面接の評価はいまひとつだったのに、一転して、次の選考に進むことになった転職者たち。企業が注目したのは…。

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ネットで企業情報を調べるのは、ごく一般的なリサーチ。しかし、その逆はどうだろう。個人名をネットで検索、プライベートなブログや、ソーシャルネットワークの交流履歴などを見られるのは、あまりいい気はしないという人が多いのではないだろうか。
以前このコラムで、ネット上の発言や活動が問題視されて、選考が不調に終わったケースを紹介したことがあるが、実はこうした企業側のネットリサーチ、悪いこととばかり限ったものでもないのだ。

Wさん（32歳）は現職で抜群の営業実績を誇りながら、応募したネットベンチャーA社での評価は芳しいものではなかった。
「書類上の実績が素晴らしかったので、期待が大きすぎたのかもしれませんが…。Wさんは寡黙でとっつきににくい人物に思えましたね。営業としては、不言実行の一匹狼タイプなのでしょう」
「それでも、力があることに変わりないのでは？」
我々は食い下がったが、面接をおこなった事業部長は気乗りしない調子で
「いや、A社に必要なのは周りに目を配れるリーダー。Wさんの人物像はそれに一致しません」
と、バッサリ。とりつくしまもなく、このままWさんは不採用だろうと思われたのだが、A社内でこの決定に反対してくれる人があらわれた。

A社の総務（採用担当）Kさんは、面接前にWさんと雑談をかわし、その際、彼からプライベート用の名刺を受け取っていた。せっかくだからと名刺にあった個人サイトを覗いてみると、そこには公私にわたる多彩な人的ネットワークが広がっていた。
なかでも、趣味のスカッシュ仲間とは、Wさんが主幹になって、毎年、国際大会のネット中継をスポーツバーで楽しむというイベントを企画しており、欧州・東南アジアなど多くの国の人たちと交わりをもっていた。

「これを見れば、決して一匹狼でないのが分かります。まめにレスを返していて、気配り上手にすら感じられます。グローバル感覚を持っているという点でも、A社の将来にプラスになる人材のはず」
Kさんの進言に、A社社長は一転して不採用を撤回。最終面接で、評価を見定めると、Wさんに再びチャンスを与えてくれたのだった。

ゲーム業界の企画Nさん（28歳）も、上のケースによく似ている。彼が第一希望にしていたB社、面接後の評価はパッとしないものだった。
「真面目でいい人なんだろうけど、はっきり言って魅力がない。この仕事には遊び心が欠かせないのに、ユーモアが感じられないんだよね」
面接した副社長兼プロジェクトリーダーが、この話しぶりでは、見通しは暗いと思わざるを得なかった。
「そうですか。しかしNさんが不採用となると、他の方が…」
「そこなんだよ。すぐにでも増員しないといけないのに、適任者がいないからなあ。もう少しまって、応募者がなければNさんにもう一度会ってみるよ」
離職中だったことが幸いし、B社はNさんを保留扱いとすることにした。

ところが、それから数日後、B社から手のひらを返したような連絡があった。
「Nさんなんだけれど、もう一度会って、いろいろ話をしようかと思うんだ。前回は緊張して力が出せていなかったようだから、もう少しくだけた場の方で。一緒に飲みにいって懇談するという形でどうかと思っているんですよ」
「ありがとうございます。けれど、一体どうしたんですか？前回の連絡では、Nさんは他に候補者がいなければというお話でしたのに？」
「いやいや、それがね…」

副社長はNさんのツイッターをフォローするようになって、彼に対する見方が180度変わったのだと説明を始めた。
「とにかく、色んなところに首を突っ込んではコメントしているんだけど、それがいちいち面白くてね。変わったトピックを拾ってくるところも淒いし、それに対するコメントも皮肉が利いてて。ああいうセンスの人は、なかなか業界にもいないと思うんだ」
「ははぁ、なるほど」
「表現するのは下手でも、彼の頭のなかではいろいろな雑学がつながって、面白い世界観ができあがっていますよ」

ネット・ゲーム、こうした業界だからこその判断なのかもしれないが、実際の人物より、ネット上のキャラクターが評価されるというのが興味深い。転職市場でも、仮想世界が現実を上回りつつあると見るべきか、それともパッと見よりも、人の本質を見てくれた良い採用と見るべきか…。