国際医療福祉大・上島教授 抗精神病薬エビリファイ 難治性うつ病の有望な選択肢
公開日時 2013/08/01 03:50
国際医療福祉大学医療福祉学部の上島国利教授はこのほど、「うつ病治療の新たな選択肢」と題するプレスセミナーで講演し、6月にうつ病・うつ状態(既存治療で十分な効果が得られない場合)の適応を取得した抗精神病薬エビリファイ(一般名:アリピプラゾール)について、海外での長期成績や国内臨床試験の結果から、難治性うつ病患者への有望な選択肢になり得るとの考えを示した。セミナーはエビリファイを販売する大塚製薬が開催した。
うつ病の薬物治療では、選択的セロトニン再取り込阻害薬(SSRI)やセロトニン・ノルアドレナリン再取り込阻害薬(SNRI)、ノルアドレナリン・セロトニン作動性抗うつ薬(NaSSA)が標準薬として使用されている。それらの治療で効果不十分な場合、海外ではエビリファイのみならず、オランザピン(一般名)やクエチアピン(同)などの抗精神病薬も使用されているが、日本では、エビリファイがうつ病の適応を取得した唯一の抗精神病薬となる。
上島教授は講演でエビリファイの国内の治験成績を説明し、エビリファイ群はプラセボ群に比べて1週目から臨床評価指標で有意な改善が示されたとして、同薬の効果発現の早さを評価した。安全性については、他の抗精神病薬で見られる錐体外路症状の副作用が少ないことから、「(非専門医でも)安全に使用しやすい薬剤」との見方を示したものの、アカシジアや眠気が認められる症例もあるため、使用前の患者説明の重要性も指摘した。
上島教授は自身の処方経験からエビリファイの使用を開始するタイミングに触れ、「通常は8週間から11週間くらい標準治療を試みて判断するが、治療開始早期の段階で治療強化を望む患者もいる。個々の状況に応じて判断されていくのではないか」と説明した。ただ、エビリファイを併用しても効果が見られない患者も存在することから、更なる治療選択肢の必要性も訴えた。
◎中枢MR294人体制 専門医中心に展開
エビリファイは06年に統合失調症の適応で発売され、12年1月に双極性障害における躁症状の適応を取得した。大塚製薬はこの一年で中枢専門MRを60人程度増員し、294人体制で販促活動を展開している。情報提供の中心は専門医であるが、うつ病の適応も取得したことでSSRIやSNRIなどを使用する非専門医にもその場を広げている。
なお、米国では07年から大うつ病性障害の補助療法で用いられており、同薬の売上の3割がうつ病となっているほか、自閉症での適応も取得している。日本では、自閉症がフェーズ3の段階となっている。