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【UEGW事後特集】LAVENDER PPI・エソメプラゾール 日本人を含む東アジア人における低用量アスピリン投与患者の潰瘍再発を有意に抑制

公開日時 2012/11/05 03:00

消化性潰瘍の既往があり、低用量アスピリンを継続投与されている患者に、プロトンポンプ阻害薬(PPI)のエソメプラゾールを投与することで、プラセボに比べて、胃潰瘍または十二指腸潰瘍の再発を有意に抑制することが明らかになった。同剤とプラセボの消化性潰瘍の再発抑制効果を比較検討する目的で、日本、韓国、台湾で実施された、無作為二重盲検プラセボ対照共同多施設臨床第3相試験「LAVENDER(Low-dose Aspirin-related ulcer recurrence preVENtion unDER esomeprazole20mg treatment)」の結果から分かった。10月20~24日までオランダ・アムステルダムで開催された、第20回欧州消化器病週間(United European Gastroenterology Week:UEG Week2012)で、島根大学医学部内科学講座第二教授の木下芳一氏らの研究グループが22日のポスターセッションで発表した。
 

低用量アスピリンの投与は、心血管系疾患発症の一次予防または二次予防を目的として広く推奨されている。一方で長期投与は、上部消化管症状や消化性潰瘍などの胃腸障害の発生リスクを高め、結果としてアドヒアランスが低下し、心血管系疾患発症リスクを高くする可能性も指摘されている。
 

そのため、海外では胃腸障害のリスクが高い患者において、低用量アスピリンの投与に伴い、酸分泌抑制作用をもつPPIの投与が推奨されている。エソメプラゾールは、これまでに欧米人を対象に2つのランダム化比較試験が行われ、胃腸障害のリスクが高く、低用量アスピリンを投与されている患者において、消化性潰瘍に対する予防効果と高い忍容性が示されている。一方で、日本人を含む東アジア人を対象とした大規模なエビデンスはこれまでに構築されていなかった。
 

試験は、心血管系疾患発症抑制を目的として、低用量アスピリンを投与され、消化性潰瘍の既往を有する、日本人を含む東アジア人において、潰瘍再発抑制のためにエソメプラゾールを投与した際の有効性、安全性を検討する目的で実施された。
 

対象は、内視鏡検査で胃潰瘍または十二指腸潰瘍の既往が確認され、心血管系疾患発症予防を目的として、低用量アスピリン(81-324 mg/日)を投与された20歳以上の日本人、韓国人、台湾人患者の計364例。①エソメプラゾール1日1回20mg投与群182例②プラセボ群182例――の2群に無作為に1対1の割合で割り付け、最高72週間治療した。
 

全例に胃粘膜保護の目的でゲファルナート50 mg 1日2回が投与された。ただし、非ステロイド系抗炎症薬(NSAIDs)の併用は禁忌とした。試験終了あるいは消化管出血などの理由で試験から離脱するまで、12週間毎に内視鏡検査を受けることとした。
 

今回報告された結果は、事前に定められていた中間解析の基準を満たしたため、データモニタリング委員会が48週時点で中間解析を行ったもの。主要評価項目は潰瘍再発までの期間で、Kaplan-Meier法を用いて解析した。
患者背景は、男性が81%、平均年齢が67歳だった。低用量アスピリンは、1日100mgが82%、登録より4週間以上前から投与されていたのが89%。H.pylori陽性が45%だった。CYP2C19の代謝酵素活性欠損者(poor metaboliser)は、エソメプラゾール群の13%(23例)、プラセボ群で19%(35例)、ヘテロ型(CYP2C19*1/*2)がエソメプラゾール群で51%(93例)、プラセボ群で42%(77例)だった。
 

◎サブグループ解析 CYP2C19遺伝子型、H.pylori、アスピリン投与量の影響を受けず
 

その結果、主要評価項目の潰瘍再発までの期間はエソメプラゾール群がプラセボ群と比べ、有意に延長されたことがわかった(ハザード比(HR):0.09、96.65%CI:0.02 – 041、 p<0.001)。

12週目の潰瘍の非再発推定率は、プラセボ群の89.0%に対し、エソメプラゾール群では99.3%で、48週目まで高い割合を継続した。


サブグループ解析の結果、エソメプラゾール群における48週目の非再発推定率は、性別(男性:98.0%、女性:100%)や年齢(64歳以下:97.4%、65-74歳:98.2%)、H.pyloriの有無(陰性:100%、陽性:96.7%)、CYP2C19遺伝子型(ホモEM:100%、ヘテロEM:97%、PM:100%)、アスピリンの投与量(81mg:100%、100mg:99.1%、>100mg 83.3%)およびアスピリンの投与期間(2週間未満:100%、2~4週間100%、4週間以上:98.2%)に関わらず、極めて高い割合を示した。
また多変量解析の結果、潰瘍再発までの期間と有意に関連した予測因子は、性別(p=0.026)とエソメプラゾール(p<0.001)のみだった。
改訂版LANZAスコアによる評価では、48週目の時点で粘膜病変に改善が見られたのは、プラセボ群の18%に対し、エソメプラゾール群では32%だった。一方、粘膜病変が悪化した割合は、プラセボ群の41%に対し、エソメプラゾール群では14%だった。またエソメプラゾール群では逆流性食道炎の発生率が12週目(プラセボ群6.5% vs エソメプラゾール群0.0%)、24週目(6.8% vs 1.0%)、36週目(6.7% vs 0.0%)のどの時点でもプラセボ群より低かった。
有害事象のうち、最も発生率が高かったのは胃腸疾患で、エソメプラゾール群で36%、プラセボ群で35%だった。エソメプラゾールは試験期間中継続して忍容性が高かった。
研究グループはこれらの結果から、心血管系疾患発症予防のために低用量のアスピリンを継続投与する消化性潰瘍の既往を有する胃腸障害のリスクが高い東アジア人患者において、「エソメプラゾール1日1回20mgは潰瘍再発を有効的に抑制し、高い忍容性を示す」と結論付けた。
 

◎木下氏「患者背景によらず投与しやすい薬剤」
 

結果を報告した木下氏は、本誌の取材に対し、日本人を含むアジア人の消化性潰瘍の既往がある高リスク患者において、高い再発抑制したことを評価。さらに、逆流性食道炎の初期治療の通常用量である20mgでの適応取得であることにも触れた上で、「今後の治療選択の幅を広げるという点で意義が大きい」と述べた。
 

エソメプラゾールは、CYP2C19遺伝子型をはじめ、H.pyloriの有無やアスピリン投与量といった患者背景の影響を受けずに、ばらつきなく高い効果を表していることも指摘。「プライマリケア医にとっても、非常に投与しやすい薬剤なのではないか」とコメントした。
 

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