日薬連・岡田会長 「中間年改定廃止」の検討を訴え カテゴリーに応じた薬価制度を 衆院厚労委で
公開日時 2025/04/09 06:00
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日本製薬団体連合会(日薬連)の岡田安史会長は4月8日、衆院厚生労働委員会で開かれた薬機法等改正法案をめぐる参考人質疑で、「薬価制度のあり方、特に中間年改定の廃止についてぜひともご検討をたまわりたい」と訴えた。岡田会長は、インフレ局面へと転換し、物価高騰や賃上げが求められるなかで、「財源確保を目的とした予見性のない薬価引き下げが継続されることは、製薬企業にとって医薬品の安定供給や日本での早期の新薬開発を躊躇させる」と強調した。今後の薬価制度のあり方については、「カテゴリーに応じた薬価制度を作っていくということが非常に重要だ」との考えも示した。
◎薬機法等改正法案委は「賛成」 新薬は「介護者の負荷軽減も加味を」
岡田会長は、薬機法等改正法案について「賛成」と表明。「私どものほぼ全ての提案を今回の薬機法等改正案に反映いただいた」と述べた。
一方で、薬価制度についての考えも表明し、「中間年改定の廃止」を改めて訴えた。質問に答える形で、今後の薬価制度のあり方についても言及。現行の市場実勢価格加重平均値調整幅方式が導入された2000年当時から、医療費に占める薬剤比率が下がり、薬価差が縮小されてきたとして、「制度を導入した初期の目的が達成した」との見方を示した。そのうえで、毎年薬価改定が導入されたことを「過剰是正になっている。足下では不採算品を増やし、安定供給問題にもつながっている」と指摘した。
今後は、新薬や長期収載品、後発品、医療上必要性の高い医薬品など、「役割や位置づけに基づくカテゴリーに応じた薬価制度を作っていくことが非常に重要だ」と強調した。特に新薬については、類似薬効比較方式や原価計算方式など現行のルールでは十分な評価が難しいとの考えも表明。「医療上の価値だけでなく、介護者の負荷も落ちることも加味すべきなど、色々な論点がある。引き続き、ご議論させていただきたい」と訴えた。
◎社会保障関係費「医療の高度化反映を」
薬剤費の伸びをGDPの伸びの範囲内とする、いわゆる薬剤費へのマクロ経済スライド導入について問われた岡田会長は、「GDPの範囲内で成長というというよりも、成長産業として、国民の健康寿命の延伸を実現し、国の経済成長を牽引する産業として、むしろ我々が日本のGDPを伸ばすことに貢献してまいりたい」と述べた。そのうえで、社会保障関係費を高齢化の伸び相当分に抑制する方針が継続されていることに言及。「いわゆるデフレから成長経済に変わっている中で、物価・賃金上昇に加え、医療の高度化を反映していただきたい、というのが我々製薬産業の認識だ」と述べた。
◎後発医薬品製造基盤整備基金「構造改革を伴う改革なくして安定供給は戻らない」
後発医薬品製造基盤整備基金についても言及した。供給不安をめぐる課題として、後発品メーカーの少量多品目生産による生産効率の低下が指摘されていると説明。「さらに言うならば、日本における後発品企業が非常に多いことで、どこかで欠品が生じても、どこでどれだけ欠品しているか分からないという中で、それをカバーするような構造になっていないという問題がある」との認識を示した。
そのうえで、「後発医薬品製造基盤整備基金の目的が、品目統合や企業再編に絞られているのは、明確な資金の使途だ。言い換えれば、構造改革を伴うような改革をしないと安定供給がなかなか戻らない、根本的にはなかなか問題が解決しないことが裏にあると思っている」との見方を表明。「国を挙げての後発品使用推進策によって導かれた産業構造問題が、いま一つ大きな問題としてある。安定供給を妨げるそれ以外の多くの因子もあるので、行政とも連携し、企業再編、品目統合だけでなく、あらゆる情報の共有化を含め、できることはすべて手を打って対応してまいりたい」と強調した。
柳本岳史氏(BCGマネージング・ディレクター&パートナー)は、これまで後発品業界で再編が進まなかった理由について、「後発品企業は苦境に陥りながらも日々の収益はしっかり得られている状況で、極端な変化を作りに行くというところになかった」との見方を表明。後発医薬品製造基盤整備基金については、「政府が後押しをすることで、後発品企業が動きやすくなる、金融機関が動き出しやすくなるというところで、資金だけでなく政府としてのコミットメントを示すという観点でも有用ではないか」と期待感を示した。
◎承認書と製造実態の齟齬「“規制が厳しいから”と我々が言うのは本末転倒」
承認書と製造等実態との間に齟齬による品質問題が起きた理由の一つとして、承認書の基準が変更されるなど規制の課題を指摘する声があることを問われた岡田会長は、「“規制が厳しいのでこうなっています”というのを我々が言うのはまさに本末転倒」との認識を表明した。一部変更承認申請についての手続きの簡素化などの必要性を認めたうえで、「我々とすれば、いま定められている法をしっかり遵守し、いかに安定供給と品質確保を保つのかというのがむしろ優先だと思っている」と強調した。
◎創薬力強化 現場の事例に基づいてフレキシブルな対応可能に
薬機法等改正法案の議論を行った厚労省の厚生科学審議会医薬品医療機器制度部会で部会長を務めた福井次矢氏(都築学園日本薬科大学学長)は、議論で重視した点を問われ、「長期的なスパンでは、国民が受ける医療の質向上という点からも、国際的な我が国の立ち位置からも“より活発な創薬が行われる環境の整備”が非常に重要ではないかなと思いながら、ディスカッションに当たってきた」と振り返った。法改正については、条件付き承認制度などを引き合いに、「今までの画一的な法律の適用ではなく、現場でこうした方がいいのではないか、という事例に基づいて、かなりフレキシブルに今回の改正は当たることができたのではないか」と述べた。
根本拓氏(自民)、井坂信彦氏(立憲民主)、梅村聡氏(維新)、浅野哲氏(国民民主)の質問に対する回答。