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小野薬品・滝野社長 フォシーガで「12月以降に後発品の発売想定」 25年度売上予想は10%減の800億円

公開日時 2025/05/09 04:51
小野薬品の滝野十一代表取締役社長COOは5月8日の2024年度決算説明会で、国内主力品のフォシーガについて、「12月以降に後発品の発売が想定される」と述べ、25年度の同剤の売上は前年度比10.7%減(96億円減)の800億円を見込んでいると説明した。フォシーガは現在4つの適応を持つが、まず2型糖尿病の特許が満了する。同社広報部によると、同剤の2型糖尿病の適応に係る売上は、24年度の380億円に対し25年度は「300億円弱」を見込んでいるという。最主力品のオプジーボは「成長の伸びしろがある」(滝野社長)ものの、26年度は通年でフォシーガの2型糖尿病の特許切れ影響が出るため、国内事業の厳しさがより増しそうだ。

◎フォシーガのCKD適応 25年度売上予想は約350億円

フォシーガの24年度売上は前年度比17.7%増の896億円だった。滝野社長は「特に慢性腎臓病(CKD)で使用が拡大した」と話した。フォシーガは2型糖尿病、1型糖尿病、慢性心不全、CKDの4つの適応を持つ。同社広報部は本誌取材に、同剤の適応別の24年度売上は2型糖尿病が380億円、慢性心不全が160億円、CKDが356億円――。これに対して25年度は2型糖尿病が300億円弱、慢性心不全が約150億円、CKDが約350億円――を計画していると説明した。ただ、例えば2型糖尿病とCKDを合併している症例の売上がどちらに入っているかは不明。

25年度はCKD適応の売上の伸びが鈍化する計画だが、これは25年4月の薬価改定影響(5mg製剤:3.9%引下げ、10mg製剤:4.2%引下げ)のほか、同じSGLT2阻害薬で24年2月にCKD適応を追加したジャディアンスとの競争激化によるものだとしている。なお、フォシーガの1型糖尿病、慢性心不全、CKD適応の特許切れは28年以降とみられる。

◎24年度国内売上4.2%減 オプジーボは17.3%減収、共連れ市場拡大再算定の影響大きく

24年度の日本の売上収益は4.2%減の2952億円だった。フォシーガは2ケタ成長した一方で、国内売上の4割以上を占めるオプジーボが17.3%減収の1203億円だったことが大きく響いた。オプジーボは24年4月の薬価改定で、バベンチオの共連れによる市場拡大再算定で薬価が15%引き下げられたことに加え、成長を目指した尿路上皮がんや食道がんが競争激化により思うように伸びなかったことなどが影響した。

◎オプジーボ 25年度から再び成長軌道に「食道がんと非小細胞肺がんの処方拡大に注力」

ただ、25年度からオプジーボは再び成長軌道にのり、25年度は3.9%増収の1250億円を目指す計画を立てた。北田浩一営業本部長は、「特に食道がんと非小細胞肺がんの処方拡大に注力する」と強調。続けて、「(国内申請中の)肝細胞がんの1次治療、MSI-Hを有する大腸がんの1次治療の効能追加を含め、消化器がん領域でのシェアナンバー1のポジションを堅持する」と述べた。

◎新規処方シェア目標 26年3月に食道がん1次治療は60%、NSCLC1次治療は30%

食道がん(1次治療)では、現在50%前後で推移している新規処方シェアを26年3月に60%を目指す。未治療の根治切除不能・進行再発食道扁平上皮がんを対象に、▽オプジーボとヤーボイの併用療法、▽オプジーボと化学療法の併用療法、▽化学療法のみ――を比較したCheckmate648試験の45カ月追跡調査データを、講演会などを通じて医師に訴求し、このオプジーボの2つのレジメンの評価を高めて目標達成したい考えだ。

非小細胞肺がん(NSCLC、1次治療)では、25年1月時点で17%の新規処方シェアを26年3月に30%にする目標を立てた。このシェア目標は、日本臨床腫瘍研究グループ(JCOG)が未治療進行・再発NSCLCを対象としたオプジーボ+ヤーボイ+化学療法の併用に係る第3相試験(特定臨床研究)で、治療との因果関係が否定できない死亡が想定を超えて認められたとして、同試験の登録を一時停止(22年4月28日)した後の22年5月時点と同じ水準となる。JCOGは23年3月30日に試験を中止した。

JCOGの注意喚起もあってオプジーボのNSCLC1次治療に対する新規処方は大きく減少した。しかし、小野薬品の高橋宏幸オンコロジー統括部長は、▽約2年にわたり安全性の情報提供活動を幅広く行った、▽重篤な副作用に対する診断方法や対処方法への理解が一定程度浸透した、▽Checkmate227試験(オプジーボ+ヤーボイ併用、患者群:PD-L1陰性)及びCheckmate 9LA試験(オプジーボ+ヤーボイ+化学療法併用、患者群:PD-L1陰性)の5年間追跡調査で長期生存効果が確認された――ことから、「特にPD-L1陰性での評価を確立させ、26年3月時点で新規処方シェア30%まで回復させたい」と述べた。

◎24年度連結業績は減収・2ケタ減益

24年度の連結業績は、売上収益4869億円(前年同期比3.1%減)、営業利益597億円(同62.6%減)、コア営業利益1127億円(同37.7%減)、親会社帰属純利益500億円(同60.9%減)――の減収減益だった。

