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【ISC事後リポート】CHANCE  高リスクのTIA、マイナーストロークの急性期でアスピリン+クロピドグレルが有効 出血リスクも同等に

公開日時 2013/02/26 08:00

高リスクの一過性脳虚血発作(TIA)とマイナーストロークの急性期において、アスピリンとクロピドグレルの併用療法がアスピリン単剤治療と比べ、脳卒中の再発を有意に抑制でき、また出血リスクも同等であることが示された。中国で実施された無作為化二重盲検試験「CHANCE(Clopidogrel in High-risk patients with Acute Non-disabling Cerebrovascular Events)」の結果から分かった。2月5~7日まで米・ホノルルで開催された国際脳卒中学会(ISC2013)で、8日に開かれた「Plenary Session」のLate-breaking演題として、中国・Beijing Tiantan HospitalのYongjun Wang氏が報告した。


TIAとマイナーストロークは、発生後脳卒中の発生リスクが増加することから、早期介入が重要視されている。試験は、発作から24時間以内の高リスクのTIAまたはマイナーストローク患者を対象に、アスピリン+クロピドグレル(loading (初回大量投与):300mg、維持用量:75mg/日)の併用が、アスピリン単剤と比べ、脳卒中のリスクを低下するか検討する目的で実施された。


対象は、40歳以上のマイナーストロークまたはTIA患者で、▽機能障害のない(NIHSS≤3)または、再発リスクが中等度~高度の(ABCD2スコア≥4)▽薬剤の投与は症状発現から24時間以内▽インフォームドコンセントを取得――した患者5170例。中国の医療機関114施設で登録された。アスピリン単剤群2586例、アスピリン+クロピドグレル併用群2584例――の2群に無作為に割り付けた。アスピリン単剤群では、クロピドグレルのプラセボに加え、アスピリンを初日に75~300mg、2日目~3カ月目まで75mgを投与した。一方、併用群では、アスピリンは初日に75~300mg、2日~21日目まで75mgを投与。21日~3ヶ月目まではアスピリンのプラセボを投与した。クロピドグレルは、初日300mg、2日~3カ月目まで75mgを投与した。主要評価項目は、3カ月間の新たな脳卒中(虚血性/出血性)の発生。副次評価項目は、3カ月間の臨床的血管イベント(虚血性脳卒中、出血性脳卒中、心筋梗塞、心血管死)とした。安全性評価項目は、①3カ月間のGUSTO基準による中等度~重度の出血イベント(致死的/非致死的、症候性/無症候性の頭蓋内出血を含む)②頭蓋内出血③全死亡④有害事象(AE)/重篤な有害事象(SAE)――とした。


◎併用で虚血性脳卒中の発生率を減少


患者背景は、2群間に大きな差はみられず、年齢(中央値)は併用群が63歳、単剤群が62歳、女性の割合は併用群が33.0%(852例)、単剤群が34.7%(897例)だった。もともとのイベントがTIAだったのは、併用群で27.8%(717例)、単剤群で28.2%(728例)、マイナーストロークは併用群で71.8%(1858例)、単剤群で72.2%(1867例)だった。ベースライン時のTIAのABCD2スコアは、両群ともに4だった。また発現から無作為化までの時間は両群とも13時間、12時間以上経過してから無作為化された割合は、併用群が50.0%(1291例)、単剤群は50.5%(1306例)だった。


主要評価項目の発生率は、ハザード比(HR)で0.68(95%CI:0.57 – 0.81)で、併用群が単剤群と比べて有意に低かった(p<0.001)。副次評価項目もHRが0.69(95%CI:0.58 – 0.82)で、併用群は有意に発生率が低かった(p<0.001)。


副次評価項目の内訳をみると、虚血性脳卒中の発生率が最も高く、群間差がみられた。また、単剤群の11.4%(295例)に対し、併用群は7.9%(204例)で、併用群で有意に低い結果となった(HR:0.67、95%CI:0.56 – 0.81、p<0.0001)。出血性脳卒中(HR:1.01、95%CI:0.38 – 2.70、p=0.98)と心筋梗塞(HR:1.44、95%CI:0.24 – 8.63、p=0.69)、心血管死(HR:1.16、95%CI:0.35 – 3.79、p=0.81)には有意差はみられなかった。


安全性評価項目の発生率は、両群間に有意差がみられず、懸念された出血も併用群で2.3%(60例)、単剤群では1.6%(41例)で大きな差はみられなかった(HR:1.41、95%CI:0.95 – 2.10、p=0.09)。重篤な出血も両群ともに0.2%にとどまり(ともに4例)、両群間に差はみられなかった(HR:0.94、95%CI:0.24 – 3.79、p=0.93)。そのほか、中等度の出血は併用群0.1%(3例)、0.2%(4例)(HR:0.73、95%CI:0.16 – 3.26、p=0.68)、軽微出血は、併用群1.2%、単剤群0.7%だった(HR:1.57、95%CI:0.88 – 2.79、p=0.13)。
全死亡は両群とも0.4%で差はみられなかった(HR:0.97、95%CI:0.40 – 2.33、p=0.94)。


Wang氏はこれらの結果から、300mgをloading doseとするクロピドグレルとアスピリンの併用は、アスピリン単剤と比べ、「TIAとマイナーストローク発症後の脳卒中リスクを低下させ、また出血リスクを増加せることなく安全だった」とした。さらに、TIAとマイナーストロークには、さらなる積極的な治療介入の有用性がある可能性を示唆した上で、臨床試験で立証する必要性を指摘した。


今後、同試験をめぐり、薬理遺伝学を始めとするバイオマーカーや、血管画像などによるサブグループ解析のほか、1年間の追跡による解析結果も報告する予定という。


◎降圧療法受けていない患者が多い中国の実態が影響か?


質疑応答では、優れた大規模試験であったとの賞賛のコメントがあった一方で、中国独特の医療事情による影響も指摘された。質疑応答で登壇した、共同治験責任者の、米University of California, San FranciscoのS. Claiborne Johnston氏は、高血圧の被験者の50%未満しか降圧治療を受けていなかった実態を挙げ、総じて中国は治療が不十分であるため、そのことも併用療法による大幅なリスク低下につながった可能性も指摘した。


また、より重篤な脳卒中に対しても、この治療アプローチが応用できるかとの問いに対し、「どの重症度で治線引きをするかを知ることは不可能だ」とした上で、今後、重症度による解析を進めていくことも付け加えた。
ただ、今回の解析からはTIAとマイナーストロークで併用療法の有効性、安全性に大きな差はみられなかったとした。


同試験では、アジア人種における出血リスクを考慮して、併用群におけるアスピリン投与は21日目までとし、それ以降はクロピドグレル単剤の治療となっていた。この治療アプローチによる有効性への影響をどう見るかについて、Johnston氏は、「主要評価項目のカーブは数日後から分かれており、21日目までにはほとんど平行線をたどっていた」とし、併用療法の治療効果が急性期において最も発揮される可能性を示唆した。


なお、Johnston氏らの研究グループでは、発作から12時間以内のTIAまたはマイナーストローク患者を対象に、さらに高用量のクロピドグレルとアスピリンとの併用療法の有用性を検討する「POINT(Platelet-Oriented Inhibition in New TIA and minor ischemic stroke)」試験を進行させている。試験では、併用群におけるアスピリンの投与期間は90日間とされている。同試験においての中間解析結果が今年5月に報告される予定。Johnston氏は、「試験を継続させることに大きな意義があるかどうかを確認する、良い機会になるだろう」とコメントした。

 

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