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NAGOYA HEART 恣意的なデータ操作の痕跡認められず 降圧薬・ディオバンめぐる臨床研究で

公開日時 2013/12/16 03:52

名古屋大学は12月13日、降圧薬・ディオバン(一般名:バルサルタン、ノバルティスファーマ)をめぐり同大学医学部実施されたNAGOYA HEART Studyについて、現時点では恣意的なデータ操作の痕跡は認められなかったとの中間報告を発表した。臨床研究実施計画と最終結果の間に一部定義の違いやイベントの未報告事例などはあったものの、いずれも合理的な説明がつくことをその根拠としている。

試験デザインの論文で、大阪市立大学講師として名前を連ねていたノバルティスファーマの元社員に関しては、研究計画段階でのアドバイスやデータ解析への関与は明らかになったが、WEB管理システムへの患者データ入力時点などに関与できる立場にはなかったとした。今後同大学では今回詳細な調査までは行わなかった協力医療機関のデータの検証を行い、最終報告をまとめる方針だが、その時期については未定とした。


同大学では、NAGOYA HEART Studyでのデータ操作疑惑が指摘されて以後、常設の公正研究委員会に同大学副総長の藤井良一氏を委員長に外部委員2人も含む7人の委員で構成される専門調査委員会を設置。公益財団法人先端医療振興財団臨床情報センターを外部委託調査機関とし、専門調査委員会でも研究責任者だった同大学医学部循環器内科教授の室原豊明氏、研究事務局担当教授、大学院生3人、CRCとデータマネジメントグループ担当2人、当時の担当医3人、ノバルティス元社員、WEBシステム管理会社員からヒアリングを行ってきた。


中間報告ではNAGOYA HEART Studyの登録症例1150例のうち、カルテ、研究の登録WEB入力データ、解析用データの3段階で連結が確認できた446例中、名古屋大学医学部附属病院担当分141例についての先行調査を中心に行った。

専門調査委員会の藤井良一氏(右)、外部委員の手良向氏(左)




まず、これまでの調査から臨床研究実施計画書に関連して、主要評価項目だった総死亡が、試験途中の05年12月8日以前に副次評価項目に変更されており、倫理委員会への報告などの変更手続きは行われていなかった。この点について藤井氏は「総死亡には心疾患以外の原因の症例が含まれるため、主要評価項目としては不適当と判断された結果だった」と説明した。


外部調査機関による全1150症例を対象としたWEB入力データと解析用データを比較した結果、イベント件数で30件の差異があった。ただ、このうち22件はエンドポイント委員会での審議を経たうえでイベントの削除、追加、変更などが行われていた。残る8件は事務局判断によるイベント削除だったが、削除された8件中7件は、安全性勧告委員会の勧告で決定したものや担当医への聴取から対象イベントではないと確認されたものなどで、残る1件のみが事務局のミスでエンドポイント委員会へ報告が行われなかった狭心症例だった。


名古屋大学医学部附属病院担当分141例のカルテ、WEB入力データ、解析用データの連結照合結果では、カルテのデータとWEB入力データとの間で性別が1例、生年月日が2例で誤りがあり、割り付けと異なる薬剤投与例が3例、有害事象として悪性腫瘍が報告されていなかった1例あったことが判明。


また、イベントに関してはカルテ上に記載がありながらWEB入力が行われていなかった狭心症によるPCI施行のイベント1例、急性心筋梗塞のイベント発現日がWEB入力データと解析用データで異なった1例が存在。PCI施行例は、血圧コントロール不良でディオバンからCa拮抗薬とACE阻害薬の併用に切り替えられたが、担当医の交替で報告が漏れており、発現日の違いも担当医による誤入力と判明した。



◎有意差認められた心不全による入院のイベント例「不審な点は認められず」


最終結果で有意差が認められた心不全による入院のイベント例に関しては、名古屋大学担当分の中には4例含まれており、いずれも当時のカルテデータなどからイベント認定そのものに不審な点はなかったとした。


