IQVIAは2月25日、2025年の国内医療用医薬品市場で、売上上位10製品すべてが1000億円を超えたと発表した。1位のがん免疫療法薬・キイトルーダは唯一、2000億円台にのせた。今回トップ10入りした製品は心不全・高血圧症治療薬・エンレストと2型糖尿病治療薬・マンジャロの2製品。マンジャロは前年比で3.8倍と躍進した。国内市場自体は前年比1.7%増の11兆7038億円(1億円未満切捨て、薬価ベース)となり、過去最高額を更新した。新型コロナ関連製品などが減少するなか、抗腫瘍薬や慢性腎臓病(CKD)適応を含む糖尿病治療薬の力強い成長により、市場全体を押し上げた。
文末の「関連ファイル」に、25年の市場規模や売上上位10製品の売上データに加え、売上上位製品の四半期ごとの売上推移をまとめた資料を掲載しました(ミクスOnlineの有料会員のみ閲覧できます。無料トライアルはこちら)。
◎1位キイトルーダ 2位リクシアナ 3位デュピクセント
25年の売上上位10製品は、1位キイトルーダ(売上2207億2700万円、前年比19.2%増、前年1位)、2位は抗凝固薬リクシアナ(1621億6500万円、9.8%増、2位)、3位はアトピー性皮膚炎・気管支喘息等治療薬・デュピクセント(1287億円7000万円、9.4%増、5位)、4位はがん免疫療法薬・オプジーボ(1286億6700万円、11.0%減、3位)、5位は抗潰瘍薬・タケキャブ(1253億1800万円、4.4%増、4位)、6位エンレスト(1160億8200万円、45.3%増、10位圏外)、7位は抗がん剤・タグリッソ(1137億4200万円、3.5%増、6位)、8位は糖尿病・心不全・CKD治療薬・フォシーガ(1081億8000万円、7.7%増、8位)、9位マンジャロ(1049億2300万円、280.2%増、10位圏外)、10位はがん免疫療法薬・イミフィンジ(1020億円、6.0%減、7位)――だった。
IQIVAは11位以下の製品及び製品売上を開示していないため、上位10製品以外に年間売上が1000億円を超える製品がある可能性がある。
◎キイトルーダ 23年から2ケタ成長続く
トップ3製品を見てみると、1位のキイトルーダは23年以降、2ケタ成長を続け、25年も19.2%の大幅増となった。24年の胃がんや胆道がん併用療法の適応追加による市場拡大の進展などに加え、25年4月改定で新薬創出等加算により薬価を維持できたことも今回の大幅増収につながった。四半期ベースでみても、25年第4四半期(10~12月)は前年同期比16.3%増となり、これで22年第3四半期(7~9月)から14期連続2ケタ成長を記録した。ただ、同剤は26年2月1日付で特例拡大再算定により薬価が7.0%引き下げられており、今後の売上規模とともに成長率も注目される。
2位のリクシアナは、出血リスクの高い高齢者への追加適応による成長に加え、25年2月に慢性血栓塞栓性肺高血圧症(CTEPH)の適応も取得したことで10%近くの増収となった。同剤は26年4月1日付で特例拡大再算定改め、持続可能性特例価格調整により薬価引下げを受ける予定になっている。
3位のデュピクセントはアトピー性皮膚炎、気管支喘息、特発性の慢性蕁麻疹などの適応に加え、25年3月に6つ目となるCOPDの適応追加も取得した。一方で、24年11月に3度目の特例拡大再算定により薬価が約13%引き下げられたことで、それまでの四半期ベースで50%増収との成長スピードにブレーキがかかった。それでも25年は9.4%増収とし、前年5位から今回トップ3にランクインした。
◎マンジャロ 発売3年目で1000億円超え 25年第4四半期売上ランクは3位に
今回トップ10入りした2製品を見てみる。前年10位圏外から一気に6位に入ったエンレストは25年4月改定で小児加算による10%の薬価引上げに市場浸透の拡大も続き、25年は43%の高成長を記録した。ただ、同剤も4月1日付で特例拡大再算定改め、持続可能性特例価格調整により薬価の引下げを受ける予定になっている。
