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五十の手習い

公開日時 2011/07/26 04:00

 

 

50歳にしてはじめての転職に挑むTさん。彼は、我々に面接の基本のアドバイスをもとめてきた。

 

__

 

Tさん(50歳)は大学院を卒業してから25年の社会人生活で、はじめて転職をしようとしていた。

 

もっとも、Tさんの社歴はのべ4社になる。総合メーカーA社に就職し、子会社への出向・転籍から、別会社への移籍、本社への復帰をしているからだ。その間、エンジニアを束ねるプロジェクトマネージャーとして活躍、子会社では役員職ではなかったが、経営面での意志決定にも強くかかわっていた。

 

Tさんの希望の第一は、家族と同居できる勤務地であること。ふたつ目が仕事内容。加えて、待遇面で現職A社と同じレベルをのぞまれたら、転職は難しかったろうが、Tさんは「子育てもほぼ終わっていますし、年収にはこだわりません」ということだったので、我々は中堅規模のメーカーを中心に紹介をすすめていった。

 

ただ、25年前の就職時でさえ、教授推薦でA社への入社を決めているTさんにとって、真剣勝負の面接は人生初の経験である。そのため、Tさんから我々への質問は、初歩の初歩からスタートすることになった。

 

「私のような年齢では、面接の時の服装は、どのようにしたら良いのでしょう?」
「言葉使いはどのくらい丁寧にすべきでしょうか?飲食店の人が接客する時にもちいるような、何にでも『御』をつけるようなのも、まどろっこしいように思いますし…」

 

50歳にもなる大の大人が、こんなことを聞いてくるなんて、と思われる方もあるかもしれない。だが、『大手企業のエリート』というプライドが先にたってしまうより、「分からないことは何でも聞いてしまおう」という態度の方が、転職にはプラスだと我々は感じていた。
とくに長年ひとつの会社(グループ)に属していた方は、ともすれば頭が固くなりがち。その点、Tさんは自覚があり、素直に我々のアドバイスに耳を傾けて、実践してくれたのだった。

 

転職のことはエージェントから学ぼうという意識のTさんは、ひとまわり以上、年齢が下の担当エージェントのことを「先生」と呼んでいた。医師や弁護士なら年長者から「先生」と呼ばれても慣れているのだろうが、我々はどうも背中あたりがムズかゆくなる。

 

一度「我々のことは、名前で呼んでください」とお願いしたのだが、
「いえいえ。いろいろ教わっているのですから、おかしくはないはずです。それにこれは自分を戒める意味もあるのです。今までは会社の看板で楽をさせてもらった面が多々ありますが、これからそれは通用しないわけですから」
という返事があったのだった。

 

世の中、肩書きに頼って生きている人は多い。転職をしようという時になっても、なかなかその呪縛から逃れられない方をみているので、Tさんの姿勢はたいへん立派なものに思えた。結局、我々は「先生」と呼ばれるのを甘受するしかなかったのだが…。

 

TさんがメーカーB社を受けた時のこと、我々は由あってこの面接に同席することになった。面接が終わったあと、ふとしたタイミングで、TさんはB社のスタッフがいるなか、担当エージェントに向かって「今日は『先生』も同席いただき、ありがとうございました」と言ったのだ。
決して、大仰なものではなかったので、その場の空気がおかしくなるということはなかったのだが、この発言に衝撃を受けている人物がひとりだけいた。

 

メーカーB社の総務には、社内の同期とともに我々のところに登録して転職活動をしているSさん(26歳)がいたのだ。担当エージェントが違うため、我々は彼の存在に気づきようがなかったのだが、Sさんは、会社が役員待遇で採用しようかという人物が、エージェントを「先生」と呼んでいるのをしっかりと見ていた。

 

Sさんはすぐに一緒に転職活動している同僚(営業職)に連絡。自分が見たことを伝えた。
「俺たち、そんな風にいったことなかったよなあ…」
「マズかったかな〜。紹介の社数が減ってきているのも、ひょっとして態度が悪いと思われているからかもしれない」
「ふだん『先生』って言われている人達が、俺たちみたいな若造から名前で呼ばれて、気分いいわけないもんな。今からでも、直した方がいいよ」

 

こうして翌日、新たに二人のエージェントが「先生」と呼ばれることになったのだった。もっとも、Sさんたちについては、すぐに「先生」と呼ぶのを止めていただくことにした。Tさんの場合は、意識変革という意味があったが、経験の浅いSさんたちがこうした呼び方をしていると、ついついエージェントへの依存が高まってしまうからだ。

 

転職では、自分で決める、自分が決めたという気持ちが大切だ。我々は、あくまでパートナーという立ち位置にいるべきなのである。

 

 


リクルートエージェント

リクルートエージェントはMRの転職市場に精通した専任キャリアアドバイザーがキャリア相談・求人紹介などの転職支援サービスを提供している。医療業界企業660社から求人を寄せられている他、異業界での転職にも対応する業 界最大手の転職エージェントである。
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