Acute Cerebrovascular Syndrome(ACVS)TIAと急性脳疾患への新たな対応 (2/2)
公開日時 2012/08/03 05:00
日本版TIAクリニック運用で
TIA疑い例の同日紹介、正診率が向上
開業医と脳卒中専門医療機関との円滑な連携体制構築により、24~48時間以内にTIAの評価を行う、“日本版TIAクリニック”の運用が効果を上げる可能性が示唆された。平成21~23年度厚生労働科学研究費補助金による「一過性脳虚血発作(TIA)の診断基準の再検討、ならびに我が国の医療環境に則した適切な診断・治療システムの確立に関する研究」班(研究代表者:峰松一夫氏・国立循環器病研究センター)での研究結果から、システムの運用で、TIAの正診率や、同日中に専門医療機関に紹介される症例が増加することが分かった。国立循環器病研究センター副院長の峰松一夫氏が4月26日、報告した。
研究班では、国立循環器病研究センターを中心に、フランスやイギリスを中心に普及しているTIAクリニックの日本版として、開業医と脳卒中専門施設と連携体制を構築。これにより、適切な治療を提供できるかを検討するパイロットスタディを実施した。対象は、一過性の神経症状が出現し、開業医を受診した患者のうち、TIAの疑いで、国立循環器病院研究センターへ紹介された患者。対象施設は、吹田市、豊中市、箕面市の開業医(内科・外科:517施設、眼科:73施設、耳鼻科:54施設)。
開業医向けに、パンフレット(TIAの症状の説明、即日紹介の依頼を記載)の配布とともに、ホットライン相談窓口を開設。一方、国立循環器病研究センターでは紹介当日に、頭部の画像検査を終了し、治療方針を決定することとした。
このシステムの運用前年同期3カ月間と比較したところ、紹介例は増加し(10例→16例)、正診率も向上した(20%(2例)→44%(7例))。また、開業医受診と同日中の受診(30%(3例)→81%(13例))や、同日中の頭部CT/MRI施行率も増加した(40%(4例)→94%(15例))。
一方、TIA患者の入院判断の基準については、研究分担者所属施設に入院した発症後7日以内のTIA患者464例(男性:292例)を対象に、後ろ向きに調査を行った。その結果、TIA再発/脳梗塞発症に有意に関連した因子は、片麻痺(HR:2.81、95%CI:1.19-7.76)、糖尿病(2.29、1.04-4.90)、MRIの拡散強調画像(DWI)陽性(2.46、1.12-5.23)だった。
峰松氏はこれらの結果から、「一般開業医がTIAの診断や治療に困らないような医療システムの構築、受け入れ体制の整備により、TIA患者の脳梗塞発症が効率的に予防できる可能性がある」とシステムの有用性を強調し、全国的な普及に期待感を示した。
その上で、「TIAの初期対応に関するアルゴリズム(案)」を提唱(図参
照)。発症後48時間以内のTIAが疑われる症例については、ABCD2スコア≧4点、TIAを短期間(1週間以内)に繰り返す症例では即時入院が必要とし、これらについては一般開業医でも評価可能とした。一方で、DWIや責任血管病変心房細動の評価は専門施設の外来での評価、もしくは入院とした。ただし、患者紹介ルールや入院適応基準、入院不要患者への対応、初期スクリーニング検査と専門検査の区別については、地域の特徴を配慮することの重要性も強調した。