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【25年度薬価改定】 全品目の53%、9320品目が対象 新創品は1割、長期収載品は9割対象でメリハリ

公開日時 2024/12/20 15:00
厚生労働省は12月20日の中医協薬価専門部会に2025年度薬価改定の対象品目が全品目の53%に当たる9320品目と報告した。前回の中間年改定に当たる23年度改定の69%から対象範囲を狭める。品目ごとの性格に応じて対象範囲を設定することから、カテゴリーごとに対象範囲を設定。改定対象は、新薬創出等加算品目では9%にとどまる一方、長期収載品は88%にのぼるなど、メリハリのついた改定とした。不採算品再算定については、医療上の必要性が特に高い品目として、基礎的医薬品や安定確保医薬品(カテゴリーA・B)、厚労大臣が増産要請を行った品目について臨時・特例的に適用する。新薬創出等加算については、加算・累積額控除ともに実施する方針。

25年度薬価改定をめぐり、同日午前に林内閣官房長官、加藤財務相、福岡厚労相の3大臣が合意した。具体的には、平均乖離率5.2%を基準として、新薬創出等加算対象品目、後発医薬品についてはその「1.0倍」、新薬創出等加算対象品目以外の新薬はその「0.75倍」、長期収載品はその「0.5倍」、その他医薬品はその「1.0倍」をそれぞれ超える医薬品を改定対象とされた。

改定されるのは、対象品目数(1万7440品目)のうち、53%に当たる9320品目。新薬創出等加算品目(650品目、乖離率は5.2%超)は60品目(9%)、新薬創出等加算以外の新薬(1830品目、乖離率は3.9%超)は1000品目(55%)、長期収載品(1710品目、乖離率は2.6%超)は1500品目(88%)、後発品(8859品目、乖離率は5.2%超)は5860品目(66%)、その他品目(4390品目、乖離率は5.2%超)は900品目(20%)となった。

◎不採算品再算定は医療上必要性高い品目に限定 新薬創出等加算は累積額控除・加算ともに実施

適用ルールについては、「創薬イノベーションの推進、医薬品の安定供給の確保、国民負担の軽減といった基本的な考え方を踏まえ、基礎的医薬品、最低薬価、不採算品再算定、新薬創出等加算(加算および累積額控除)、後発品の価格帯、既収載品の外国平均価格調整、既収載品の薬価改定時の加算を適用する。一方で、長期収載品の薬価改定、市場拡大再算定など既収載品の算定ルールについては適用しない。最低薬価については引き上げたうえで、適用する。

厚労省は、この日の中医協に、不採算品再算定の適用について提案。基礎的医薬品とされたものと組成および剤形区分が同一である品目や、安定確保医薬品(カテゴリーA:21成分・B:29成分)、厚労大臣が増産要請を行った品目(89品目)について、臨時・特例的に適用する。平均乖離率5.2%を超える品目は対象外とする。ただ、大臣が増産要請を行った品目については、品目が限られていることなどから、乖離率要件や、「当該既収載品と組成、剤形区分及び規格が同一である類似薬がある場合には、全ての類似薬について該当する場合に限る」との要件を満たさなくても、不採算品再算定を希望する品目を対象にする方針。

新薬創出等加算については、創薬イノベーションの推進・国民負担の軽減といった基本的な考え方を踏まえ、加算および累積額控除の両方を適用する。

◎診療側・長島委員「中医協で決めるプロセスを取ったことを評価」

同日の中医協では、診療側の長島公之委員(日本医師会常任理事)は、「医薬品の役割や実態に合わせて、きめ細かく対応するという方針にしていくことは妥当。特に過去2回、対象範囲を設定する際に用いた係数に別れを告げ、中医協においてきちんと決めていくプロセスを取ったことは評価できる」と述べるなど、診療・支払各側が了承した。

◎新薬創出等加算1.0倍超 厚労省・清原薬剤管理官「将来の累積額控除免除でイノベーション評価」

対象範囲をめぐり、支払側の松本真人委員(健康保険組合連合会理事)は、長期収載品の対象範囲は平均乖離率の0.5倍超まで拡大することについて、「新薬メーカーが長期収載品に依存せず、特許が切れたら速やかに後発品に市場を譲るという考え方に合致するものと評価している」と述べた。

