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【FOCUS 製薬企業・MRのタッチポイントは確実に変わる】

公開日時 2019/11/29 04:52
政府は2020年度からレセプト情報・特定健診等情報データベース(NDB・ナショナルデータベース)や介護保険総合データベースの連結解析を本格化させる。行政や保険者だけでなく、研究者や民間事業者などの利活用も視野に入れており、いよいよ「データヘルス改革」の幕が上がることを意味する。特に地域医療においては、患者一人ひとりに対する治療の最適化やQOLの向上、さらに治療満足度や治療アウトカムの向上などに寄与するものと期待される。(沼田佳之)

製薬産業にとってもデータヘルス時代のマーケットアクセスに大きな変化をもたらすだろう。一つは事業機会の創出だ。政府は、健康寿命の延伸を旗印に、健康・予防(未病)・診断・治療・予後(QOL)を横串に指したプラットフォームの構築を目指している。医療ICTを活用し、ビッグデータを解析することで、ヘルスケア全般のサービスを最適化する。このため産業側に対しても、製薬産業や医療機器メーカーだけでなく、保険会社やIT ベンチャー、社会インフラ系企業、アカデミアが一堂に介す、総合的なヘルスケア産業に対する振興を厚くする考えだ。

◎医師と患者の「会話」に耳を傾ける

これにより製薬企業の活動も大きく構造転換することになる。これからのMR活動にフォーカスして考えてみたい。ここ数年で多くの革新的新薬が誕生し、これまで難しかった難治がんや希少疾患を治癒できるようになった。特に、がん領域において、患者はガンサバイバーとして職場復帰を目指せるという社会的イメージも拡がっており、政府が主導する「人生100年時代」の制度設計に一役買っている。であるならば、製薬企業は革新的新薬の創出はもとより、自社新薬で病気を克服した患者のパートナーとして社会復帰をサポートする活動にも関わるべきだ。

医師と患者の「会話」を高めることは、結果的に副作用対策や重症化予防にも寄与し、患者のQOLや治療アウトカムの向上にも結びつく。医療施設、医療者、患者が一つのネットワークで結ばれるならば、そのゴールは、病気を克服して日常生活を取り戻すことに他ならない。すなわち製薬企業のMRが目指す最終のゴールは、これまでのように、単に「治療機会」を医師や薬剤師への情報提供を通じて創出するだけでなく、「病気を克服した患者の社会復帰の支援」に注力すべきではないだろうか。

◎変わる「在宅医療」の概念

これまで我々は病院や診療所を受診することが「医療」と捉えてきた。在宅医療の本質は、日常生活の中にある「医療」である。自宅のリビングのTVモニターにホームドクターが映し出され、オンライン上で診療し、医師は家族全員の健康を見守る存在に変わる。すなわち健康を中心とした「医療」への転換を意味するのだ。だとすればビジネスの視点も、健康を軸に診断や治療の最適化を生み出すソリューションや、病気を克服して職場や学校に戻る時の不安や心配を取り除くソリューションの開発が求められるという訳だ。

もちろん、こうした時代のMR活動は、自社品のプロモーションに加えて、患者の社会復帰支援プログラムというソリューションの提供もあわせて行うことになるだろう。そのソリューションこそ製薬企業1社が手掛けるのでなく、保険会社や損保会社、IT企業やスタートアップ、アカデミア、さらには日本を代表する社会インフラ系企業など、複数の他産業が一体となり付加価値を提供することになる。まさにビッグデータ時代に相応しい産業構造への転換が図られるという訳だ。製薬産業の構造転換は始まったばかり。平成から令和に時代が移り変わる中で、製薬産業が目指す「社会貢献」の意味合いも大きく変わろうとしている。


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