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厚労省監麻課 広告違反疑い延べ74件、医薬品数延べ45件 18年度広告監視モニター報告

公開日時 2019/05/20 03:52
厚労省医薬・生活衛生局監視指導・麻薬対策課は5月17日、2018年度医療用医薬品の広告活動監視モニター事業の報告書を公表した。18年度はモニター調査期間を8か月(前年度は5か月)とした。この間に疑義報告が行われた医薬品数は64件、うち広告違反が疑われた医薬品数は延べ45件あり、指導の対象となった。なお、違反が疑われた項目は延べ74件。項目別にみると、「エビデンスのない説明を行った」が14.9%(11件)で最も多く、次いで「(引用時に)データの抜粋・修正・統合等を行った」が12.2%(9件)となった。なお情報の入手方法としては、「製薬企業担当者(口頭説明)」が全体の48.9%を占めた。

◎エビデンスのない説明


違反が疑われた項目のうち「エビデンスのない説明を行った」ものが11件あった。公表事案の一つに酸分泌抑制薬の事例が紹介されている。当該製品の情報提供に際し、企業担当者が口頭で「異なる規格の製剤の情報をもとに、エビデンスに基づかない説明を行った」というもの。当該薬剤は、逆流性食道炎の維持療法について、10mg製剤または20mg製剤の使用が想定されている。また、審査報告書には10mg製剤の1日2回から1日1回への減量についてしか記載されていない。ところが今回の事例では「医師の判断で減量が可能であることを根拠に、5mg製剤も使用可能」と企業担当者から説明を受けていた。この製剤については、すでに後発品メーカーが、10mg製剤、20mg製剤を販売しているが、5mg製剤については販売していない。

◎データの恣意的な抜粋・修正・統合など

「データやグラフの恣意的な抜粋・加工、強調・見せ方等を行った事例」の公表事案として、脂質異常症治療薬の事例が紹介されている。問題のデータは、院内説明会のプレゼン用スライドに含まれていたもの。3群比較試験結果のうち1群または2群の結果のみをグラフで示した。3群のうち2群は当該薬剤(低用量群、高用量群)だが、TG変化率等を比較するグラフにおいて、低用量群とプラセボ群のみの結果が紹介されていた。この事案に用いた3群比較データは審査報告書に記載されていたもの。「本剤を増量しても効果に大きな差異はない」という情報も重要であり、3群比較試験の結果をきちんと説明すべきであると指摘している。

◎未承認の効能効果や用法用量を示した事例

「未承認の効能効果や用法用量を示した事例」の公表事案として、保険査定を受けないことを説明し、暗に添付文書の記載内容に反する処方を勧奨した事例を紹介している。パーキンソン病治療薬について企業担当者が口頭で説明したもの。添付文書では、重篤な副作用発現の恐れがあるため、記載の併用禁忌薬剤との投与間隔について、所定の間隔を置くよう明記している。これに対し企業担当者は、「投与間隔については明確なエビデンスがあるわけではなく、短縮しても保険の査定対象とならない」との説明を行っていた。「同様の説明は地域の医療機関で広く行っているようであった」と指摘しており、会社ぐるみの組織的なケースとして疑われている。

◎他社製品の誹謗

「他社製品の誹謗およびそれに類する説明を行った事例」の公表事案では、「本剤のバイオシミラーにとって不利益となる情報提供を積極的に行った事例」も報告された。抗がん剤を販売する企業担当者から、他社のバイオシミラーについて情報提供を受けた事案だ。問い合わせを行っていないにもかかわらず「本剤のバイオシミラーが海外で承認されなかった」との情報提供を受けたというもの。先行して当該バイオ医薬品を使用している患者について、バイオシミラーに切り替えることはできないとの説明や、本剤と無関係の別の製品のバイオシミラーについても、「効果は疑問」「精製が悪い」といった発言があったという。

◎違反疑いの薬剤 上位は、抗がん剤、鎮痛薬、糖尿病治療薬

今回の報告書では、違反が疑われた医薬品の種類についても言及している。特に、抗がん剤、鎮痛薬、糖尿病治療薬が数多くあげられた。いずれも先発品と後発品が含まれている。このほか、情報提供の方法については、製薬企業の担当者が医療機関を訪問して行う‟クローズドな場“が16年度、17年度の報告に引き続き目立っている。さらに、同一医薬品について、複数のモニター医療機関から類似した報告が寄せられるものがあった。企業の組織ぐるみの対応を疑わせるものだ。

◎医療者向け情報サイトのプロモーションにも注意を

このほか報告書では、医療関係者向け情報サイトでのプロモーション動画について、「本来伝えるべき情報が伝えられていない」、「出演している医療関係者個人の意見をプロモーションに用いている」、「正確性に欠ける引用を行う」などの不適切と疑われる事例が見られたことを指摘している。報告書では、製薬企業等のホームページだけでなく、こうした情報サイトでのプロモーションにも十分に注意をしていく必要があるとの見解を示している。
 
 
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