一方、141例のWEB入力データと解析用データとの比較では、収縮期血圧値で82%、拡張期血圧で83%、HbA1cで82%の一致率だったが、残る不一致例はいずれもカルテ上には存在する検査予定日直近とは別の時期のものが記入され、いずれも解析用データから作成された推移図とカルテデータから作成された推移図はほぼ一致しており、恣意性はないと判断された。この点に関して生物統計専門家の外部委員として専門調査委員会に参加した金沢大学先端医療開発センター特任教授の手良向聡氏は「他の研究と比較して特段ヒューマンエラーが多いとは言えない」との見解を表明した。

そのほかの同意取得状況、計画書遵守状況などは概ね問題なく、藤井氏は「倫理委員会、エンドポイント委員会、安全性勧告委員会が計画書に定義した役割を果たし、適切な手順に沿って研究が終了していた」と述べた。


◎元社員 デザイン論文に関与もデータへのアクセス、最終論文の確認は行わず


もう1つの焦点と言えるのが、研究に関するノバルティス元社員の関与状況だ。元社員に関しては、2010年のJournal of Cardiologyに掲載された同研究の試験デザイン論文では統計解析班として大阪市立大学の所属で、2012年のHypertensionでは謝辞で統計解析班として所属記載なしにそれぞれ氏名が記載されていた。


専門調査委員会では元社員本人、WEB入力データの外部委託管理会社でノバルティスを退職した社員が経営する神戸CNSや学内関係者などへのヒアリングなどから、元社員について①研究計画の段階から試験組織、統計的事項についてアドバイスする立場②患者データを入力するWEBシステムヘのアクセスIDは付与されていなかった③エンドポイント委員会などにオブザーバーとして出席④名古屋大学の試験事務局が管理していた研究データベースから中間解析時と最終解析時に固定データを受領⑤大学院生2人と共同で最終解析を実施―などの役割があったが、論文投稿前の最終原稿は確認していなかったと指摘。2010年のJournal of Cardiology論文では資金調達と利益相反、2012年のHypertensionの論文では資金源と開示の双方が投稿規定にあったものの、これらについて記述されていたとし、論文掲載に際して元社員の所属としてノバルティスを併記しなかったことは不注意だったとした。


また、元社員との接触はノバルティスの担当者から生物統計の専門家として紹介されたことが始まりとし、直接本人には確認しなかったものの、09年ごろには室原氏をはじめとする研究参加者の一部は、ノバルティス社の社員であることを認識していたことを明らかにした。この点に関して藤井氏は「紹介時の本人の名刺に大阪市立大学に加え、非常勤講師をしていた2つ大学とノバルティスの記載があったことが気づいたきっかけだったが、ほかの論文に大阪市立大の肩書で記述があったため、関係者はそのように理解していた」と説明。さらに研究の発案はあくまで大学側によるもので、当初は武田薬品に話を持ちかけたものの不成立だったことから、ノバルティスファーマと交渉し、研究開始に至ったことを明らかにした。


なお、NAGOYA HEART Studyは、2型糖尿病または耐糖能異常(IGT)に高血圧を合併した30~75歳の日本人患者を対象としてARB・バルサルタンとCa拮抗薬・アムロジピンの有効性を比較した試験。試験デザインはPROBE法(前向き無作為化オープンラベルエンドポイント盲検下比較試験)を用いた。
東海4県46施設、医師427人が参加して試験が実施された。有効症例数は1150例。試験期間は2004年10月~2010年7月で経過観察期間の中央値は3.2年。


血圧値、HbA1cの推移、主要評価項目の複合心血管イベント(心筋梗塞、脳卒中、冠動脈血行再建術、心不全による入院、心臓突然死の総計)の発生は、両群間で有意差は認められなかった。複合エンドポイント内の各イベント別にみると、心不全による入院でのみバルサルタン群での発生頻度が有意に低かったことも報告されている。
 

 

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