石川県立中央病院
公開日時 2007/07/31 00:00
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森 正昭
薬剤部長
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病院data
病床数 662床
1日患者数
初診 126人
再来 836人
入院 553人
・院外処方率 81%
・採用品目数 1662品
うち後発品採用率
品目ベース 4.6%
金額ベース 2.5%
・平均在院日数 16日
・紹介率 39%
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チーム医療に貢献する
エキスパート薬剤師の養成を強化
●服薬指導を14病棟で実施
石川県立中央病院薬剤部は23人体制で、そのうち正規職員は17人(薬剤師16人)、嘱託薬剤師は6人。薬剤部長の下には副部長2人、薬剤師長3人を配置している。業務は調剤室、薬品補給室、製剤室、DI室に分かれ、3つのチームがローテーションでそれぞれの業務を担当する。病棟の服薬指導は午前チームと午後チームの2組が担当し、残り1チームは補給、DI、製剤を担当する。
昨年10月から処方オーダリングシステムが導入されて「原則院外処方」に移行したため、その比率は06年上半期の40%台から80%台に急速に高まった。従来服薬指導は、「病棟でのオン・コールの強さや、医局からの要望の強いところから病棟業務に取り組んでいった」こともあり、脳血管診療センター、代謝内分泌、呼吸器、消化器など6病棟で実施していた。現在は、オーダリングシステムの導入と院外処方せん発行の推進で調剤業務の負荷が軽減したことから、服薬指導を14病棟にまで拡大している。6病棟時の月間平均の服薬指導件数は450件、14病棟拡大後は600件となった。「服薬指導支援システムの活用により、今後も効率化を推進して件数のアップに取り組んでいきたい」と話す。
同施設は07年1月に地域がん診療連携拠点病院に指定されたが、外来の化学療法に関しても04年から準備のための委員会を立ち上げ、06年から外来化学療法室を開設し薬剤師1人が半日常駐し、①混注②がん患者への服薬指導などを実施し、月平均で250人ほどの患者に対応している。
薬剤部では専門薬剤師の養成に努力しており、昨年がん専門薬剤師の試験に合格。近々にがん領域のエキスパートが誕生する予定だ。その他に、NST(栄養サポートチーム)専門療法士の資格についても2人、感染症の専門薬剤師についても1人が、それぞれ準備を進めている。ただ、専門薬剤師は多く養成したいところだが、「研修中は現場を離れて負担が大きいために、一度に多人数を養成できない」といい、毎年1〜2人のペースで専門薬剤師を充実していく考えだ。
97年に同施設はエイズ治療の地方ブロック拠点病院に指定された。「通常、全国のブロック拠点施設は大学附属病院や国立病院が担っていますが、このエリアでは県立中央病院が同疾患の治療で中心的な役割を果たしています」といい、そのプレゼンスは大きいといえる。
HIVの服薬指導では「コンプライアンス」の発想から、患者が主体的に「自分自身の医療に自分で責任を持って治療法を守る」、アドヒアランスのコンセプトを重視し、効果的な治療の推進に取り組んでいる。
「HIVはウイルスを制御する目的で多剤併用しますが、耐性の問題からコンプライアンスは95%以上を厳守する必要があります。耐性ウイルスの発生を防ぐため、忘れずに服薬することが必要で、治療初期の段階で、その重要性を説明することは薬物療法の効果の面からも欠かせませんでした」
薬剤師は患者の生活パターンに適した処方と投薬を組み立て、HIVのチーム医療で大きな役割を果たしている。そのため、同施設で治療を受けるHIV患者30人はほとんど問題ない。
同薬剤部ではチーム医療への参画を重視しており、HIVやがん以外にも緩和ケア、NST、じょく瘡、感染制御、クリニカルパス、糖尿病などに積極的に加わっている。
●採用薬剤は1662品目
採用数は1662品目、要事購入品は別に50〜80品目ある。採用数に関しては「適切」との認識だ。「無理やりに採用品目を削るということはしていません。削除は基本的に処方されていない薬剤を対象として実施します。現在、オーダリングが導入されましたので、瞬時に個々の薬剤の動きを把握することができます。処方がない薬剤があれば関係する診療部門にヒアリングして、合意を得た上で削除する予定です」。昨年1年間で削除した薬剤は69品目。2月から注射オーダリングシステムが導入されたのを機に「高カロリー輸液やアミノ酸輸液を整理した」という。
ジェネリック(GE)についてはDPC準備施設で来年度から本格導入するため、現在、院内で準備を進めている途中だ。「基本的に高額な薬剤を対象とし、注射剤から着手していく予定」とし、患者の負担の大きい抗がん剤などで導入を進めていく考えだ。その他に「保険対象外になりますが、既に消毒剤をGEに切り替えて年間数百万円、50%の薬剤費圧縮ができました」。
GEの導入にあたっての基準は安定供給、品質、情報提供の3つ。「この要件を基に適切に判断していきたい」としている。
新規採用は新薬では新しい薬効の薬剤を優先して試用し、試用期間中に薬物療法での必要性を検証し、採用の判断をする。採用プロセスとしては、6ヵ月間の試用期間の後、診療科医師からの申請を薬事委員会で採否を検討し、院長決裁にて正式採用になる。薬事委員会は2ヵ月ごとの開催で、薬事委員長は薬剤部長が務め、その他10人のメンバーがいる。うちわけは、医師7人、薬剤師1人、看護師1人、事務1人。昨年1年間に採用した薬剤は62品目で、エルプラット注やザイボックス、ブイフェンドなどがある。
●吸入指導を実施
患者向けの指導教室は糖尿病教室と呼吸器疾患の患者を対象にした吸入指導を実施している。糖尿病教室は1ヵ月2回開催し、毎回10〜20人が参加する。「薬剤の種類、薬効、副作用、低血糖時の対処法などを説明しています。血糖のコントロールを適切にすることで、糖尿病に伴う合併症を予防することができるため、この教室の役割は重要です」。
その他に、喘息患者のための吸入指導にも取り組む。薬剤カウンター(受付)内のスペースを改造して指導室を設置し、患者1人に15〜30分かけてステロイド剤などの吸入療法を指導している。
●訪問規制は10年前から導入
医局の訪問規制は「10年前くらいから診療部からの要望があって実施した」。火曜日から金曜日までが面談日とされていて、13〜15時と16〜18時までの2つの訪問時間帯が設けられている。製薬企業1社につき、どちらかの時間帯を1回訪問が可能なシステムだ。複数のMR制を採る製薬企業でも1人が訪問すると1カウントとなるので、事前にMR間の綿密な打ち合わせが必要となる。また、面談スペースはラウンジを利用することがルール化されている。MRのプレゼンテーション能力について、「うまく説明できているMRがほとんどで、その質も高い。本社から学術を呼んできて説明をするMRも見ますが、きちんと勉強しているMRが説明をするのなら、わざわざ学術を呼ばなくていいのではないかと思います」。
納品卸は明祥、スズケン、クラヤ三星堂、フレット、井上誠昌堂、協栄薬品の6社。在庫日数は注射オーダリングシステムが稼働したばかりの年度末では10日分となっていたが、現在は5日分までに縮減した。在庫金額は約3000万円。「病棟の在庫がまだ多く、その部分を今後は削減していく」としている。ただ、石川県の中央医療施設であることから、災害や緊急時の薬剤備蓄は削減することができないため、大幅な削減は念頭に置いていない。