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26年度薬価改定 不採算品再算定は代替供給困難品を追加 特例再算定は名称変更も業界主張盛り込まれず

公開日時 2025/12/15 04:55
厚労省は12月12日の中医協薬価専門部会に2026年度薬価制度改革の骨子(たたき台)を示した。論点となる不採算品再算定の対象品目については、医療現場への影響が大きく、「特定の企業からの供給が途絶えたときに代替供給を確保することが困難な医薬品」を追加することを提案した。骨子のたたき台では、市場拡大再算定の特例の名称を「持続可能性価格調整」 (PASSS)(仮称)として再度提案がなされた。ただ、この他は論点整理案からほとんど変更はなく、多くの業界の主張は受け入れられなかった。業界代表の藤原尚也専門員(中外製薬執行役員渉外調査担当)は「(創薬イノベーションを推進するメリハリのある薬価政策の必要性の)メッセージを十分に読み取ることができない」と悲痛に訴えた。

この日、厚労省が示した薬価制度改革の骨子(たたき台)には、物価が高騰する中で、不採算品再算定と最低薬価についてこの日の議論を踏まえて整理することが明記されており、年末の予算編成に向けて対象範囲が焦点の一つとなりそうだ。

◎不採算品再算定は安定供給踏まえた対応に 乖離率やシェア率を指標に

不採算品再算定をめぐっては、25年度薬価改定で特例的に実施されたが、事務局は対象とされた一部の、基礎的医薬品や安定確保医薬品のカテゴリA・Bに対象品目を追加することを提案。「極めて長い使用経験があり供給不足による医療現場への影響が大きいと考えられる薬剤」を例に出し、「継続的な確保を特に要する薬剤であって、特定の企業からの供給が途絶えたときに代替供給を確保することが困難な医薬品」について、「安定供給に支障を来さないためにも不採算品再算定の対象とする」ことを提案した。

「安定供給に支障を来たしたときに代替困難と治療に影響を及ぼすもの等については配慮が必要」(診療側の森昌平委員・日本薬剤師会副会長)、「異論はない。事務局には、代替供給の確保が困難かどうかについて十分に精査することをお願いしたい」(支払側・松本真人委員(健康保険組合連合会理事)など、診療・支払側から大きな異論は出なかった。

診療側の江澤和彦委員(日本医師会常任理事)は、「不採算となる背景には、薬価だけでなく流通面の課題も含めて、様々な要素がある。採算面だけでなく臨床現場のニーズも踏まえた上で、必要な範囲で検討するのがよい」と述べた。

ただ、適用に際しては注文も出た。支払側の松本委員は薬価調査の結果を引き合いに、不採算品再算定品目の乖離率は圧縮傾向にあるとしたうえで、「一部にはそれなりの乖離が生じた品目もある。流通改善ガイドラインを遵守し、適正な価格で取引することを販売、購入者の両サイドに徹底していただきたい」と指摘した。

支払側の鳥潟美夏子委員(全国健康保険協会理事)は、「不採算品再算定についてですが、これまで特例的な対応を行っている一方、供給不安はまだ解消していない。今改定では供給改善に真に寄与する品目のみを対象とすべき。品目統合への影響も配慮すべきだ」と指摘。「市場からの撤退や供給改善への寄与が難しいシェア率の品目まで下支えが必要なのか、そのあり方について検討が必要ではないか」との見解を示した。

◎最低薬価 支払側・松本委員 業界意見陳述の“総価取引”発言「理解できない」

最低薬価については、25年度薬価改定で物価上昇などを踏まえて概ね3%程度薬価が引き上げられた。支払側の松本委員は、25年薬価調査の結果、最低薬価の乖離率が7.3%だったことを業界の意見陳述で問われた、日本医薬品卸売業連合会の宮田浩美会長が「実態として、総価交渉になっている」と発言したことに触れ、「そもそも、単品単価取引を進める流れにある中で、最低薬価に引き上げられた趣旨に鑑み、適正な価格で流通することが強く求められるにもかかわらず、いまだにこうした事務連絡を遵守することなく、総価交渉がされていること自体が、まず理解ができない」とバッサリ。「心配していた薬価差益の調整弁になってしまっているというのが正直な印象だ」と述べた。

品目によっては、乖離率を圧縮している可能性は認めたものの、「薬価の3%引き上げをした直後に、その引き上げ率を超える値引きというのは、大変に重いことだと認識すべき。物価が上がれば自動的に最低薬価も上がるものではないということを改めて強く主張する」と述べた。

◎特例再算定「持続可能性価格調整」と提案 支払側・松本委員「“国民皆保険の維持”の趣旨明確に」

市場拡大再算定の特例については、「持続可能性価格調整」(英語名:Price Adjustment for Sustainable Health System and Sales Scale(PASSS))(仮称)とすることが提案された。前回の論点整理では、「国民負担軽減価格調整」とされていたが、業界が「断固反対」と主張したことなどを踏まえ、名称を変更して再度提案された。

清原薬剤管理官は、「国民皆保険の維持のための対応という趣旨に加えて、先述の業界陳述や年間販売額が予想販売額の一定倍数を超えた場合に適用され、その超えた部分の一部を国民に戻してもらうという内容を明確化するため」と名称変更の趣旨を説明した。

支払側の松本真人委員(健康保険組合連合会理事)は、「国民皆保険の維持のための対応という趣旨を明確にするために名称を変更することは意味のあることだ」と述べた。

事務局は、「持続可能性価格調整の在り方については、引き続き検討を行う」と提案したことにも触れ、「やむを得ないが、今後とも国民皆保険の持続可能性を高める方向で見直しを検討すべき」と主張した。

業界代表の藤原専門委員はたたき台に記載はないものの、改めて市場拡大再算定の共連れ廃止を訴えた。また、名称変更についても「再算定の本来の趣旨からは大きく変わるものであるため、名称変更について反対だ」と主張した。

◎ 新薬創出等加算 名称変更も英語略称はPMPに

名称変更については、新薬創出等加算を「革新的新薬薬価維持制度」(英語名:Patent-period price Maintenance Program for Innovative Drugs (PMP)(仮称)とすることも提案された。新薬創出等加算の累積額控除の時期は「薬価改定時」とされたが、支払側の松本委員は「特許が切れたら速やかに後発品に市場を譲るという考え方は、業界とも認識は共有できているはずだと理解している。本来は、後発品の薬価収載と同時に控除すべきだと考えているが、まだ中医協として合意が得られていないと受け止めている。ぜひ、今後の課題として、改めて議論させていただきたい」と述べた。

◎G1ルールの下げ止め 26年度は安定供給に支障が出る場合に適用、28年度に廃止へ

長期収載品については、後発品上市後5年を経過した際に、後発品置換率によらずにG1を適用するとされた。制度導入時に激変緩和措置として、初めて適用される場合の最大引下げ率を50%とするなど下げ止めや円滑実施措置が行われてきたが、廃止が提案された。ただし、26年度薬価制度改革に限っては、安定供給に支障が出る場合のみ適用することとされた。

清原薬剤管理官は、「今回は制度が決まってすぐということで激変緩和の措置をこのまま継続する。次々期(28年度改定)については基本的にルールをなくす。恐らくルール上では経過措置の中に入れてお示しをさせていただこうと思っている」と述べた。安定供給に支障を来すかどうかの判断については、企業からの申請を受けた場合、中医協に報告したうえで、ルールの延長も含めて検討する姿勢も表明。こうしたことがなければ、28年度改定で引下げの下限、円滑実施措置を廃止する考えを示した。
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