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HPVワクチンのキャッチアップ接種 17~27歳の接種率49.5%、未接種者320万人 8月末時点 M3総研

公開日時 2024/10/04 04:50
医療データの調査・情報発信を目的としたシンクタンク「エムスリー総合研究所(略称:M3総研)は10月3日、HPVワクチン(子宮頸がんワクチン)のキャッチアップ接種の接種率が8月末時点で49.5%にとどまるとの調査結果を発表した。これはキャッチアップ接種の対象となる17~27歳の同ワクチンの接種率で、この対象年齢全体の未接種者数は推計約320万人にのぼることも示した。M3総研は、厚労省が同ワクチンの効果として公表している“1万人が接種を受けると約20人の命が助かる”との試算を引き合いに、「このままでは約6400人の命が失われてしまう可能性がある」と指摘している。

HPVワクチンをめぐっては、積極的勧奨が一時的に中止された世代を中心に接種機会を提供するため、17~27歳を対象とする公費によるキャッチアップ接種が行われている。公費での接種は2025年3月末までということもあり、M3総研は同ワクチンの接種率などをエムスリーが構築したリアルワールドデータベース「JAMDAS」をもとに調査・分析した。

◎積極的勧奨中止の17~24歳 接種率35.0%、未接種者290万人に

調査の結果、積極的勧奨が一時的に中止されていた世代である17~24歳にしぼると、同ワクチンの接種率は35.0%とさらに低水準にとどまり、未接種者数は推計290万人となることが判明した。キャッチアップ接種の未接種者の9割を17~24歳が占めることになる。

◎全額公費のキャッチアップ接種 1回目期限は11月28日 「本当に最後」

同ワクチンは3回接種する必要があり、3回目の接種完了まで基本的に6カ月かかる。このため全額公費で接種を完了するには今年9月末までに1回目を接種する必要があるが、医師の判断で4カ月で接種を完了することもできる。

M3総研の外海実所長(写真右)はこの日に都内で開いたメディアセミナーで、「4カ月の『短縮接種』の仕組みを利用して公費で接種を完了するには11月28日までに1回目を打つ必要がある」と説明し、「一人でも多くの命を救いたいとの思いで、(このタイミングで)セミナーを開催した」と述べた。

セミナーに登壇した医師の木下喬弘氏(みんパピ!みんなで知ろうHPVプロジェクト副代表、写真左)は、HPVワクチンの接種は「最終的には一人ひとりに判断してもらうこと」とした上で、「(様々な病気の中で)エビデンスが確立していて、有効性がわかっている予防法はほとんどない。320万人もHPVワクチンが打たれていない日本の状況は、一人の医療従事者として非常にもったいない」と話した。

そして、キャッチアップ接種の未接種者に対し、「子宮頸がんは予防できる病気。ぜひ接種を検討いただきたい」と呼びかけ、全額公費による接種期限が11月28日であることに「本当の本当に最後。これを逃すと自費になる」と強調した。

◎がん闘病中の古村比呂さん 「予防と検診は違う」 ワクチンによる予防の理解を

メディアセミナーでは、12年から子宮頸がんで闘病中の俳優の古村比呂さんが木下医師とのトークセッションに立った。司会からキャッチアップ接種対象者に対するメッセージを求められた際、「罹患者として今一番思うこと」として、子宮頸がんの予防と検診の違いを理解することを挙げた。

古村さんは、「私たち世代は、子宮頸がんは検診で予防できるとのリーフレットをいただき学んできた。ワクチンは怖いと思ったら、検診で大丈夫と思ってしまうのが自然な流れだった」と振り返った。

そして、「私は子宮頸がんと長く付き合ってきて、予防と検診は違うということをショッキングに受け止めた。ちゃんと聞くと、予防はワクチンで予防、検診は早期発見だった」とし、「この違いを保護者や当事者がわかっていたら、ワクチンや検診との向き合い方は大きく意味合いが変わってくる。(ワクチンを)受けられる年齢は明らかに違う。こういう学び直しを私はやっていきたい」と話し、ワクチンによる”予防”を理解する重要性を訴えた。

また、これまでに複数回の再発を経験したことから、「子宮頸がんは早期発見、早期治療であっても、医療として100%ではないことを実感している」と言い、「100%でないからこそ、がん治療の日進月歩があり、私はここにいるとかみしめている」とも語った。治療では、子宮頸がん対する新薬が「偶然にも承認され、承認の数か月後から(新薬による)治療を受けられた。今もこの治療が受けられるのが奇跡的なことと思っている。非常に有り難いこと」だとも話した。
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