2011年米薬剤費は高齢者で減少 IMS報告書
公開日時 2012/04/20 04:00
米市場調査会社IMS Institute for Healthcare Informaticsによると、2011年の米国のヘルスケアシステム全体での薬剤費(卸出荷ベース)は対前年比3.7%増(1人当たり薬剤費では0.5%増)の3200億ドルに達したことが分かった。同社が4月4日、発表した調査報告書「The Use of Medicine in the United States: Review of 2011」(米国における薬剤の使用:2011年レビュー)で明らかになった。
同報告は、2011年の米国のヘルスケアシステムにおける薬剤費の動向を分析したもの。
2011年は、処方せん薬全体では3.7%の伸びを示したが、先発品は、各社主力品の特許切れを原因とした損失額が149億ドルに達し、2.2%の伸びにとどまった。全処方せんの80%を占めるジェネリック品は56億ドルの増加となった。
IMSは2011年の特徴として、開業医受診が対前年比4.7%減少、小売薬局レベルでの薬剤使用(調剤)が1.1%減少、65歳以上の高齢者で薬剤使用が3.1%減少した一方で、救急部門の受診は7・4%増加、19歳から25歳の若年層では、ADHD(注意欠陥多動性障害)治療薬や抗うつ剤の使用量が前年比2%の伸びを示したことなどを上げている。若年層が2011年のデータで唯一薬剤が増加した集団になったという。
被保険者の自己負担も、2010年の自己負担額総額から18億ドル減の490億ドルとなった。金額的には、全処方せん薬の1人当たり自己負担額の75%は10ドルあるいはそれ以下だが、民間保険が給付対象としている先発品の自己負担額は平均40ドルとなった。公的高齢者保険の薬剤給付プログラムのメディケア・パートDでは、自己負担額は2.66ドル減少の23.31ドルとなった。
薬効別の分析では、薬剤費の3分の1は、抗がん剤、喘息およびCOPD(慢性閉塞性肺疾患)治療薬、脂質異常症治療薬、糖尿病治療薬、精神病治療薬の5薬効領域で占めている。これら薬効領域は市場全体の伸びより成長が早く、新規の治療法への選択が活発であると同時にこれら疾患の診断技術の向上も著しい。
IMSのMichael Kleinrock研究開発部長は、2011年はFDA(食品医薬品局)が最近10年間で最多の34剤の新薬を承認したことに言及、「2011年は多数の米国人が入手できる画期的医薬品が多く出た目覚ましい年だった」と述べたうえで、「同時に2009年から始まった、多数の患者が医療を節減しようという好ましくない傾向が続いている。受診を控え、薬を使わないということが続いているが、これ(原因の分析)には一層の研究が必要だ」とコメントしている。