ARISTOTLE 　サブグループ解析


脳卒中や一過性脳虚血発作（TIA）の既往がある患者では、一般的に臨床試験の結果は、脳卒中+全身性塞栓症の発生抑制効果は高い一方で、出血などのリスクも上昇することが指摘されている。「ARISTOTLE（Apixaban for Reduction in Stroke and Other Thromboembolic Events in Atrial Fibrillation）」　の、脳卒中と一過性脳虚血発作（TIA）の既往がある患者を対象としたサブグループ解析の結果を紹介する。

ARISTOTLEは、１つ以上の脳卒中危険因子をもつ心房細動患者１万8201例を対象に①アピキサバン５mg１日２回（選択された患者は2.5mg）群②ワルファリン群（目標INR：2.0～3.0）――の２群に分け、治療効果を比較している。

すでに報告された本解析では、主要評価項目の脳卒中＋全身性塞栓症の発生率をアピキサバン群で有意に21％低下させ（p＝0.011）、ISTH基準による大出血を有意に31％低下させたことが分かっている（p＜0.001）。なお、INR至適範囲内時間（TTR）は66％だった。また、アスピリンを対照薬にアピキサバンの有効性を検証したAVERROESの結果からは、アスピリンに比べ、脳卒中+全身性塞栓症の発生率を55％抑制することが示されている。

サブグループ解析は、脳卒中とTIAの既往がある心房細動患者でも、全ての患者を対象としたのと同様に、ワルファリンに比べてアピキサバンのアドバンテージを示すことができるか検討することを目的に実施された。主要有効性評価項目は、脳卒中（虚血性、出血性含む）+全身性塞栓症の発生率。主要安全性評価項目は、ISTH基準による大出血。

対象患者のうち、脳卒中やTIAの既往があった患者は3436例。既往がなかった患者（１万4765例）に比べ、高齢、女性、拡張期血圧低値などが有意に多く含まれていた。また、既往あり群では、CHADS2が１以下は含まれず、２が7.8％（268例）で、３以上が92.2％（3168例）と大半を占めた。一方で、既往がない群では、１以下が41.9％（6183例）、2が42.3％（6248例）、3が15.8％（2334例）で、有意に既往あり群で、CHADS₂の高得点が多かった（p＜0.01）。

脳卒中、TIA既往群　アピキサバン投与で脳卒中+全身性塞栓症の発生を24％抑制

脳卒中またはTIAの既往がある群では、主要評価項目の脳卒中+全身性塞栓症の発生率は、ワルファリン群の3.24％/年（98例）に対し、アピキサバン群の2.46％/年（73例）で、ワルファリン群に比べ、脳卒中+全身性塞栓症の発生を24％抑制した（ハザード比（HR）：0.76、（95％CI：0.56-1.03））。

全死亡は、既往あり群で、ワルファリン群の4.77％/年（150例）に対し、アピキサバン群では4.22％/年（129例）で、アピキサバンの投与により11％のリスク減少がみられた（HR：0.89、（0.70－1.12））。

一方、安全性についても、ISTH基準における大出血は、既往あり群で、ワルファリン群の3.91％/年（106例）に対し、アピキサバン群は2.84％/年（77例）で、アピキサバン投与により大出血の発生を27％抑制した（HR：0.73（0.55－0.98））。頭蓋内出血は、ワルファリン群の1.49％/年（41例）に対し、アピキサバン群では0.55％/年（15例）で、アピキサバンの投与により、63％のリスク低下がみられた（HR：0.37（0.21－0.67））。

脳卒中+全身性塞栓症、出血ともに、脳卒中またはTIAの既往がある群で発生率が高い傾向がみられたが、脳卒中の既往の有無による交互作用は、一貫してみられなかった。

これらの結果から、米・University of CaliforniaのDonald Eastonら研究グループは、脳卒中またはTIAの既往がある患者における、脳卒中+全身性塞栓症の予防における、アピキサバンの優越性について、頭蓋内出血をはじめ、出血頻度が少なく、結果として死亡率が低いことと指摘。「脳卒中またはTIAの既往がある心房細動患者でも、ARISTOTLEの本解析と一貫した結果を示した」と結論付けている。