【FOCUS】25年度薬価改定の分析から見えた“衝撃の真実” イノベ推進と安定供給で社会要請応える企業に
公開日時 2025/04/01 04:52
「中間年改定を実施する状況にはない」―― 。製薬業界が繰り返し訴えるなかで断行された2025年度薬価改定。新薬創出等加算の累積額控除のインパクトが取り沙汰されたが、実は中間年改定初となる改定時加算や新薬創出等加算の適用、最低薬価の引上げ、不採算品再算定の臨時・特例的な対応など、プラス影響も大きいことが本誌の分析から明らかになった。一方で、実勢価改定と連動しないルールが数多く適用されたことで、全面改定に一歩近づいたと見る向きも強い。25年度薬価改定が製薬企業に与えるインパクトを検証した。(望月 英梨)
Monthlyミクス4月号では「2025年度薬価改定の全貌を明らかにする 創薬力強化と医薬品の安定供給実現への布石」と題した特集を組みました。データ編では、主要製品の改定率一覧を掲載しています。(会員限定、記事はこちらから)
「平均乖離率が縮小するなど、4大臣合意当時から状況が大きく変化していることや、現役世代等の保険料負担が上昇していることを踏まえ、21年度、23年度の薬価改定の慣例に固執することなく、必要な対応を行う」―― 。24年末になされた内閣官房長官、財務相、厚労相の3大臣合意にはこう記されている。
◎“慣例”を覆しカテゴリー別に対象範囲を決定
21年度、23年度と過去の中間年改定では、対象範囲が「平均乖離率の0.625倍超」とされてきた。25年度改定では、この“慣例”を覆し、カテゴリー別に対象範囲を決定。平均乖離率5.2%を基準として、新薬創出等加算品、後発品は「1.0倍」、新薬創出等加算品以外の新薬は「0.75倍」、長期収載品は「0.5倍」を超える医薬品を改定対象とした。重視したのは「創薬イノベーションの推進と医薬品の安定供給、国民負担の軽減」の観点だ。
適用ルールでも、創薬イノベーション推進の観点から、改定時加算を中間年改定で初めて実施し、21成分45品目に適用。新薬創出等加算の適用も行った。改定時加算や新薬創出等
加算の対象は主力品であることも多く、1年前倒しで適用を受けることは、数字に表れる以上にプラスのインパクトがあることも想定される。
改定時加算を受ける品目は、小児疾患や希少疾病などドラッグ・ラグ/ロスの懸念が強い品目が多く含まれている。ドラッグ・ラグ/ロスが懸念されるなかで、改定時加算の柔軟な運用には、医療ニーズの高い革新的新薬を世界同時開発する研究開発型企業の活動を後押しするメッセージが込められている。24年度改定に続き、評価を充実することで、研究
開発型企業の挑戦を後押しする。
一方で、25年度改定では、初めて新薬創出等加算の累積額控除を21成分46品目に適用。長期収載品の改定対象範囲も拡大した。長期収載品の選定療養も導入されるなかで、相対的に革新的新薬創出に対するインセンティブを高め、特許切れ後は迅速にジェネリックに道を譲る姿も描いた。
25年度改定のもう一つの柱が、医薬品の安定供給だ。解熱鎮痛薬や鎮咳去痰薬、抗菌薬など薬価が10円未満の低薬価品の供給不安が悪化しているとの報告もある中で、最低薬価の引上げを実現。不採算品再算定の臨時・特例的な対応も行った。ジェネリックメーカーを中心に、医療現場で長く使われる医薬品を安定供給する企業努力も後押しする。
ただ、25年度改定で適用された新薬創出等加算の累積額控除に加え、改定時加算や不採算品再算定、収載後の外国平均価格調整はいずれも、実勢価改定と連動しないルールとして整理されてきた。財務省の財政制度等審議会は建議で、「既収載品の算定ルールについて、全て適用すべき」と主張しており、この姿に一歩近づいたとも言える。
◎3年連続でプラス改定企業が出現
25年度薬価改定はイノベーション推進と医薬品の安定供給を命題とした、政策改定としての色合いが強く映る。23年度改定から3年連続でプラス改定企業が出現したことを踏まえれば、いまや、薬価改定を行えば、必ず薬価が引き下がるというのは一種古めかしいレトリックに過ぎないのかもしれない。イノベーション推進と医薬品の安定供給という社会の要請に応える企業の挑戦に期待したい。