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【Focus 改正薬機法案が与党部会審査を通過 薬局・薬剤師への覚悟求める】 

公開日時 2019/03/08 03:51

自民党厚生労働部会・薬事に関する小委員会合同会議は3月7日、改正薬機法について小泉進次郎部会長、松本純委員長一任で了承した。3月中旬にも通常国会に提出できる見通し。薬剤師・薬局の“特定機能”として、かかりつけ薬剤師・薬局機能を発揮する「地域連携薬局」と、がんなどの専門的な薬学管理に他医療機関と連携して対応できる「専門医療機関連携薬局」に分類した。要件という一定のハードルを設けることで、薬剤師・薬局の機能を強化するとともに、薬局や医療機関との多職種連携を後押しする。薬局の機能を“見える化”することで、地域住民にも自身に合致した薬局を選択してもらう姿を視野に入れる。処方箋枚数獲得に走っていた薬局像から、地域包括ケアシステム型へと変革を求める。(望月英梨)

改正法案では、薬局の特定機能として、2つの薬局の姿を明確に示した。一つが、入退院時の医療機関等との情報連携や在宅医療などに地域の薬局と連携しながら一元的・継続的に対応できる「地域連携薬局」だ。退院時カンファレンスの参画など医療提供施設との情報共有や、福祉・介護などを含む研修を受けた薬剤師の配置、夜間休日対応、麻薬や無菌調剤など在宅医療への対応などを要件とする。法改正では、「調剤時に限らず、必要に応じて患者の薬剤の使用状況の把握や服薬指導を行う」義務をすべての薬局に求めるが、さらに一歩進めた“かかりつけ機能”を求める。

◎地域連携薬局と健康サポート薬局との機能の違いも焦点の一つ


地域連携薬局と健康サポート薬局との機能の違いも焦点の一つとなった。厚労省側は、健康サポート薬局は、地域連携薬局の果たす「かかりつけ薬局・薬剤師機能」に加え、「健康サポート機能」で構成されていると説明する。健康サポート機能とは、健康相談の対応や受診勧奨、地域住民に対するお薬相談の実施、健康サポートの研修を修了した薬剤師の常駐などをあげた。一段階目に該当する“かかりつけ機能”は今回の法改正で法制化される一方で、健康サポート機能は施行規則に定められており、省令で定める2段階構造となる。

もう一つが、がんなどの専門的な薬学管理に他医療提供施設と連携して対応できる「専門医療機関連携薬局」だ。学会認定の専門性の高い薬剤師や、専門医療機関の医師・薬剤師と治療方針の共有化に加え、地域連携薬局など地域薬局との服薬情報の共有を要件として求める。

“特定機能”と銘打ち、機能の明確化・強化を進めることで、患者が急性期病院から在宅、介護施設へと移行しても、切れ目のない薬物治療を行うことが期待される。高齢化が進み、複数の疾患を抱え、ポリファーマシーに陥る患者も少なくないが、不要な投薬を防ぎ、地域での薬物治療の標準化が進むことにも期待がかかる。

これらの特定機能を有する薬局は都道府県知事が認定するが、構造設備や業務体制、機能の適切な発揮を実績により確認するため、1年ごとの更新とする考え。申請に際しては、都道府県に届出る、薬局機能情報提供制度を活用することで事務負担を軽減する考え。

◎「テレビ電話等による服薬指導」で医療NW化の進展と診療情報の共有に期待

ICT化が進むなかで、「テレビ電話等による服薬指導」も盛り込まれる。現行の薬機法では、薬剤師による服薬指導は対面であることが求められているが、「初回等は原則対面」、「かかりつけ薬剤師による実施」、「緊急時の処方医や近隣医療機関との連携体制確保」などを求める。すでにオンライン診療が2018年4月の診療報酬で位置づけられたが、これにオンライン服薬指導も加わることで、患者を中心に医師、薬剤師、さらに訪問間技師や介護職との連携ネットワークがシステム化される。同時に診療情報も患者を軸に医療者間で共有化されることになり、いよいよ診療情報を介した多職種連携ネットワークの構築にも弾みをつけることにもなりそうだ。

このほか、対物業務の効率化も求められるなかで、在庫する医薬品を調剤棚に入れることなどは調剤助手でも行うことを可能にするなど、業務の効率化についても検討を進める考えだ。

【新しい機能に薬剤師・薬局はどう応えるか 自民党小委・松本純委員長】

「国民や患者さんが選択しやすい、わかりやすいサービス提供にしようということだ。国民が理解しやすい表現にするなど、課題は残っているが、機能がそれぞれになっているという期待が込められている。薬剤師・薬局がそれにどう、応えていくかということだ」-。自民党厚生労働部会薬事に関する小委員会の松本純委員長は、本誌に対してこう語った。

2025年にも超高齢社会の到来が想定されるなかで、医療現場は地域包括ケアシステム構築に動く。在宅で過ごす高齢者が増加するなかで、医療現場もこれに対応することは避けて通れない。すでに医療機関は一足早く変化の時を迎えている。地域医療構想の策定、さらには18年度診療報酬改定を通じ、機能強化・連携の流れは強まっている。医療・介護の連携の必要性も高まるなかで、多職種連携はもはや、当然のこととなった。今回の地域包括ケアシステム型の薬局像も、こうした一連の流れの中に位置付けられる。「地域のなかで、どの薬局にかかっても薬をもらうだけ」という時代からは脱却しなければならない。

カギを握るのは薬局機能強化と連携だ。こうした姿を下支えする診療情報の共有化も重要性が増す。いわゆるオンライン服薬指導の導入は当初は限定的とみられるが、オンライン診療から一貫した体制が構築できれば、患者情報の一元管理は一気に実現性が増す。医薬品の観点から言えば、こうした体制が構築されることで、医療現場に深刻な影を落とすポリファーマシーの解決にも期待がかかる。

振り返ってみれば、議論の発端ともなった、2015年の規制改革推進会議では、院外処方のコスト高に焦点が当たり、「負担の増加に見合うサービスの向上や分業の効果が実感できない」と断じられた。法改正を通じて、薬局の機能を明確化することは、薬剤師に変革を迫る一方で、地域医療のなかで地域住民に必要性を実感してもらうことができれば、今や1.8兆円まで膨らんだ調剤報酬の国民負担を理解してもらうことにつながるとの見方もできる。薬剤師・薬局にとっては、“正念場”とも言えるかもしれないが、裏を返せば変わる大きなチャンスともいえる。

全国6万件ある薬局。このうち、健康サポート薬局は1243件(2019年1月31日時点)にとどまるという。すべての薬局がかかりつけ薬局、さらには多職種連携に動くことで、医療のみならず、介護・福祉まで含めた地域で高齢者を支える大きなピースが一つ埋まることになる。新たな医薬分業の時代へと大きな一歩を進める、薬剤師・薬局の”覚悟”に期待したい。

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