【World Topics】専門薬局の急成長
公開日時 2015/10/19 03:50
がん、血友病、リウマチ性関節炎、HIV治療薬、あるいは臓器移植後の免疫抑制剤など、米国には 服用費用が日本円で年間数千万円にのぼる高額医薬品が少なからずある。 2004年にはこれらの高額医薬品に対する医薬品費支出は全体の19%であったが、今日では薬剤費の3分の1をこれらの高額医薬品が占めており、今後10年で全体医薬品費の50%になると見込まれている。(医療ジャーナリスト 西村由美子)
高額医薬品の処方増加はすでに米国の薬局ビジネスを潤しており、薬局業界のレベニュー総額は2005年の200億ドルから2014年には780億ドルまで急成長した。このため、米国では、病院、一般小売店、スーパーマーケットまでが専門薬局ビジネスに乗り出す構えを見せている。
専門薬局は、単に薬局として医薬品を売るだけでなく、さまざまな付加価値付きサービスを提供することによって、差別化を図り、 位置づけを強固にしようとしている。正しい服用方法について患者を啓発し、注射技術の指導にあたり、適切な使用によって高額な医薬品が無駄に消費されないよう患者をサポートしている。実際、専門薬局で購入し手いる患者の方が一般小売り薬局で購入している患者よりも医薬品使用が適切で、服用も安定的に長続きし、治療成績もよいことが複数の調査によって明らかになっている。
しかし、患者団体と医師へのインタビュー調査によって、いくつかの問題も明らかになっている。たとえばリフィル対応に場外時間がかかること、郵送を依頼と遅延や配達ミスがあることなどにくわえ、最大の問題は「医療保険のネット枠内で利用できる専門薬局が限定されていること」で、多くの場合、ネットワーク内に1つしかない専門薬局は保険会社の子会社または関係会社であること。消費者団体のConsumer Watchdogは医療保険大手4社を相手どってHIV治療薬を購入できる薬局をネットワーク内に限定しないよう求める訴訟を提訴している。