厚労省医薬・生活衛生局監視指導・麻薬対策課は8月22日、「2022年度医療用医薬品の販売情報提供活動監視事業」の報告書を公開した。広告違反が疑われた医薬品数は17件。違反が疑われた項目は延べ23項目あった。前年度に比べて違反疑い件数、疑い延べ項目数とも3件減少した。違反が疑われた項目は、「エビデンスのない説明を行った」（39.1％）が最も多く、次いで「有効性のみを強調した（副作用を含む安全性等の情報提供が不十分な場合も含む）」（26.1％）。違反が疑われた医薬品情報の入手方法は、「製薬企業担当者（オンライン・Webグループ面談・院内）」が最も多く、次いで「製薬企業担当者（オンライン・Web個人面談）」だった。

◎「エビデンスのない説明を行った」39.1％、有効性のみを強調」26.1％

モニター対象期間は、2022年度中の9か月間とした。違反が疑われた項目をみると、最も多かったのが「エビデンスのない説明を行った」で9件（39.1％）、次いで「有効性のみを強調した（副作用を含む安全性等の情報提供が不十分な場合も含む）」が6件（26.1％）、「誇大な表現を用いてデータを説明した」が2件（8.7％）、「他社の製品を誹謗・中傷する表現を用いた」が2件（8.7％）だった。逆に、「信頼性の欠けるデータを用いた」、「整合性のないデータを用いた」、「（引用時に）データの抜粋・修正・統合等を行った」、「上記以外で事実誤認の恐れのあるデータ使用・加工をした」、「利益相反に関する事項を明記しなかった」に該当する違反疑いはゼロ件だった。

◎情報の入手方法　Webグループ面談、Web個人面談が上位にランク

一方で違反が疑われた医薬品に関する情報の入手方法は、製薬企業担当者によるWebグループ面談、Web個人面談が上位にランクされており、報告書では、「違反が疑われた事例の多くは、製薬企業担当者を介した情報提供に関するもので、製薬企業の担当者によるオンライン面談を通じた情報提供で不適切な事例が多く挙げられた」と分析している。

このほか、2019年10月に設置した「医療関係者向け医療用医薬品の販売情報提供活動に関する調査窓口」に寄せられた「一般報告」の疑義報告は、違反が疑われた延べ医薬品数は5件、違反が疑われた延べ項目数は9件だった。

◎報告の多い違反疑い医薬品　免疫疾患治療薬、その他の腫瘍用薬、先天性代謝異常症治療薬

違反が疑われた医薬品の種類（報告が多い順）についてみると、免疫疾患治療薬、その他の腫瘍用薬、先天性代謝異常症治療薬、その他の循環器官用薬、糖尿病治療薬、抗てんかん剤、不眠症治療薬、利尿剤、無機質製剤、その他の呼吸器官用薬、その他のホルモン剤となる。

◎不適切な販売情報提供活動は減少　オンライン上の不適切事例は引き続き注視

報告書では2022年度事業の結果について、①訪問制限を行っている医療機関では、製薬企業のＭＲ等から、オンラインでの面談・製品説明などの販売情報提供活動が積極的に行われた、②不適切な販売情報提供活動は減少しているものの、対面・オンラインなどの形式を問わず、依然として、「エビデンスのない説明を行った」、「有効性のみを強調した（安全性を軽視した情報提供活動も含む）」といった不適切な販売情報提供活動事例がみられた、③製薬企業担当者が販売情報提供活動ガイドラインを熟知した上で、同ガイドラインに抵触しないよう、販売情報提供活動を行っていることが疑われる事例が見られた、④医師に限定したオンラインセミナーなども多い。クローズドな場での販売情報提供活動に加え、こうしたオンライン上においても不適切事例がないか、引き続き注視する必要がある―と総括している。

◎「医療関係者が必要とする情報が適時適切に提供されないこと自体も問題」

今後の課題として、「医薬品の情報提供に過度に慎重になっている製薬企業・担当者が増えた、製品情報概要など既に資料に記載されている情報以外の情報提供が少なくなったという意見が医療従事者から挙げられている」と指摘。「医療関係者が必要とする情報が適時適切に提供されないこと自体も問題であるというスタンス」としながら、医療関係者からの求めがあった場合など、「医療に支障が生じないように、現行制度を十分に理解した上で医療従事者に誠実に販売情報提供活動を行うことが求められる」との見解を明記している。