23年4月発売のマンジャロは、長期処方や限定出荷が解除された発売2年目に成長を急加速させ、3年目となる25年に売上1000億円を超えた。四半期ベースの売上推移及び売上順位をみると、25年第3四半期に売上283億円(前年同期比251.2%増)の8位となって初のトップ10入りを果たし、第4四半期は388億円(同212.2%増)で3位となった。血糖降下や体重減少を実感する医師が多く、減量の成功体験が患者の治療継続率を高めており、それらが驚異的な売上増の要因のひとつになっている。
◎オプジーボ苦戦 フォシーガは25年第4四半期に1.7%減収に転じる
このほか、前年3位から今回4位と順位を落としたオプジーボは上位10製品中で唯一の2ケタ減収となった。24年4月に共連れ市場拡大再算定で薬価が15%引下げられたうえ、同剤にとって売上比率が高い胃がん1次治療での競争激化もあって厳しい業績が続いている。
前年に引き続き25年も8位のフォシーガは7.7%増収だったが、四半期ベースでみると、25年第4四半期は前年同期比1.7%の減収に転じた。12月の後発品参入の影響とみられる。
◎病院市場3.3%成長 抗腫瘍剤やアルツハイマー病薬などで 開業医市場は1.7%縮小
25年の国内市場は、5年連続で成長し、05年のトップライン市場データ発表以来の最高額を更新した。内訳は、100床以上の病院市場は3.3%増の5兆5911億円、100床未満の開業医市場は1.7%減の2兆1326億円、主に調剤薬局で構成する「薬局・その他」市場は1.4%増の3兆9801億円だった。
IQVIAによると、病院市場は抗腫瘍剤の自律成長が回復したことに加え、アルツハイマー病治療薬や乾癬治療薬の新薬の成長が貢献した。一方、開業医市場は、糖尿病治療薬が堅調に成長を続けたが、新型コロナ関連薬(検査薬、治療薬)やワクチン類の減少が響き、市場縮小となった。「薬局・その他」市場は糖尿病治療薬、免疫抑制剤、乾癬外用剤の成長が新型コロナ関連薬の減少分を相殺し、1%台の成長を維持した。
◎薬効別売上 1位の抗腫瘍剤 初の2兆円台に
25年の薬効別の売上を見てみる。薬効別売上1位で病院市場をけん引した抗腫瘍剤は7.1%増の2兆1102億円となった。2兆円台に乗ったのは初めて。キイトルーダやHER2陽性乳がんおよび大腸がん治療薬・フェスゴ(前年比53.9%増)をはじめとする新薬の適応拡大や市場浸透が好調に進展し、「(抗腫瘍剤市場は)力強い成長へと復調した」(IQVIA)。
◎糖尿病治療薬 売上1位のフォシーガに2位マンジャロ急接近 差は約32億円
薬効別売上2位の糖尿病治療薬は8.3%増の8208億円だった。薬効内の売上1位はフォシーガだが、薬効内2位のマンジャロが急拡大しており、その売上差は約32億円にまで迫っている。2型糖尿病の適応で後発品が参入したフォシーガは減収局面に入っており、26年にマンジャロが薬効内売上1位の座に着くことは確実とみられる。フォシーガと同種同効薬のジャディアンスは24.6%増だった(IQVIAは製品売上上位10製品以外の売上は開示していない)。
薬効別売上3位の免疫抑制剤は0.4%減の6349億円だった。デュピクセントに加え、リンヴォックは20.7%増となるなど一部の製品で力強い成長をみせたが、24年5月にバイオシミラーが登場したステラーラ(36.4%減)や、ヒュミラ(14.7%減)、プログラフ(40.4%減)などの減収影響が大きく、市場はマイナス成長に転じた。
薬効別売上4位は抗血栓症薬で6.8%減の4091億円だった。リクシアナやエフィエントは堅調に伸ばす一方、24年12月に後発品が参入したイグザレルトは83.5%減となった影響が大きかった。
