編集部調査 国内主力品の成長率は6.7%減 MR生産性の維持・改善も課題に
公開日時 2018/07/04 03:52
ミクス編集部が製薬各社に行った2017年度決算アンケート(対象企業86社、回答60社)によると、国内売上高100億円以上製品の成長率は6.7%減となり、国内市場の成長に急激なブレーキがかかっていることが分かった。また、各社別のMR一人当たり生産性をみたところ、17年度中にMR数を削減した企業の生産性は改善したものの、MR数を維持した企業の生産性は悪化していた。これら多くの企業が18年度中に営業体制の見直しやMR数の削減に踏み切るなど、生産性の維持・改善に努める方針を打ち出していることも明らかになった。
文末の「関連ファイル」に、2017年度のMR一人当たり生産性の資料を掲載しました(7月4日のみ無料公開)。
国内医薬品市場は、18年4月実施の薬価制度抜本改革や、政府が推し進める後発品使用促進策の影響から、明らかな縮小傾向を示し始めている。編集部は製薬各社の主力品(年間売上高100億円以上)の売上前期比を集計したところ、全品目で6.7%減となり、薬価改定のない年ではじめてマイナスに転じた。なお、薬価改定のなかった11年度は5.7%増、13年度は5.2%増、15年度は2.5%増と、これまでプラス成長を維持してきた。
各社の主力品をカテゴリー別にみると、新薬創出等加算品は6.8%増(対前期比9.6ポイント減)、非新薬創出等加算品は15.4%減(同10.4ポイント減)となり、新薬創出等加算品の有無を問わず市場全体の伸びの鈍化が始まっている。
◎MR生産性の維持・改善が経営のメルクマールに
製品個々のトップラインの売上が停滞するなかで、製薬各社の経営方針に変化が見られている。政府の薬価制度抜本改革により、長期収載品や後発品を他社に移管・売却する動きはすでに始まっている。これに加えて、最近はMRや営業拠点などの営業リソースの見直しに着手する企業も目立ってきた。MRの生産性を維持・改善することが経営のメルクマールとなっている。
ミクス編集部が製薬各社のMR一人当たり生産性を分析したところ、18年3月末までの1年間で200人のMRを減らしたMSDのMR一人当たり生産性は、前期比3670万円増に改善。同様に、MRを170人減らしたファイザーは前期比90万円増に生産性を改善した。同様に68人減らしたエーザイは1820万円増に改善、57人減らした中外製薬は1540万円増に改善と、MR数の調整がその後の生産性の維持・改善に寄与していることが分かる。
一方で、18年3月末までの1年間でMR数を維持した企業をみると、2400人体制を維持したアステラス製薬は1人当たり2480万円減、同様に930人を維持したサノフィは3210万円減、812人を維持した大正製薬ホールディングス(大正富山医薬品)は970万円減と前期に比べて生産性が低下している。いずれの3社とも早期退職者優遇制度を社内で実施し、MRを含む営業本部のコスト・リソースの見直しに着手している企業だ。これら3社は19年3月末までにMR数の減少が見込まれ、今後1年間で生産性の改善が図られるというロジックだ。
今後数年以内に製薬各社から上市される新薬の多くがアンメット領域であるのに加え、売上のピークも200~500億円規模の新薬が多い。大量のMRを自前で確保することが逆に経営上のリスクとみられがちだ。もはや生産性の維持・改善は経営上の必須課題となってきた。
アンケート結果の詳細はMonthlyミクス7月号に掲載した(
こちら)。