
厚労省の「医療用医薬品の流通改善に関する懇談会」は12月15日、流通改善ガイドラインの改訂について座長一任で取りまとめた。改訂ガイドラインでは、メーカーが流通コストを意識して仕切価を設定することを求めた。逆ザヤ問題が顕在化するなかで、医療機関・薬局の構成員からは、最終原価を示して仕切価の根拠を示し、流通を見える化する必要性を指摘する声が相次いだ。このほか、前回の流改懇の議論を踏まえ、別枠品には安定供給確保医薬品・カテゴリーBも含めた重要供給確保医薬品を含めることとされた。パブリックコメントを経て、2026年度薬価改定前にはガイドラインを改訂し、薬価改定後の交渉に間に合うよう、流通当事者に周知を図りたい考え。
◎薬機法改正や流通コスト上昇踏まえガイドライン改訂
流通改善ガイドラインの改訂は、薬機法改正により、製造販売業者における出荷停止等の届出義務など安定供給確保のための規定が整備されたことや、物価上昇により流通コストが上昇していることなど、流通を取り巻く環境が変化していることを踏まえて行う。「流通関係者が一体となって将来にわたり流通機能の安定性を確保するため」とされている。
◎メーカーの仕切価設定 人件費や流通コスト考慮を 卸から情報収集を
ガイドラインでメーカーは、「妥結価格(市場実勢価)水準を踏まえた適切な一次仕切価の提示に基づく適切な最終原価を設定すること」とされている。改訂ガイドラインでは、メーカーの仕切価設定に際し、「物価水準等を考慮した人件費や流通コスト」など必要なコストの実状を考慮することを明記する。メーカーに「医薬品卸から情報を収集するよう努める」ことを求め、卸も医療機関・薬局との価格交渉で把握した現場の状況について、「必要に応じて取引先のメーカーにも共有するよう努める」として、取引に際しての考え方を明記した。
◎仕切価提示は「原則薬価告示後7日以内に行うよう努める」と明記
なお、仕切価をめぐっては、「提示は、原則薬価告示後7日以内に行うように努めること」も盛り込む。流改懇に報告されている実態によると、99%が告示後7日以内に仕切価を提示している状況が示されていたことを踏まえ、ガイドラインに明記することとした。
◎別枠品は重要確保医薬品 安定確保医薬品Bも含めて
このほか、改訂ガイドライン案では、単品単価交渉の推進が求められる中で、別枠品に基礎的医薬品や不採算品再算定品、血液製剤などに重要供給確保医薬品を追加する。
厚労省は当初、安定確保医薬品Aのみを別枠品とすることを提案していたが、多くの構成員から安定確保医薬品Bに相当する品目も別枠品とする必要性を指摘する声があがっていた。事務局は、供給不安未然防止措置の指示や、供給不安時の増産・輸入の指示など、法律上の位置づけに違いがないことから、安定確保医薬品Bも別枠品に含めることとした。
すでに別枠品とされていた不採算品再算定は、「適用を受けてから2年を経過する日までに限る」ことを明確化。ただし、2年以降も、新薬創出等加算と同様に「引き続き単品単価交渉を行うものとし、流通改善が後戻りすることのないようにすること」とされた。
◎医療機関・薬局構成員 流通の“見える化”求める 最終原価が議論に
この日の流改懇でも、医療機関・薬局の構成員からは、改訂の端緒となった逆ザヤについて議論が及んだ。流通の透明性に対して懸念があがり、「見える化」を求める声があがった。特に、逆ザヤの品目についてはメーカー側の説明が十分ではないとの指摘が相次ぎ、「最終原価」の開示にも議論が及んだ。
