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エーザイ・井戸CSO 選択的オレキシン2受容体作動薬「E2086」 25年度中P2開始 28年度申請目指す

公開日時 2025/09/12 04:50
エーザイの井戸克俊CSO(チーフ・サイエンティフィック・オフィサー)は9月11日、新規選択的オレキシン2受容体作動薬「E2086」に関するオンライン説明会に臨み、臨床第1b相試験の結果から同剤の1日1回投与でナルコレプシーType1における日中の過度な眠気を改善する可能性が示唆されたと報告した。試験結果はシンガポールで開催した世界睡眠学会(World Sleep 2025:9月5日~10日)で口頭発表された。井戸CSOは、ナルコレプシーType1型、Type2型を対象とした第2相臨床試験を25年度中に開始し、2028年度の承認申請を目指す方針を明らかにした。

「E2086は、私が筑波研究所で研究員またグループヘッドとして統括していた際に創出した化合物で、大変自信があり、想い入れのある化合物だ」-。井戸CSOは説明会の冒頭でこう切り出した。同社はオレキシン創薬分野で実績があり、2020年にはオレキシン受容体拮抗剤デエビゴを日米で上市している。井戸CSOは、デエビゴの開発を通じ、「脳波測定システムやオレキシン神経欠損マウスや細胞探索システムなど研究プラットフォームを構築することができた」と強調。「今度は、オレキシンの受容体を刺激する作動薬が作れないかという思いに至り、開始したのがE2086のプロジェクトだった」と明かしてくれた。

E2086の創薬においては、デエビゴで構築したスクリーニングシステムに加えて、「AIによる脳波自動判定システムを構築した」とも説明する。続けて、「受動態作動薬として理想的なプロファイルを有する化合物を非常に効率的にスクリーニングでき、前臨床において、強力な有効性と十分な安全性を示す開発化合物を見出すことができた」と語ってくれた。

◎アゴニストとアンタゴニストの両方開発 オレキシン領域のリーディングカンパニー

井戸CSOはまた、「アゴニストとアンタゴニストの両方を持っている製薬会社は、恐らく私の知る限りない。オレキシン領域のリーディングカンパニーとして、この睡眠障害の患者に広く貢献していきたいと考えている」と意欲を示した。

◎臨床第1b相試験 E2086(5mg、10mg、25mg)とプラセボ、モダフィニルの5群比較

World Sleep 2025で口頭発表した臨床第1b相試験は、ナルコレプシーType1の診断基準を満たす当事者を対象に、E2086の有効性、安全性、忍容性をプラセボ、既存治療薬・モダフィニルとE2086(5mg、10mg、25mg)の1日1回投与の5群を比較して日中の覚醒度の改善を評価するもの。それぞれ起床直後に単回投与を受け、有効性評価を行った。なお、有効性評価は日中の過度の眠気(EDS)に対する覚醒維持テスト(MWT)による客観評価に加え、各MWT 終了時に改訂版カロリンスカ眠気尺度(改訂版 KSS)を用いた主観的評価を行った。

◎E2086  全用量で「睡眠潜時」の有意な延長認める

その結果、MWTはE2086 の全用量においてプラセボおよびモダフィニルと比較して、覚醒を維持する能力を測定する指標である「睡眠潜時」の統計学的に有意な延長が認められた。一方、改訂版 KSSにおいても、E2086は全用量において、プラセボ、モダフィニルと比較して統計学的に有意な改善を示した。

◎有害事象の発現率 用量依存的に増加する傾向 頻尿などいずれも軽度から中等度

安全性については、有害事象の発現率は用量依存的に増加する傾向を認めた。E2086投与において最も多く認められた有害事象は、頻尿(E2086 5mg: 14.3%、10mg: 23.8%、25 mg: 52.4%)、吐き気(同 14.3%、19.0%、47.6%)、めまい(同 4.8%、23.8%、38.1%)、排尿切迫感(同 9.5%、19.0%、38.1%)。いずれも軽度から中等度で、重篤な有害事象は認められなかった。

◎井戸CSO 1日1回のメリットは大きい 幅広い用量でType1、Type2に使用も

井戸CSOは、1日1回投与のメリットについて、「ナルコレプシーの患者は注意のスコアが下がるようなところもある。飲み忘れのリスクがある中で、1日1回のメリットは大きな点になる」と強調した。また安全性について触れ、「単純な比較はできないが、単回投与における覚醒維持検査(MWT)で40分超のデータもあり、幅広い用量でType1型、Type2型の患者に使っていただける化合物であると期待している」と述べた。

さらにE2086の薬効についても、「覚醒維持検査(MWT)において5mgでも20分超を超える患者もあり、健常人レベルまでしっかり戻せる薬効が取れるベストインクラスの化合物になると思っている」と井戸CSOは強調した。今後の開発スケジュールについては、「ナルコレプシーType1型だけではなく、Type2型を対象とするフェーズ2試験を今年度に開始予定としている。承認申請は2028年度を目指して、現在進めているが、プロトコールを工夫しながら一日でも早く、このタイムラインを縮めながら上市を目指したい」と強調した。
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