薬食審・第一部会 11製品を審議
公開日時 2010/08/27 04:02
厚生労働省の薬食審・医薬品第一部会は8月26日、11製品を審議し、うち10製品の承認を了承した。10製品は9月下旬にも予定される薬事分科会に上程される。今回、了承されなかったのは、武田薬品が2型糖尿病治療薬として申請したリオベル配合錠で、次回10月以降の部会で引き続き審議することになった。理由について同省審査管理課の担当官は、「厚労省の配合剤に対する基本スタンスと、その中のこの薬剤の位置づけを説明したが、委員から、その点を改めてしっかり示していただいたうえで審議したいとの意見があった」と説明している。
リオベルは、DPP-4阻害薬アログリプチン(製品名ネシーナ錠)とチアゾリン系薬剤ピオグリタゾン(同アクトス錠)を配合した薬剤。同課は、この薬剤の「安全性や有効性に問題はない」としており、事務局の説明が部会委員に十分に理解されなかったことをうかがわせた。しかし、委員が、厚労省が示す配合剤の要件(患者の利便性の向上や配合の科学的合理性など)そのものに疑問を持っているのか、薬剤そのものに疑問を持っているのかは明確ではなく、担当官は「これから整理する」と述べるにとどめている。今回了承され、順調にいけば10月にも正式承認、年内にも発売の運びだったが、次回部会で了承された場合でも、承認・発売は来年以降にずれ込むことになる。
今回了承された10製品は次のとおり。この中で分科会で改めて審議されるのは、慢性特発性血小板減少症紫斑病の治療薬レボレード錠のみ。他は報告扱い。
▽献血ヴェノグロブリンIH5%静注2.5g/50mL(一般名:ポリエチレングリコール処理人免疫グロブリン、申請者:ベネシス):「多発性筋炎・皮膚筋炎における筋力低下の改善(ステロイド剤が効果不十分な場合に限る)」を追加する新効能・新用量医薬品。オーファン。再審査期間10年。海外承認なし。
▽インヴェガ錠3mg、同6mg、同9mg(パリペリドン、ヤンセンファーマ):「統合失調症」を効能・効果とする新有効成分医薬品。再審査期間8年。リスペリドンの活性代謝物で、ドパミンD2受容体拮抗作用ならびにセロトニン5-HT2A受容体拮抗作用を持つ徐放型の非定型抗精神病薬で、海外では92ヵ国で承認済み。
▽ワンデュロパッチ0.84mg、同1.7mg、同3.4mg、同5mg、同6.7mg(フェンタニル、ヤンセンファーマ):「非オピオイド鎮痛剤及び弱オピオイド鎮痛剤で治療困難な中等度から高度の疼痛を伴う各種がんにおける鎮痛(ただし、他のオピオイド鎮痛剤から切り替えて使用する場合に限る)」を効能・効果とする新剤形医薬品。再審査期間4年。現行は3日おきに貼付するが、今回の1日1回貼付する製剤。
▽マキュエイド硝子体内注用40mg(トリアムシノロンアセニド、わかもと製薬):「硝子体内手術時の硝子体可視化」を効能効果とする新投与経路医薬品。再審査期間6年。米国で承認済み。
▽バイエッタ注5μgペン300、同10μgペン600、同10μgペン300(エキセナチド、日本イーライリリー):「2型糖尿病(ただし、食事療法・運動療法に加えてスルホニルウレア系薬剤(ビグアナイド系薬剤又はチアゾリン系薬剤との併用含む)を使用している患者で十分な効果が得られない場合に限る)」を効能・効果とする新有効成分含有医薬品。再審査期間8年。GLP-1受容体作動薬で、類薬のノボノルディスクファーマのビクトーザが6月に発売されている。
▽レボレード錠12.5mg、同25mg(エルトロンボパグオラミン、グラクソ・スミスクライン):「慢性特発性血小板減少症紫斑病」を効能・効果とする新有効成分含有医薬品。オーファン。再審査期間10年。37ヵ国で承認済み。新規作用薬剤であるため、薬事分科会で改めて審議する。
▽ヒュミラ皮下注40mgシリンジ0.8mL(アダリムマブ遺伝子組換え、アボット・ジャパン):「強直性脊椎炎(既存治療で効果不十分な場合に限る)」を追加する新効能医薬品。再審査期間は平成28年4月15日まで。74ヵ国で承認済み
▽ミンクリア内用散布液0.8%(l-メントール、日本製薬):「上部消化管内視鏡検査における胃蠕動運動の抑制」を追加する新効能医薬品。再審査期間4年。海外承認はなし。
▽ラディオガルダーゼカプセル500mg(ヘキサシアノ鉄(ⅠⅠ)酸鉄(ⅠⅠⅠ)水和物、日本メジフィジックス):「放射性セシウムによる体内汚染の軽減」を効能・効果とする新有効成分含有医薬品。再審査期間8年。原発事故時の緊急時に使用する。米独で承認済み
▽リリカカプセル25mg、同75mg、同150mg(プレガバリン、ファイザー):「末梢性神経障害性疼痛」を追加する新効能医薬品。再審査期間は平成30年4月15日まで。現在の効能・効果は「帯状疱疹後神経痛」だが、今回、糖尿病性の神経障害など、効能・効果を広げる。100ヵ国以上で承認済み。
塩野義とエーザイの適応外薬2成分4適応の公知申請了承 近く保険適用
26日の部会は、ドラッグ・ラグ問題の改善を進めている厚労省の「医療上の必要性の高い未承認薬・適応外薬検討会議」で、公知申請が妥当と判断された適応外薬5成分のうち、同部会が所掌する2成分について事前審査を行い、公知申請することを了承した。
了承されたのは、▽治療抵抗性の全身性エリテマトーデスなどリウマチ性疾患を追加予定適応とするエンドキサン(一般名:シクロホスファミド、会社名:塩野義製薬)▽血栓塞栓症の小児適応を追加予定とするワーファリン(ワルファリンカリウム、エーザイ)。
同省は25日、検討会議の判断を経た適応外薬について、薬食審の事前審査で公知申請が了承された場合は、半年程度かかる正式承認を待たずして、公的健康保険を適用する方針を決めている。そのため今回の2つの適応外薬は、近く保険適用となる。
そのほか検討会議が公知申請が妥当と判断している▽ハイカムチン(ノギテカン、日本化薬):追加予定適応「ハイカムチン注射用1.1mg初回化学療法が無効の再発卵巣がん」▽ゼローダ(カペシタビン、中外製薬):「治癒切除不能な進行・再発の胃がん」▽ジェムザール(ゲムシタビン塩酸塩、日本イーライリリー):「卵巣がん」の3成分については、30日の第二部会で事前審査が行われる予定で、了承されれば、今回の2成分と同様の対応が取られる。