宮川政昭構成員(日本医師会常任理事)は、「メーカーの製造コストはあまり明らかになっていないというところが一つの問題点だろう。厚労省も含めてしっかり把握できるような形にしていかないと、今後の薬価も非常に問題視されることになるのではないか」と問題提起。「出発点である川上がわからなければ、(逆ザヤなどの)問題の解決策はない。メーカーが示していないから、卸も答えようがない。私たちはそこで交渉するが、答えに対する解のないまま流れが進んでいくことが私には信じられない」と述べ、メーカー側に明確な回答を迫った。小山信彌構成員(日本私立医科大学協会参与)は、「元(最終原価)を知らないで、値段の交渉をするのは不透明というか、わかりにくいが、仕方ないと考えないといけないのか」と嘆いた。
◎NPhA・原構成員「逆ザヤ品では最終原価を提示する義務があるのでは」
原靖明構成員(日本保険薬局協会(NPhA)医薬品流通検討委員会副委員長)も逆ザヤについて川下にしわ寄せが大きいとしたうえで、「川上の交渉でもしっかり、“なぜそういう仕切価なのか”、“なぜ逆ザヤになりかねない仕切価なのか”ということをしっかり説明していただきたいし、卸さんもしっかり聞いてほしい」と指摘。卸には川下に対し、価格の根拠と妥当性を説明することを求めた。「川上の仕切価が不透明だと不透明なまま川下に流れていく。ぜひ卸さんとメーカーさんがしっかり話をして、その話を持って川下側に下ろして、説明責任を果たしていただきたい」と強調した。
中でも、逆ザヤの理由についてメーカー側が「将来の開発品などの検討費用が必要」などと回答していることに懸念を示し、「卸も販管費を載せているが、リベートも入っていないというと、川下から見ると非常に見えない、気持ちが悪い話になっている」と指摘。「最終原価を示してベンチマークになって困るというのであれば、少なくとも逆ザヤ品について提示する義務があるのではないか」との考えを示した。
◎日医・宮川構成員「メーカーは濁さずしっかりした答えを」
宮川構成員は「メーカーが悪いと言っているわけではない。メーカーは状況を明らかにし、答えを持っていなければならない」と強調した。「川上で何が起きているのか、国を含めて責任がある。皆で答えを出して国に要望することも含めて、議論していかないといけない。メーカーも濁さないでしっかりとした答えをしていくことがこの問題点を明らかにしていくことになる」とも述べた。逆ザヤ品も単品単価交渉と総価交渉では意味合いが違うことも指摘した。
これに対し、熊谷裕輔構成員(日本製薬工業協会(製薬協)流通適正化委員会委員長)は、逆ザヤについて「通常の取引の状態ではないということは我々も思っている。何が原因で起きているか、もう少し我々の中できちんと見ていきたい」と応じた。ただ、最終原価の製造コストについては、「最終原価を全て詳らかにするのは、なかなか難しい」と指摘。原薬や包装などを引き合いに「医薬品の製造ルートは複雑だ」としたほか、価格変動があることなども説明。原材料や資材コストの上昇などを資料として提示する考えも示した。
◎折本構成員 メーカーの仕切価設定は「率直に言って一方的」 別枠品「交渉の余地ない」
改訂ガイドラインでは、流通コストなどについて、メーカーが卸から情報収集することも求められることになるが、折本健次構成員(日本医薬品卸売業連合会参与)は質問に答える形で、「率直に申し上げると、メーカーさんの仕切価設定、利益設定等の交渉はガイドラインでも再三議論があったが、ほぼ一方的な状況だ」と指摘。「逆ザヤや安定供給確保医薬品等、いわゆる別枠品にアローアンスはほとんど存在しない。交渉の余地が全くない。いわゆる単純仕切価が全てになってくる可能性がある」との認識を示した。ただ、流改懇の場で逆ザヤの認識は共有できたとして、今後の是正に期待感をみせた。
竹内雅造構成員(製薬協流通適正化委員会副委員長)は「まだ全て完璧に各卸さんと話ができているとは認識していない。個々のメーカーで内容の違いも恐らくあろうかと思うが、近年、卸の物流コストの状況などは我々も何社か回って状況をお聞きして反映しようという姿勢は持っていますし、数年前から対応し始めたところだ。ただ、これが全ての反映ができているという認識ではない」として、今後の課題との認識を示した。