愛知県がんセンター・岩田氏 ハーセプチン適応拡大で患者激減に期待
公開日時 2008/03/04 23:00
愛知県がんセンター中央病院の岩田広治部長(乳腺科)は3月3日の中外製薬
の記者説明会で講演。ハーセプチンがHER2陽性の乳がんの術後補助化学療法
への適応拡大が承認されたことを受けて、「今後は日本でもHER2陽性の再発
患者が激減することが予想される。投与期間が1年限定のため医療経済的にも
メリットがある」と期待感を示した。
ハーセプチンはHER2陽性の転移性乳がんの治療薬として、01年に日本で発売
された。今回新たに取得した適応は、再発抑制を目的としたもの。
承認はHER2陽性の乳がんを対象とした大規模術後補助療法試験(HERA試験)
の結果に基づくもので、39カ国、478施設の協力を得て、5090人が参加(日本
を含むアジア地域では138人が参加)した。同剤を1年間投与した群では、投
与しなかった群に対して再発リスクが36%低下し、死亡リスクが34%下がるこ
とが確認されたため、岩田氏は「インパクトのある結果」と評価した。
安全性面で最も懸念された心臓関連の有害事象では、重篤なうっ血性心不全の
発生がハーセプチン投与群で0.6%と低かった。ただし、添付文書の警告欄に
は「心不全等の重篤な心障害があらわれ、死亡に至った例も報告されているの
で、必ず本剤投与開始前には患者の心機能を確認すること」と明記された。投
与中は3ヵ月ごとの心臓機能のモニタリングや評価が推奨されている。
ハーセプチンの乳がんの再発抑制効果を調べる試験は複数進行中で、HERA試験
では2年間の投与による術後補助化学療法としての効果も調べており、来年の
夏頃に結果が出る見通し。そのほか、投与1年間と6ヵ月の投与での再発抑制
効果を比較する試験も海外(日本は不参加)で行われている。