自主応募で書類不通過になったA社に、エージェントを通して再応募したOさん。その結果は…。

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「一度落ちた会社だが、再度応募したい」
就職・転職の悔しい思いを再チャレンジではらしたい、いわゆる転職リベンジを目指す人は数多い。しかし、一度断られた場合、どのくらい期間をおいて再応募すればいいのだろうか？
求人が出続けているからといって、毎月レジュメを送るのは『企業ストーカー』のように見られそうだし、かといって、のんびりしているうちに求人が充足してしまったら元も子もない。

以前、本コラムでは『再応募までの目安は一年』と書いたことがある。実務経験が1年増えれば、キャリアとして、再度検討の対象になりえるという考えからだ。しかし、目安はあくまで目安。実際は企業によって、あるいは景気の変化で、再応募までの期間はいかようにも変わってくる。

たとえば、同じ会社でも事業部によって採用基準が違い、ある部署でダメだったので、次は他の部署という具合にすぐに再応募をしても問題ない会社もあるし、年度がかわって採用予算が確保できた途端、以前不採用にした人でも面接になるなんてことも珍しくない。
一方、「一度断った人は縁がなかったということ。何度応募して来ても面接はするつもりはない。10年も経ってこちらが忘れていたら別だけどね」なんていう社長もいるから困ってしまう。

システム開発A社は、通年でエンジニアの採用を行っているが、再応募に関しては最低一年の期間をおくと規定をもうけていた。一度、半年前に応募した人が新しく資格を取ったというので、我々は「ひょっとして」と思ってA社に連絡をしてみたのだが、
「この半年で、かなり勉強したそうなんです。再検討をお願いできませんか？」
「ダメですよ。再応募までは一年と言っておいたはずです。今、人事はスタッフが減らされて大変なんですよ。余計な手間は掛けられないので紹介会社を使っているんですから、二度とこういうことはしないで下さい」
と、けんもほろろの解答があったのだった。

それから数週間後のこと、Oさん（30歳）がA社に応募することになった。実はOさんは一ヶ月前に自分でA社に応募書類を送り、不採用通知をもらっていたのだが、そのことを我々に伝え忘れていた。
メールで送られてきた紹介企業のなかに、A社の名前を見つけたOさんは、一瞬とまどったが、
「希望企業だし、また応募できるならありがたい」
と、特にコメントも添えず、我々に応募の意思表示をした。

Oさんが再応募だったと我々が知ったのは、A社に書類を送った翌日夜、Oさんと電話で話をしたときだった。
「え？一ヶ月前に自主応募されているんですか？」
「はい。アレ？お伝えしていませんでしたか？ウッカリしたな、すみません。でも、ダメ元と分かってますから、僕は落ちても気にしませんよ」
「…。そうですか。分かりました…」
我々はA社の人事から厳しく言われるに違いないと、重い気分になりながら、次の日一番にA社に連絡を入れた。すると…。

「はいはい、Oさんね。再応募なのはすぐに気づきましたよ。けれど、ついこの間、エージェントさんにあれだけきつく言ったばかりなのに、こういう紹介があったということは、かなり意欲の高い、人物面で評価できる人なんでしょう？良いですよ、会ってみましょう」
A社の思わぬ勘違いに戸惑う我々。騙しているようで気が引けるところもないではなかったが、A社の言うように、Oさんは転職意欲が高く、コミュニケーション能力に秀でた転職者だった。せっかく得たこのチャンス、取りあえず一回会って貰うまで、我々はA社の勘違いに乗っかることにした。

その結果は
「さすが特別に紹介してもらっただけのことはありますね、とても良い印象です。ぜひ、もう一度面接して、他メンバーにも引き合わせたいのですが…」
出来るなら、このままA社には勘違いしたままでいて欲しいとも思ったが、後で真相がわかったときには信用を落とすことになってしまう。我々は「実は…」とコトの経緯を説明し、A社人事に苦笑されつつも、理解を得てOさんの選考を先に進めることになったのだった。

1年は再応募を認めないと言っていた会社でこれである。縁はどこに転がっているか分からない。我々、転職エージェントは、少ない可能性であっても、ドアをノックしつづけなければならないのである。