本庶氏・オプジーボの特許対価引上げ訴え 小野と協議望む
公開日時 2019/04/15 03:50
本庶佑特任教授(京都大学)の代理人を務める井垣太介弁護士が4月12日、本誌の取材に応じ、本庶氏が抗がん剤・オプジーボの承認を有する小野薬品に対し、特許対価の引上げを求めていると語った。井垣氏は、本庶氏の取り分について、オプジーボによる小野薬品の売り上げなどの1%以下で、「常識から考えて著しく低い」と主張。契約内容について、「契約の成立下に重大な瑕疵がある」と指摘している。
本庶氏が問題だと指摘している契約は2006年に締結されたもの。本庶氏は1992年にPD-1を発見したことを発表し、その後実用化に向けて小野薬品と交渉を進めてきた。京都大学での共同特許出願は難しいこともあり、2003年に小野薬品と共同で、「PD-1阻害によるがん治療法」の特許を出願した経緯がある。
◎本庶氏 対価の引上げは若手研究者支援資金に
井垣氏は、「抗がん剤として使うPD-1抗体用途特許が極めて重要であるにもかかわらず、対象を狭め、特許対象はタンパク・遺伝子のみであると明記し、それを前提とした計算方法が展開されている」と指摘。対価の引き上げを求め、小野薬品との交渉を2011年から続けていると明らかにした。対価について本庶氏は、若手研究者を支援する1000億円の基金の創設にあてたい考えだという。
問題をめぐっては、締結当時、本庶氏には知的財産に関する知識がなく、大学の支援体制も不十分だったために、「よく理解しないままにサインしてしまった」という背景がある。シーズ発見に挑む研究者だが、知的財産への知識が十分でないことが実用化を阻む壁となっていることも指摘されており、今回の問題を通じ、現状に一石を投じる。
井垣氏は、がん免疫治療薬の売上高が「24年には米メルクとBMSで1兆4000億円程度、小野薬品が約1550億円に上るとの試算もある」と説明。対価の引き上げを訴え、今後も協議を求める考えを示した。
小野薬品広報部は、「(本庶氏の主張)内容をすべて把握しておらず、コメントできない」としたものの、対価をめぐり、本庶氏側と協議を続けていることを認めた。