日医総研 「IT化施策は管理医療化に」
公開日時 2004/05/10 23:00
日医総研(日本医師会のシンクタンク)は10日、政府が推進する医療分野のI
T化について、医療機関への自由な受診を制限する「管理医療」につながりか
ねない、と警告するワーキングペーパーをまとめた。ワーキングペーパー「医
療IT化の留意点」(研究者=上野智明・日医総研主任研究員)は、政府の総合
規制改革会議(現、規制改革・民間開放推進会議)、IT戦略本部が打ち出して
きた、診療報酬明細書(レセプト)のOCR処理システム、レセプト電算処理、
診療報酬のオンライン請求など、一連のIT化施策を振り返り、その問題点を示
した。
このうちレセプトOCR処理システムは、レセプトに印字された67桁の数字で、
患者、保険者、医療機関などを識別。数字を機械で読み取って、医療機関別、
患者別などで集計することもできる。もともとは審査支払機関でレセプトの仕
分けを自動化するために導入された。医療機関は診療報酬請求用コンピュータ
をこのシステム対応のものに切り替えるなどして普及に協力してきたが、現在
は機械で数字を読み取ったOCRデータを審査支払機関が有償で健康保険組合や
国民健康保険などの保険者に提供している。
ワーキングペーパーは、こうした現状を「医療機関のコスト負担で保険者側の
業務軽減と審査強化が図られる構図」と表現。今の流れに歯止めをかけるには、
(1)患者情報保護の観点から保険者の職員を含む守秘義務の範囲と罰則を明
確化する(2)審査支払機関から保険者へのOCRデータ供与の禁止(3)審
査支払機関におけるレセプト審査ロジックの検証と公開――の3点をまず考慮
する必要があると指摘した。【JPN】