破裂動脈瘤への瘤内塞栓術 効果と安全性が向上
公開日時 2011/01/26 04:00
術者の経験、補助療法の有効活用背景に
第26回日本脳神経血管内治療学会学術総会
シンポジウム「破裂脳動脈瘤に対する血管内治療の治療成績はここまで来た」
破裂脳動脈瘤に対する瘤内塞栓術は、完全塞栓率が高くなると同時に手術合併症率や術早期の再破裂が低率に抑えられ、より安全で確実な治療法となってきた。この背景には、術者の経験蓄積やデバイスの改良、高いadjunctive technique(補助技法)併用率がある――。久留米大学医学部脳神経外科准教授の廣畑優氏は第26回日本脳神経血管内治療学会学術総会で開かれたシンポジウム「破裂脳動脈瘤に対する血管内治療の治療成績はここまで来た」で11月18日、1997年以降の12年間の同大学病院での瘤内塞栓術の治療成績からこのように報告した。
解析対象は、コイル塞栓術を第一選択とした破裂脳動脈瘤連続333例。これを①前期(1997~2003年)196例②後期(2003~09年)137例――に分けて治療方法、合併症、転帰などを比較検討した。
前期と後期で患者平均年齢、性別内訳、くも膜下出血の重症度スケールであるHunt and Hess(H&H)分類のグレード分布に有意差はなかった。動脈瘤の発症部位が内頚動脈、 中大脳動脈、前大脳動脈の3種類で8割前後を占めることや、くも膜下出血のCTによる分類であるFisher分類でグループ2(血液がびまん性に存在するか、すべての垂直層に1mm以下の薄い層を形成 しているもの)の割合等も共通していた。
手技は単純コイル塞栓術が低下
ダブルカテーテル法、バルーンネック形成術が増加
また、手技では前期で単純コイル塞栓術が86.7%とほとんどを占めていたが、後期では52.5%に低下し、ダブルカテーテル法(16.8%)やバルーンネック形成術(26.3%)を援用する症例が増加。また、使用コイルは前期が全例で離脱型プラチナコイル(GDC)、後期ではGDC81例以外にED35例、Trufill31例、Micrus31例、Terumo15例と多様化していた。
終了時血管撮影所見では完全塞栓例(complete)が前期53%、後期62%と後期で治療成績が向上していた。
一方、手術合併症である術中破裂は前期4.1%、後期2.2%、脳卒中が前期3.1%、後期2.2%、術後入院中の再破裂率も前期3.1%、後期1.5%で、いずれも後期で低率だった。
退院時転帰はGlasgow Outcome Scale(GOS)でグレード5のGood Recovery(後遺症がないかわずかに障害を残すが元の生活に戻れている)およびグレード4のModerate Disabled(ある程度の神経学的・知的障害があるが,日常生活を自立しておくることが出来る)の良好例が前期78.6%、後期76.7%で若干後期が低かった。
ただし、後期ではH&H分類でグレードⅣ(混迷状熊で、中等度から重篤な片まひがあり、早期除脳項直および自律神経障害を伴うこともある)以上の状態が悪い症例が多いと廣畑氏は指摘し、これを原因に治療成績が低下したとの考えを示した。
逆に退院時の転帰がGlasgow Outcome ScaleのSeverely disabled(身体的・精神的障害のため,日常生活に介助を要する)、Dead(死亡)の割合は、グレードⅣ(混迷状熊で、中等度から重篤な片まひがあり、早期除脳項直および自律神経障害を伴うこともある)では前期45.7% 、後期26.3%、グレードⅤ(深昏睡状熊で徐脳硬直を示し、頻死の様相を示すもの)では、前期100%、後期90%で、状態が悪い症例での治療成績は後期で改善がみられたとした。
そのほか、廣畑氏は国内で定期的に脳動脈瘤の治療実績を調査している多施設の「RESAT」研究では、コイル塞栓術の予後良好(GR+MD)率が85%弱から90%強に達しているのに対し、予後良好(GR+MD)に相当する神経症状評価スケールのmodified Rankin Scale(mRS)0[症状なし]~2[軽度の障害]の症例比率が74.6%であるとして、日本国内でのコイル塞栓術が世界的に見ても成績が良好との見解を示した。