レカネマブ 48か月投与でも治療ベネフィット継続・拡大 SC-AI維持療法も有用 治療オプション拡大へ
公開日時 2025/08/01 04:53

カナダ・トロントで7月27~31日に開催された「アルツハイマー病協会国際会議2025」(AAIC)において、エーザイの早期AD治療薬レカネマブを4年間投与した患者の認知機能および日常生活機能はプラセボ群と比較して維持・改善させるとのデータが報告された。このほか早期AD治療の維持療法に用いるレカネマブ360mg皮下注射オートインジェクター(SC-AI)の新規データもAAICに示され、18か月間におよぶ2週1回の点滴(IV)治療後に、週1回SC-AIに切り替えても、IV治療と同等の臨床効果を得ることができたと報告した。今回、レカネマブの長期投与結果とSC-AIの臨床的価値の両方が同時に示されたことで、今後の早期AD治療は、通院を気にせず患者宅で治療できるなど、患者・医療従事者双方の利便性を加味した治療継続へのオプションが広がるなど、新たなステージを迎える。
AAICに今回示した4年間(48か月)の長期投与データは、日米欧の規制当局への申請データとして用いた「Clarity AD試験」に登録した1795人を対象としたもので、18か月間の試験を完了した被験者の95%が、コア試験に続く非盲検長期継続投与試験(OLE)への参加を選択し、478 人が4年間の投与を受けた。
◎レカネマブ・48か月投与 全般臨床症状の進行を1.75 ポイント遅らせることを確認
コア試験とOLEを通して継続投与を受けた被験者の全般臨床症状の評価指標(CDR-SB)の平均変化量の差は、ADNIデータを基にしたADの自然経過による低下と比較して、3年間(36か月)の投与時点-1.01に対し、4年間(48か月)の投与時点では-1.75まで拡大していた。この結果から全般臨床症状の進行を1.75 ポイント遅らせることを示した。加えてBioFINDERデータを基にしたADの自然経過による低下と比較した場合、3 年間の投与時点(36か月)-1.40に対し、4年間(48か月)の投与時点で-2.17まで差が拡大していた。
◎脳内にタウ蓄積が少ない患者への48か月投与 認知・日常生活機能56%改善
このほか、4年間(48か月)の治療後、被験者の全般臨床症状の評価指標(CDR-SB)について、脳内にタウ蓄積が少ない(Low tau)の患者群をみたところ、69%で悪化が認められず、56%で改善が示された。この結果から、「18か月投与時点との比較において、ベネフィットが継続している」と分析している。安全性については、新たな安全性の兆候は観察されなかった。また、アミロイド関連画像異常(ARIA)の発現率は、最初の12か月以降に低下し、48か月にわたって一貫して安定していた。
◎メディカル本部の小川本部長「48か月継続投与で、レカネマブの有効性は維持されている」
メディカル本部の小川智雄本部長は7月31日のメディア向け説明会で、「48か月までの継続投与で、レカネマブの有効性は維持されている。比較対象と比べて差は広がり続けているということが示されており、(長期投与においても)全般臨床症状の進行を遅らせている」と報告した。また、「長期投与のセーフティ・プロファイルは変わらない。新しいセーフティのシグナルも何ら見られていないということが報告されている」と強調した。
◎初期投与後にSC-AI投与移行 IV維持投与と同等の臨床上およびバイオマーカー上の効果維持
AAICでは、レカネマブの皮下注射オートインジェクター(SC-AI)による維持投与に関するデータも発表された。AD は、治療中止後にバイオマーカーの再上昇が生じ、臨床上の疾患進行の速度がプラセボ群と同等となることが分かっている。このためエーザイは、レカネマブの治療継続を可能とするため、18か月の点滴(IV)治療後に継続可能なSC-AI による維持療法の製剤開発を進めていた。
今回示されたデータは、18か月間の2週1回10mg/kgのIV初期投与後に、週1回360mgのSC-AI 投与へ移行した場合の臨床的評価を行うというもの。その結果、IV維持投与と同等の臨床上およびバイオマーカー上の効果が維持されることを示した。月1回投与維持投与による48か月時点での臨床上・バイオマーカー上の効果は、2週に1回の IV 維持投与と同等。この結果は、初期投与18か月時点での脳内Aβの量(アミロイド陽性(>30 CL)または陰性(<30 CL))に関わらず同様に示された。
◎北原部長 「病院以外の場所、つまり自宅で投与できる。長く投与継続できるメリットも」

DHBLクリニカルリサーチニューロロジー日本・アジア臨床開発部の北原靖実部長は7月31日のメディア向け説明会で、初期治療・維持治療それぞれに応じた皮下注製剤の開発を進めていることを明らかにした上で、すでに360mgのSC-AIをFDAに承認申請しているとした。その上で、SC-AIの意義について、「Clarity AD試験の継続投与で48か月のデータにおきましても、長期投与で大きなベネフィットが継続して得られることを確認した」と指摘。「これにより静脈投与に加えて、病院以外の場所、つまり自宅などで投与することができる皮下注製剤の開発は、患者ご家族および医療従事者にとって長く投与を継続する上でもメリットがあると信じている」と強調した。