会見に臨み、「日本で、基礎研究から発売され、供給、患者さんの下に届くまで、イノベーションのエコシステム全体に貢献する」と表明した。「クリニカル トランスレーショナルリサーチ ハブ」を設置して創薬力強化に貢献するほか、篠山工場(兵庫県)の製造力強化を通じて安定供給を図るなど、日本のエコシステム全体に投資を集中させていると説明した。日本は米国、中国、ドイツに並ぶ「戦略的優先地域」であると強調。「それだけの機会もあり、それだけの患者さんが待っている。しっかり日本の医療に貢献していきたい」と意気込んだ。プリシーノ社長は2024年11月1日付で代表取締役社長に就任している。
◎24年売上高は5.8%増の3576億円 「成長により日本の社会、患者に貢献」
同社の2024年売上高は、対前年比5.8%増の3576億円(薬価ベース)。プリシーノ社長は、日本法人での優先事項として、「まずは何よりも革新的な新薬を患者さんの下に届ける」と強調する。日本の医療ニーズにあわせて開発を推進する考えを表明した。基礎研究から研究開発、製品化、安定供給、患者アクセスまであらゆるフェーズに対して、一丸となって取組み、日本のエコシステムに貢献する姿勢を示した。
プリシーノ社長は、「こういう信念があるからこそ、数字にも表れている」と述べ、25年も成長が継続すると見通した。そのうえで、「成長することは重要だが、成長により、日本の社会、日本の患者さんに貢献することができるからこそ、これからも成長の道を歩み続けたい」と述べた。実際、過去5年間には11の新薬を含む32件の承認を取得したが、希少疾病が15件、小児が14件含まれている。「アンメットニーズの高い患者さんにお届けしており、これは日本政府との整合性もとれている」と述べた。現在は約40の臨床開発プログラムが進行中。5件が申請中、21件が第3相臨床試験段階にあるという。24年には年間約300万人の患者の治療に貢献したといい、30年までには900万人へと拡大する目標も掲げた。
◎創薬力強化 クリニカル トランスレーショナルリサーチ ハブ設置は「ほんの一歩」
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日本の医薬品業界が直面する創薬力強化と安定供給に向けて取組みを強化し、日本のエコシステムに貢献する姿勢も示した。
日本の早期研究開発機能の拡充に向け、国内に「クリニカル トランスレーショナルリサーチ ハブ」を設置し、約50人の人員を増員したFIH試験、早期臨床試験を加速するのが狙い。アカデミアとのパートナーシップを強化するほか、サマーインターンシップへの日本の医学生の参加枠を拡大し、橋渡し研究に携わる人材育成も推進する。
プリシーノ社長は、「投資は、我々が日本の創薬をしっかりサポートしていきたいという気持ちの表れ。そして、これは、ほんの一歩だと思っている」と強調する。同社のアドバンテージとして、「まず、橋渡し研究や早期の臨床試験の能力開発に貢献できるということ。日本のアカデミア、大学病院などと協働し、いわゆる研究施設から患者のベッドサイドまで研究し、我々ノバルティス、米国のバイオメディカルリサーチなどとつなぐことで、日本のエコシステムのさらなる発展にも貢献できると思う」と述べた。さらに、「早期の臨床試験からエコシステムを回すことができる人材育成にも貢献できると思う。色々なプログラムを日本と海外とのネットワークをさらに強化し、将来のイノベーションへとつなげることができると考えている」と語った。
◎安定供給へ 放射性リガンド療法の生産力強化で1億ドルを投資
安定供給の観点からも投資を進める。放射性リガンド療法の生産力強化のため、篠山工場の製造施設拡張に1億ドルを投資した。プリシーノ社長は、「放射性リンガンド治療を日本で、メイド・イン・ジャパンで品質高く供給できるようにしていきたい。日本の患者様に貢献できるということで、誇りに感じている」と述べた。
◎薬価制度改革「希少疾患、小児用医薬品など、アンメットニーズのある領域では追い風」
政府にはイノベーション創出を後押しする「持続的かつ予測可能な政策の実現」の必要性を強調する。薬価制度改革については、「イノベーションが対価を受けるような形にすべきだ」との考えを強調した。「新薬創出等加算など、革新的医薬品に対するサポートの姿勢を日本からいただいていると思う。希少疾患、小児用医薬品など、アンメットニーズのある領域では追い風」との認識を示した。25年度薬価改定については、中間年改定で初めてとなる新薬創出等加算の付与や改定時加算があった。プリシーノ社長は、25年度薬価改定でも、イノベーションの評価が継続していたとの見方を示し、新薬創出等加算の累積額控除を受けた品目があったものの、「ノバルティスファーマとしてはバランスが取れている」との見方も示した。イノベーション重視の政策実現に向けて、官民の対話の必要性も指摘し、「オープンにしっかり参画させていただきたい」と述べた。