23年度まで6年連続で増収増益を記録していた。24年度は、売上収益はフォシーガの2ケタ成長や24年6月に買収したデサイフェラ社の9か月分の売上が計上されるといったプラス要因があった一方、▽オプジーボの15%の薬価引下げ、▽米メルクからのキイトルーダに係るロイヤルティ収入のロイヤルティ料率低下(23年12月まで全世界売上の1.625%、24年1月以降0.625%)、▽前期に計上したアストラゼネカ(AZ)との特許関連訴訟の和解に伴う一時金170億円の反動減――の影響が大きく減収となった。

利益面は売上収益減のほか、AZとのコ・プロ契約に基づき販売しているフォシーガの販売達成マイルストンとして136億円を計上したことや、臨床試験に係る開発費用の増加、デサイフェラの研究開発費や事業運営に係る費用の計上(9か月分)、韓国Ligacherm社への契約一時金支払いなどにより、2ケタの減益となった。

25年度の連結業績は、デサイフェラに係る売上・費用の12か月分の計上、オプジーボの国内売上及びロイヤルティ収入の増加、フォシーガの後発品参入影響、グローバル製品の開発の進展などにより、売上収益4900億円(0.6%増)、営業利益850億円(42.3%増)、コア営業利益1140億円(1.2%増)、親会社帰属純利益670億円(33.9%増)――を見込む。

◎キンロック、ROMVIMZA、ベレキシブル、Sapablursenのグローバル製品で持続成長へ

滝野社長はこの日の決算説明会で、「今後10年の成長イメージ」を示した。同社は25年から26年にかけて2型糖尿病治療薬のフォシーガやグラクティブの特許が切れ、オプジーボは28年に米国、30年に欧州、31年に日本で特許満了を迎える。PD-1関連ロイヤルティの料率変更もある。

このような状況の中でも35年に向けて持続成長を実現するために、滝野社長は、▽グローバル製品の売上拡大、▽オプジーボ皮下注製剤及び合剤のロイヤルティ収入、▽経口抗てんかん剤・ONO2017(セノバメート)及び生化学工業と提携した変形性関節症治療剤・Gel-Oneの国内上市、▽自社創製品の上市、▽更なる製品・開発品の導入――に注力する考えを示した。

グローバル製品は、デサイフェラ買収で獲得した消化管間質腫瘍に対するKIT阻害薬・キンロック(一般名:Ripretinib)及び腱滑膜巨細胞腫に対するCSF-1受容体阻害薬・ROMVIMZA(Vimseltinib)、自社創製の血液がんに対するBTK阻害薬・ベレキシブル(チラブルチニブ塩酸塩)、米Ionis社から導入した真性多血症に対する核酸医薬・Sapablursen――の4製品となる。このうちベレキシブルは25年度中に米国で、中枢神経系原発リンパ腫(2次治療)を対象疾患に申請する予定だ。

◎オプジーボ皮下注製剤 日本は「適切な時期に申請したい」

オプジーボ皮下注製剤はパートナー企業のブリストル マイヤーズ スクイブ(BMS)が米国と欧州で販売中。米国では静注製剤から皮下注製剤への切替は30%程度になっているという。滝野社長は、皮下注製剤により得られるロイヤルティ収入について、「(ロイヤルティの料率は)静注製剤と同率で、発売から10年間得られる」と紹介した。

オプジーボ皮下注製剤の国内申請・上市時期については、岡本達也開発本部長が「競合の皮下注製剤の開発状況も考慮しながら、適切な時期に申請したい」と話すにとどめた。日本では現在、薬物動態や日本人の安全性を確認する第1相試験を実施中で、国内申請はBMSが米欧で承認を取得した際に用いた第3相試験の試験結果も使う考えを示した。

自社創製品の上市では、アルツハイマー型認知症を対象に日米で開発中の経口投与のエピジェネティクス制御薬・ONO-2020、帯状疱疹後神経痛などを対象に日本で開発中の経口投与の内因性カンナビノイド制御薬・ONO-1110などを具体的に挙げて高い期待感を示した。

なお、35年までの日本市場について、滝野社長はセノバメートやGel-Oneの上市成功・売上貢献に期待を示したが、イメージ図では国内売上は右肩下がりの内容になっている。フォシーガやオプジーボの特許切れ影響を吸収しきれない模様だ。

【24年度連結業績 (前年同期比) 25年度予想(前年同期比)】
売上収益4868億7100万円(3.1%減) 4900億円(0.6%増)
営業利益597億4700万円(62.6%減) 850億円(42.3%増)
親会社帰属純利益500億4700万円(60.9%減) 670億円(33.9%増)

【24年度の国内主要製品売上高(前年同期実績) 25年度予想、億円】
オプジーボ 1203(1455) 1250
フォシーガ 896(761) 800
オレンシア 266(258) 280
グラクティブ 183(212) 120
ベレキシブル 105(102) 110
カイプロリス 86(91) 90
パーサヒブ 84(82) 90
オンジェンティス 76(63) 90
*仕切価ベース

ロイヤルティ・その他 1561(1857) 1600
*BMSからオプジーボに係るロイヤルティ収入が24年度1130億円(23年度979億円)――、メルクからキイトルーダに係るロイヤルティ収入が24年度264億円(23年度530億円)――がそれぞれ含まれる。
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