私は本稿で独立自尊の生き方を提唱してきたが、人間は一人で生きているわけではない。われわれは社会と接点をもつ以上、組織に属し役割を果たさなければならない。自分という存在を確認できるのは組織の中で役割を果たしているからであり、人は組織という舞台を通じて自己実現を図ろうとする存在なのだ。

前回、理念の基盤ともいうべき「バリューズ」を作成した。自分の仕事観が明確になり、自分にとって仕事がどういう意味をもつのか整理できたことだろう。理念を構成するのはミッション、ビジョン、バリューズであることから、今回は残りのビジョンとミッションを作成しよう。

これまでリーダーシップに関する基本的な考え方や枠組みについて解説してきたが、理論を学んだだけで終わらせては意味がない。実際に自分自身の理念を描き、それに基づいた行動をしてこそ独立自尊の生き方になる。

前号では、リーダーシップの本質は「理念を基に共感や感動の輪を広げ、和をつくることにある」として、企業理念の意味とその機能について紹介した。企業が理念を掲げてその実現に向けて活動するように、一人ひとりが自分の理念を掲げてその実現に向けて行動できれば、独立自尊の生き方ができる。それがリーダーシップを発揮した人生である。

ビジネス用語は実にカタカナが多い。コミットメント、コンピテンシー、コンプライアンス…。外来語は日本とは異なる文化や風土の中で育まれシステムとして機能していることから、うまく日本語に訳せない。これらは微妙なニュアンスをもって日本に持ち込まれ、人によって異なるイメージで浸透していく。「リーダーシップ」もそのうちの一つである。

リーダーシップを論じた書籍は星の数ほどあるが、特に、今回の連載においては、主体性を持った働き方、理念を持った生き方をリーダーシップと位置づけたいと考えている。