薬効別売上5位は眼科用剤で2.1%減の3349億円だった。後発品が参入したアレジオンの点眼液は65.9%減。25年8月に特例拡大再算定により薬価が19.5%引き下げられたアイリーアは5.8%減となったが、類似品として同じく19.5%引き下げれたバビースモは24.8%増となり、明暗が分かれた。
◎新型コロナ関連製品 ラゲブリオやベクルリーは売上半減 コミナティも52%減収
25年は新型コロナ関連製品の減少により、6位の全身性抗ウイルス薬は24.8%減の3338億円、8位のワクチン類は5.7%減の3198億円、10位の診断用検査試薬は9.8%減の2864億円――とそろって市場は縮小した。
全身性抗ウイルス薬に含まれる新型コロナ治療薬のラゲブリオは48.2%減、ベクルリーは50.7%減と前年比で半減した。ワクチン類に含まれる新型コロナワクチンのコミナティは52.2%減となり、25年度に高齢者等に対する新型コロナワクチンの国からの助成が継続されなかった影響が大きく出たといえそうだ。
◎企業売上ランク(販促会社ベース) 中外製薬が5年連続首位 2位は第一三共 3位はAZ
企業売上ランキングを見てみる。「販促会社ベース」(販促会社が2社以上の場合、製造承認を持っているなどオリジネーターにより近い製薬企業に売上を計上して集計したもの)では、中外製薬が5年連続で1位となり、売上は2.0%増の5438億円だった。バイオシミラーが参入しているアバスチンは31.7%の減収だったが、フェスゴやバビースモなどの新薬群の成長で売上ランキング1位を守った。
リクシアナが好調な第一三共は6.3%増の5214億円し、前年3位から今回2位に順位を上げた。前年2位だったアストラゼネカは0.1%減の5134億円で3位に後退した。24年2月に市場拡大再算定で25%の薬価引下げ、同年8月に用法用量変化再算定で11%の薬価引下げを受けたイミフィンジの減収影響が大きかった。
◎前年比2ケタ成長企業 日本イーライリリーとGSKの2社
売上上位20社をみると、第一三共のほか、6位のノバルティス(売上3926億円、9.8%増、前年7位)、8位の日本イーライリリー(3468億円、34.2%増、12位)、11位のグラクソ・スミスクライン(GSK、2866億円、17.0%増、15位)、12位のサノフィ(2784億円、7.5%増、11位)、13位の日本ベーリンガーインゲルハイム(2713億円、7.9%増、14位)、16位の田辺ファーマ(2148億円、6.3%増、19位)――の7社が前年比6%超の成長を果たした。日本イーライリリーとGSKは2ケタの高成長を記録した。
IQVIAによると、日本イーライリリーはマンジャロに加え、アトピー性皮膚炎治療薬・イブグリースやアルツハイマー病薬・ケサンラが好業績に貢献した。GSKは25年度から定期接種化された帯状疱疹ワクチンのシングリックスの伸長が大きかったと言い、シングリックスは205.4%増収となった。
◎MSDとバイエル薬品は2ケタ減収
一方、上位20社のうち前年比で2ケタの減収となったのは5位のMSD(3989億円、16.2%減、4位)と19位のバイエル薬品(1991億円、25.7%減、10位)――の2社あった。
MSDは製品売上1位のキイトルーダが絶好調だが、ラゲブリオの48%減収やジャヌビアの25%減収のほか、24年度に子宮頸がんワクチンの初回キャッチアップ接種期間が終了したこともあってシルガード9は43%減収となった。さらに小児肺炎球菌ワクチンの定期接種が24年10月1日以降、原則としてファイザーのプレベナー20を使用することになり、MSDのバクニュバンスが25年に76%減収となった影響も大きく、キイトルーダの拡大だけでは様々な減収分をカバーできなかった。
バイエル薬品は24年12月に後発品が参入したイグザレルトの83%減収が大きく響いた。