FDA アクトスの使用上注意に膀胱がんのリスクを追記
公開日時 2011/06/17 04:02
米国食品医薬品庁(FDA)は6月15日、2型糖尿病治療薬・アクトス(武田薬品、一般名:ピオグリタゾン)と同剤を含む薬剤について、ラベルの警告と使用上の注意に、「1年以上の服用と、膀胱がんのリスク増加との関連性がある可能性がある」旨を追記すると発表した。黒枠警告ではないものの、安全性情報が強化された形だ。患者向けのMedication Guideも改訂する方針だ。
今回の処置に伴い、医師には膀胱がん患者への投与しないよう求めたほか、膀胱がんの既往歴がある患者には、血糖コントロールにより得られる“ベネフィット”と、がん発症リスクとを勘案した上で、用いるよう注意喚起した。
患者にも、膀胱がんへの罹患率が上昇する可能性があるとした上で、血尿や尿意切迫、排尿時疼痛、背部や下腹部の疼痛などの症状があった場合は、すぐに医師に相談することを求めた。
◎“1年以上”でリスク上昇 根拠は観察コホート研究の中間解析
すでに、同剤の膀胱がん発症リスクはラットの実験で報告されてきたが、今回の安全性情報のエビデンスとなるのが、同剤の10年間の安全性データを検討する観察コホート研究(KPNC研究)の5年追跡時点の中間解析結果だ。
対象は、40歳以上の糖尿病患者19万3099例。試験開始前、または開始後6カ月以内に膀胱がんを発症した患者は対象から除いた。主要評価項目は、膀胱がんの診断(発症を含む)で、ピオグリタゾン投与同剤の用量、投与期間、交絡因子についても検討した。
1997年1月~2008年4月末までのデータによると、追跡期間(中央値)は2年間(0.2~8.5年間)。年齢、性別、喫煙などを補正すると、ピオグリタゾン服用群、非服用群では主要評価項目の発生率に差はみられなかった(ハザード比:1.2、95%CI:0.9~1.5)。
しかし、ピオグリタゾン12カ月以上服用していた患者では、非服用群に比べ、40%のリスク増加がみられている(ハザード比:1.4、95%CI:0.9~2.1)。24カ月以上服用していた患者のハザード比も1.4(95%CI:1.03~2.0)で、有意に24カ月以上服用群で高いリスクを示している。FDAはこのデータを基に、12カ月以上服用していた患者では、非服用群に比べ27.5例/10万人・年多く発症すると試算している。
FDAは、今後も継続して、同試験の結果を評価するとしており、フランスで実施された疫学研究の結果も併せた包括的なレビューを行う姿勢も示している。
なお、同剤は、ピオグリタゾン単剤製剤であるアクトスに加え、メトホルミンとの合剤(Actoplus Met、Actoplus Met XR)、グリメピリドとの合剤(Duetact)が販売。2010年1月から10月までの間に、小売薬局で約2300万人の外来患者に処方されている。