第一三共と北里研 ワクチン事業の合弁会社設立 ワクチン後進国を打開
公開日時 2010/08/02 04:02
第一三共と北里研究所は7月30日、ワクチン事業を行う合弁会社「北里第一三共ワクチン」(所在地:埼玉県北本市)を設立し、合弁会社が北里研のワクチン事業を継承することで基本合意したと発表した。具体的には、ワクチンの研究・開発・製造・供給を行う北里研の生物製剤研究所の機能を合弁会社に移行する。合弁会社は2011年4月1日に設立予定。資本金は未定だが、出資比率は第一三共51%、北里研49%。代表者は第一三共から選定する。
合弁会社について、第一三共は日本でのワクチン事業本格化に向けた基盤とする考え。一方、北里研は、90年以上の歴史を持つ北里研のワクチン事業が持続的発展する好機になると判断した。
第一三共の中山讓治社長は同日に東京本社で会見し、2009年の新型インフルエンザ大流行の際にワクチンを輸入に頼らざるを得なかったことを引き合いに、「十分なワクチンが供給できず、大変悔しい思いをした」と語った。その上で、「(合弁会社は)歴史と伝統を持つ日本のワクチンメーカーと製薬企業との融合体で、高品質なワクチンを安定供給し、日本の公衆衛生や予防医療環境の充実・普及、更にはパンデミックに対する危機管理体制整備に貢献していきたい」と強調し、ワクチン後進国とされる日本のワクチン環境を日の丸連合で変えていく意気込みを見せた。
会見に同席した北里研の柴忠義理事長は合弁会社への期待として、▽今後ワクチン事業を発展させていくために必要な投資が可能になる▽株式会社の経営手法を導入することで、生剤研の資産(優秀な人材、技術、設備など)をより生かした経営が可能になる▽学校法人では難しい迅速な意思決定が可能になる――などを挙げた。
◎第一三共 サノフィパスツールとの合弁契約解消 「当初の設立目的を達成」
一方、第一三共とサノフィ・アベンティス(以下、SA)は同日、第一三共とSAグループのワクチン事業部門であるサノフィパスツールとの合弁会社「サノフィパスツール第一三共ワクチン」(以下、SPDSワクチン社)の全株式を、SAグループが取得することで合意したと発表した。SPDSワクチン社は11月1日付でSAグループの完全子会社となり、社名を「サノフィパスツール」に変更する。
合弁契約の解消は、合弁会社設立時の目的のひとつだったインフルエンザ菌b型(ヒブ)結合体ワクチン「アクトヒブ」の日本での開発・上市に成功したことが大きな理由。11月以降、アクトヒブの製造販売承認は新社サノフィパスツールが保有するものの、販売は引き続き第一三共が行う。また、現在開発中の4種混合ワクチン(百日咳、破傷風、ジフテリア、不活化ポリオ混合ワクチン)についても、これまで通り、第一三共、SA、サノフィパスツール、北里研で共同開発する。