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【ISC事後リポート】EMBRACE 原因不明の脳卒中/TIA 発作性心房細動の検出で30日心調律の有用性示唆

公開日時 2013/02/26 08:00

 原因不明の脳卒中または一過性脳虚血発作(TIA)において、24時間ホルター心電図では発作性心房細動の検出できない患者がいることが分かった。一方で、心調律のモニタリングを30日間継続することで、24時間ホルター心電図では検出できない心房細動患者を検出できる可能性が示唆された。カナダの脳卒中センター16施設で実施された、前向き多施設無作為化比較試験「EMBRACE(Event Monitor Belt for Recording Atrial Fibrillation after a Cerebral Ischemic Event)」の結果から分かった。2月6~8日まで米・ホノルルで開催された国際脳卒中学会(ISC2013)で、7日に開かれた「Late-Breaking Science Oral Abstracts」で、カナダUniversity of TorontoのDavid Gladstone氏が報告した。


脳卒中既往患者の二次予防では、心房細動の診断は重要だが、特に発作性心房細動では診断が難しいことが指摘されている。現在用いられている、短時間のホルター心電図モニタリングでは、過少評価される可能性もある。これまでの観察研究によると、発作後の心臓モニタリングが長いほど、心房細動の検出率が高くなることが示唆されており、前向き無作為化比較試験での検証が必要とされてきた。そこで同試験では、最初に実施した、ホルター心電図で心房細動が検出されなかった患者を含む、所定の精密検査で原因不明と診断された虚血性脳卒中またはTIAの患者において、心調律モニタリングを30日間継続する方法と、24時間反復的に記録するホルター心電図のどちらが、発作性心房細動の検出に優れているかを比較、検討した。


登録基準は、①過去6カ月間に、原因不明かまたは心原性が疑われ、神経画像で塞栓性の急性動脈虚血性脳卒中またはTIAと推定される診断を受けている②55歳以上で心房細動が過去に確認されていない③12誘導心電図、ホルター心電図、CTAまたはMRAによる血管画像、2DまたはTEE心エコー所見で心房細動が確認されなかった――で、これを満たす572例を対象とした。ループ式心電計を30日間または心房細動が検出されるまで装着する群(287例)、24時間のホルター心電図モニタリング群(285例)の2群に割り付けた。用いた心電計は、イベントごとに作動し、自動的に心房細動を記録する。メモリーの容量は30分で、1回の発現につき、最大2.5分間記録する。主要評価項目は、無作為化から90日以内に発生した、30秒以上継続する心房細動または心房粗動の1回以上の発現。副次評価項目には、2.5分以上の心房細動の発現と、全心房細動の発現、無作為化後90日間で経口抗凝固薬を処方された患者の割合、モニタリングへのアドヒアランスなどとした。


ベースラインの患者背景において、群間差はみられず、患者の平均年齢は両群とも73歳、女性の割合は30日モニタリング群で46%、ホルター群で44%、CHADS2スコア(中間値)は両群とも3だった。虚血性脳卒中は30日モニタリング群で65%、ホルター群が60%、mRSが0~2は、30日モニタリング群で96%、ホルター群で2%、イベントから無作為化までの期間は30日モニタリング群で72日、ホルター群で68日だった。


30日モニタリング群で、3週間以上モニタリングを継続できた患者は82%で、このうち、心房細動が認められなかった患者で、3週間以上モニタリングを継続したのは85%だった。


主要評価項目は、ホルター群の3%に対し、30日モニタリング群では16%で、30日モニタリング群が有意に高かった(p<0.001)。30日モニタリング群では44例、合計217イベント発生しており、このうち、3イベント以上発生していたのは41%、2イベントが18%だった。心房細動患者1人を検出するためにスクリーニングが必要な患者数(NNS)は8人だった。

2.5分以上継続した心房細動は、ホルター群で2%だったのに対し30日モニタリング群は10%、継続時間によらず、全ての心房細動は、ホルター群の4%に対し30日モニタリング群で20%で、いずれも30日モニタリング群で有意に良好な結果となった(ともに、p<0.001)。NNSはホルター群で13人、30日モニタリング群で6人だった。また、虚血性脳卒中ではホルター群の4%に対し、30日モニタリング群で16%、TIAではホルター群で0%、30日モニタリング群で15%だった。

最初の心房細動発現までの時間は、24時間以内が2%、1週間以内が7%、2週間以内が12%、3週間以内が12%、4週間以内が15%と、モニタリングの時間経過とともに、検出、診断されていく割合が増加していた。

抗凝固薬の投与は、脳卒中またはTIA発生時が両群とも1%、無作為化時は30日モニタリング群で5%、ホルター群で6%だったが、心房細動が検出された患者では72%、90日後は30日モニタリング群で18%で、ホルター群の10%を有意に上回る投与率となった(p=0.01)。また抗血小板薬から抗凝固薬に切り替えた割合も、ホルター群の5%に対し、30日モニタリング群では13%と、30日モニタリング群で有意に高かった(p=0.001)。抗凝固薬から抗血小板薬に切り替えた割合は、両群ともに1%だった。


◎Gladstone氏「短期間の心電図は初期スクリーニングとして」


Gladstone氏は、心電計のメモリー容量に限界があるため1回の発現当たり最大2.5分しか記録できなかったことや、短時間の心房細動が与える臨床的な重要性については依然として不明であることなど、試験には限界があると説明。その上で、「原因不明の脳卒中またはTIAが発生した55歳以上の患者では、6人のうち1人に発作性心房細動があった」とし、「脳卒中やTIA後にホルター心電図を1回または2回行っても、発作性心房細動の疑いを排除するには不十分である」と結論付けた。また30日間モニタリングの継続は実行可能で、発作性心房細動の検出に有意に効果を示し、抗凝固薬の投与率の有意な増加を導くとした。


またこれらの結果から得られる意義として、「短期間の心電図モニタリングは、脳卒中またはTIA後の初期スクリーニングとして用いられるべきで、原因不明の脳卒中またはTIAの高齢患者で、心房細動が疑われるものの初期スクリーニングでは立証されなかった患者では、モニタリングを長期化させるべき」との見解を示した。

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