
2026年度調剤報酬改定は、門前や医療モールなど、薬局の立地依存からの脱却を強烈に迫る内容となった。象徴的な点数と言える“門前薬局等立地依存減算”は調剤基本料から15点減算。距離要件も設け、都市部での開局抑制を促した。減算措置により調剤基本料2を算定する薬局の対象範囲も拡大。26年度診療報酬改定は本体プラス3.09%で決着したが、調剤だけ実質的なマイナス改定との見方が強くある。日本薬剤師会の岩月進会長は2月13日、答申後の三師会の会見で、「全体としてプラス改定であるのは間違いない」と主張。門前立地減算については、日本保険薬局協会(NPhA)が強い反対姿勢を示しているが、「保険財政は社会主義経済的な考えの中で動いている。どう調整をするのかということが今回のおそらく報酬の議論だった」との見方を示した。
◎患者のための薬局ビジョン10年も実現への道遠く 立地依存からの脱却促す
「病院前の景色を変える」-。塩崎恭久元厚労相が発言し、「患者のための薬局ビジョン」が策定されてから10年。ビジョン策定後、処方箋集中率の高い、いわゆる門前薬局の割合はむしろ増加。薬局が医療モールを経営する事例も増えてきた。厚労省は患者のための薬局ビジョンで35年に“立地も地域へ 地域で暮らす患者本位の医薬分業の実現”を掲げたが、実現にはほど遠い状況にある。2026年度調剤報酬改定では、門前薬局にメスを入れ、立地に依存する構造からの脱却を促す。
◎門前立地減算で15点減 小規模乱立の都市部で新規開局は減算で出店を抑制
象徴的な点数が、“門前薬局等立地依存減算”だ。すでに多数の保険薬局が開局している地域(特に病院の近隣)または、医療モール内に立地する場合(敷地内薬局の算定する特別調剤基本料Aを除く)、15点減算するという点数。
病院近隣の密集地域を例にとると、都市部に所在し、かつ水平距離500m以内に他の保険薬局があり、処方箋集中率が85%超で、「200床以上の大病院から水平距離で100m以内の区域内で、他の薬局が2店舗以上存在」または「薬局の周囲50mの区域内に2店舗以上」、「薬局の周囲50mの区域内の薬局が密集条件に該当」する場合は、減算を受ける。
都市部で新規開局する場合は、500m以内に他の薬局がある場合は「処方箋受付回数600回超1800回以下、集中率85%超」に該当する場合は、調剤基本料2が適用される。ただし、今年5月末までに開局した既存薬局で処方箋回数が1800回以下であると届け出ている薬局は、「当面の間、適用しない」として、激変緩和措置を設けた。東京などの都市部では、小規模乱立が指摘されており、都市部への新規出店を抑制する狙いが込められている。
◎処方箋集中率の計算見直しで医療モールにメス 調剤基本料2の対象範囲拡大も
処方箋集中率は、医療モール内(医療ビレッジ内を含む)の複数の医療機関については、1つの医療機関とみなして処方箋集中率を計算する。これにより、処方箋集中率が85%超となるケースが増加することが想定される。例えば、大型チェーン薬局では調剤基本料3ハ(37点)から3ロ(20点)に移行するなど、薬局経営への打撃が大きいことも想定される。
調剤基本料は面分業推進の観点から処方箋集中率の低い調剤基本料1(45点→47点)、3ハ(35点→37点)に引上げる。一方で、調剤基本料2(30点)の対象範囲を拡大。処方箋受付回数1800回超の薬局の処方箋集中率を「95%超」から「85%超」へと変更する。
◎「かかりつけ機能強化、地域の医薬品提供体制の取組み早急に進める」
賃上げ・物価対応が焦点となる中で、調剤報酬をめぐっては、「調剤ベースアップ評価料」(処方箋の受付1回につき、4点)が新設された。しかし、基本料の減算などで、チェーン薬局を中心に基本料への打撃が大きいことも想定される。
岩月会長は、「全体としてプラス改定であるのは間違いない」と強調。「患者のための薬局ビジョンで示された姿の実現に向けて、かかりつけ機能をより一層強化し、国民が質の高い薬剤サービスを実感できるようにするとともに、地域の医薬品提供体制及び在宅医療提供体制の確保のために、取り組みを早急に積極的に進めていく」と決意を示した。
◎人口減少時代の医療提供体制考えるべき「全員が納得されるのはたぶん難しい」
一方で、新設された“門前薬局等立地依存減算”については、「日本が人口減少社会を迎えていく、あるいは医療保険財政を考えた時に、人口が減っている地域の医療提供施設をいかに残していくかがたぶんメインになる」との認識を表明。「そういう状況が分かっている中で、たくさん薬局があるところに新たに出店することはいかがなものか、という社会主義経済的な視点と、出店は企業の経営の意思決定だという論調でお話をされる、どちらも正しいと思うが、保険財政は社会主義経済的な考えの中で動いている。そこはどう調整をするのかということが今回のおそらく報酬の議論だっただろうと思う」と述べた。さらに、「今後も継続的に日本は人口が減っていくので、そこをどうするのかという議論を同時にしていかないといけない。関係される皆さん方全員が納得するのはたぶん難しいと思うが、そういったことが今回は一つの形として現れたと理解している」とも述べた。
◎地域支援・医薬品供給対応体制加算は5段階 後発品数量シェア85%条件
後発品の数量シェアが90%となる中で、後発医薬品調剤体制加算と地域支援体制加算を統合。「地域支援・医薬品供給対応体制加算」が新設された。地域支援・医薬品供給対応体制加算は5段階。後発品の数量シェアが85%以上であることを一段階目として、これを満たした薬局が従来の地域支援体制加算の要件を満たした場合に算定できる仕組みとなった。後発品の数量シェアを満たした場合に算定できる「地域支援・医薬品供給対応体制加算1」は27点、調剤基本料1の薬局が算定できる地域支援・医薬品供給対応体制加算2(32点→59点)、加算3(40点→67点)、調剤基本料1以外の薬局が算定できる加算4(10点→37点)、加算5(32点→59点)で点数はスライドした格好となった。
◎流通改善踏まえた要件「社会主義の中で資本主義的な取組みは制限かかる」
ただし、地域支援・医薬品供給対応体制加算は、「個々の医薬品の価値や流通コストを無視した値引き交渉を慎むこと。また、原則として全ての品目について単品単価交渉とすること」など、流通改善ガイドラインを踏まえた施設要件が盛り込まれている。
岩月会長は、「公定価格の中で、いわゆる資本主義経済的ないわゆるバイイングパワーを発揮することについて、いかがなものかという指摘だろうと思っている。全体としては社会主義的な経済体制の中での調剤報酬で、その中で資本主義的な取り組みにはある程度の制限がかかると考えた方が理解を求められやすいとに思っている」との見解を表明。「それぞれの主張が正しいか間違ってるではなく、持続的な社会保険制度を医療提供体制を維持するためには、何が必要で、何が妨げになっているのかをきちっと議論はした方がいいと思っている。そういったきっかけが今回の調剤報酬の中でも表れたというふうに理解をしている」との論調を繰り広げた。
◎バイオ後続品調剤体制加算は50点
このほか、バイオ後続品の使用促進の観点からバイオ楮育品を調剤する評価として「バイオ後続品調剤体制加算」50点(バイオ後続品調剤時)も新設された。