一方で、新薬創出等加算について改定対象を平均乖離率の1.0倍超としたことについて、「24年度薬価制度改革で、改定前の薬価を維持する仕組みにしたにもかかわらず、新薬創出等加算品目の実勢価改定の範囲を平均乖離率の1.0倍とすることには将来の医療保険制度の持続可能性に影響するものと考える」と指摘した。

これに対し、厚労省保険局医療課の清原宏眞薬剤管理官は、「今年度いわゆる加算額で戻った額が将来控除される額に含まれないことになる」としたうえで、「中医協の議論の中でイノベーションの評価があった。特に新薬創出等加算については、今回1.0倍とすることによって、将来、薬価の後発品が出てきた後に控除されるところについても少し免除ができるということもイノベーションに向けての新薬メーカーに開発していただきたいというメッセージかと思っている」と説明した。

支払側の松本委員は、新薬創出等加算品以外の新薬の対象範囲を平均乖離率の0.75倍としたことについても、「画期性や有用性が乏しいにもかかわらず、これまでの0.625倍から範囲を狭くすることについては、イノベーション推進にどのような影響があるのか、今後検証する必要がある」とも指摘した。

これに対し、清原薬剤管理官は、今回の新薬創出等加算品以外の新薬の対象範囲は平均乖離率3.9%超と説明。23年度の対象範囲が平均乖離率4.375%超だったことを引き合いに、「乖離率自体としては前回よりも0.75を乗じているが、厳しい範囲となっている。乖離率の範囲は小さくなっていて、対象は大きくなっている」と説明した。

◎診療側 薬価財源の使途に言及 「医療の質向上に向けた対応を強く推進すべき」

診療側はこの日も薬価財源をめぐり、医療の質向上に充填する必要性を強調した。診療側の長島委員は、「国民負担の軽減もそうでありますが、中間年改定のもう一つの目的である医療の質の向上に向けた対応が強く推進されるべきであると主張する」と述べた。診療側の林正純委員(日本歯科医師会副会長)も「中間年薬価財源は国民負担の軽減を基本としつつも、他方でできるだけ安全で安心、質の高い医療提供に資するよう活用いただきたく要望する」と述べた。

◎石牟禮専門委員「4大臣合意の考え方が変わった」 新創品の累積額控除は「来年度の企業経営に影響」

業界代表の石牟禮武志専門委員(塩野義製薬渉外部専任部長)は、業界として「一貫して、中間年改定については実施すべき状況にない」と主張してきたことを振り返った。そのうえで、薬価差が縮小する中で、「そもそも薬価差があるから毎年改定すべきという考え方は、このままで良いのか。薬価改定方式のあり方について本質的な議論が必要」との考えを示した。

今回の改定の対象範囲について、「16年のいわゆる4大臣合意で中間年改定の対象を価格乖離の大きな品目とした考え方が変わったとも見い出せる。この合意内容に則って改定を実施される場合に、中間年改定の位置づけや目的を含め、今後の影響について見定めていく必要がある」と指摘した。新薬創出等加算の累積額控除については、「1年前倒しするという形になることにつきましては、該当品を有する企業の来年度の経営に大きな影響を与える」とも述べた。

◎3大臣合意「薬価改定の慣例に固執せず必要な対応を」 福岡厚労相「メリハリついた対応」

同日午前になされた3大臣合意では、毎年薬価改定の導入を決定した16年末の4大臣合意当時から状況が大きく変化していることや、現役世代の負担料が上昇していることを踏まえ、中間年改定の実施された21年度、23年度の「薬価改定の慣例に固執することなく、必要な対応を行う」とした。そのうえで、改定の対象品目については、「国民負担軽減の観点はもとより、創薬イノベーションの推進や医薬品の安定供給の確保の要請にきめ細かく対応する観点から、品目ごとの性格に応じて対象範囲を設定する」としている。

福岡資麿厚労相は3大臣合意後の閣議後の会見で、25年度薬価改定について、「平均乖離率が5.2%まで縮小している中でも、国民の保険料負担の軽減と創薬イノベーションの推進や医薬品の安定供給の要請に応えることの両立が重要であるということから今回の改定では、改定の対象範囲や改定基準の適用について、こうした観点からのメリハリのついた対応になったというふうに認識をしている」と述べていた。

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