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キョーリン製薬・荻原社長 デジタル整備で「小回り利く営業活動できる」 ウェブ講演会も自前で

公開日時 2020/11/09 04:50
キョーリン製薬ホールディングスの荻原豊社長は11月6日、2021年3月期(20年度)第2四半期決算のウェブ会見で、19年度にMRに貸与しているノートパソコンを一新してウェブ面談ツールを導入・実装したことから、コロナ禍におけるデジタルを用いた情報提供活動がスムーズに進んだとの認識を示した。しかし、▽強みを持つ呼吸器科、耳鼻咽喉科、小児科での受診抑制▽感染症罹患者の減少による抗菌薬市場の低迷▽MRの対面訪問自粛に伴う新薬の市場浸透の遅れ――によって、20年度上期は売上477億円、前年同期比1.2%減となった。営業利益は15億円、前年同期比91.7%増だった。自社創製の過活動膀胱薬ベオーバの伸長による原価率の改善や、MR活動の自粛による販管費の減少が大幅増益の理由となる。

キョーリン製薬HD子会社の杏林製薬では、デジタル強化の一環として、19年度にノートPCを一新し、各MRがウェブ面談をできるようにした。「Zoom」を用いたウェブ講演会の環境も整えた。荻原社長は、「当社では昨年度にデジタルの体制を整え、小回りの利く営業活動ができる。ウェブ講演会などは、業者が間に入ることなく、自前で全てやっていける」と述べ、ウィズコロナ時代に求められるリアルとデジタルを融合させた情報活動の推進に自信をみせた。MRのリアル面談は平時の70%ほどに回復したとし、緩やかながらも回復傾向にあるとの認識も示した。

同社は現在の中期経営計画で、「オリジナリティーの追求による成長トレンドの実現」を掲げている。デジタルにかかわる社内の複数の部署のスタッフでクロスファンクションチームを立ち上げ、差別化につながるデジタルソリューションの開発に取り組んでいる。例えば医師とのコミュニケーションツールのひとつとしてメールシステムを開発。詳細は非開示だが、既に実装済みだという。

■リアル面談+ウェブ講演会

20年度上期売上の内訳は、国内新薬などで構成する「新医薬品等(国内)」は329億円(前年同期比2.6%減)、後発品は144億円(1.3%増)――などとなった。売上原価率は48.0%で、前年同期から1.2ポイント改善した。研究開発費を除く販管費は181億円(同2.7%減)だった。

主力製品の売上と今後の展開をみると、右肩上がりに成長していた喘息治療薬フルティフォームの上期売上は64億円(前年同期比3億円減)で、新型コロナによる受診抑制の影響を受けた。下期は平時の90%程度まで市場が回復すると予測、下期売上は82億円(同3億円増)と設定した。リアル面談に加えてウェブを活用した喘息管理の講演会を積極的に実施し、目標達成を目指す。

■ベオーバの出荷調整「今年度の解除は非常に厳しい」

ベオーバは19年12月の長期処方制限が解除されてから急拡大し、20年度上期は売上38億円(同32億円増)となった。しかし、20年4月から、需要増に対応できず、出荷調整が続いている。荻原社長は会見で陳謝するとともに、「今年度の出荷調整の解除は非常に厳しいが、早期の回復に努力していく」と述べた。増産に努めているものの、製造が非常に複雑で、増産のための化合物の調達にも時間を要していると説明した。下期売上は35億円(同2億円減)と設定した。

20年1月に発売したキノロン系経口抗菌薬ラスビックの上期売上は2億円にとどまった。感染予防の徹底による感染症罹患者が減少し、MR活動の自粛により「十分な製品普及が出来なかった」ことが低迷の理由だ。下期は一転して、売上16億円を目指す。MRのリアル活動がしやすくなっているほか、コロナ禍の中で情報ニーズが高まっている呼吸器感染症や喘息のウェブ講演会を積極的に展開し、目標を必達させる。同剤の注射薬の承認取得・上市も目指す。

後発品事業の上期売上は144億円(同2億円増)だった。この約4割にあたる57億円はオーソライズドジェネリック(AG)3製品の売上で、キプレスAGは45億円(同9億円減)、ナゾネックスAGは9億円(同5億円増)、ウリトスAGは3億円――だった。同社によると、各成分の後発品市場(数量ベース)に占めるAGの比率は、キプレスAGが54.5%、ナゾネックスAGが82.2%、ウリトスAGが57.2%――でいずれも50%以上のシェアを維持・獲得した。

■遺伝子治療薬「Ad-SGE-REIC」の開発中止

荻原社長はこの日、悪性胸膜中皮腫を対象疾患にフェーズ2段階にあった新規がん抑制遺伝子REICを使用する遺伝子治療薬「Ad-SGE-REIC」(開発コード)の開発を中止したことを明らかにした。同治療薬は、がん細胞選択的アポトーシスと抗がん免疫の活性化を誘導することが期待される薬剤。

同社の萩原幸一郎・創薬本部長によると、主要評価項目とした無増悪生存期間(PFS)で、「期待していた効果が得られなかった」という。臨床試験データや非臨床試験データなどから、「かなり詳細に患者の層別化による有効性の向上などを検討したが、明確な開発戦略が作れなかった」ため、開発中止を決めたと説明した。

なお、同治療薬は国立研究開発法人科学技術振興機構(JST)からの長期借入金で研究開発していた。開発中止により全額返済すべきところ、今回は長期借入金に対する返済義務が一部免除された。これにより上期の純利益に、債務免除益11億円を特別利益として計上した。

【20年度第2四半期連結業績 (前年同期比) 通期予想(前年同期比)】
売上高 477億3500万円(1.2%減) 1080億円(1.8%減)←修正前1155億円
営業利益 15億200万円(91.7%増) 78億円(4.0%増)←修正前97億円
親会社帰属純利益 21億1800万円(154.0%増) 72億円(17.1%増)←修正前76億円

【20年度第2四半期の国内主要製品売上(前年同期実績) 通期予想、億円】
フルティフォーム 64(67) 145←修正前150
デザレックス 18(0) 75←修正前88
ベオーバ 38(6) 73←修正前70
ラスビック 2(-) 17←修正前41
ペンタサ 64(68) 125←修正前117
ウリトス 16(30) 22←修正前27
ナゾネックス 6(27) 24←修正前26
キプレス(成人製剤) 17(24) 38←修正前42
キプレス(小児製剤) 18(30) 43←修正前53
ムコダイン 14(28) 33←修正前49
ジェネリック計 144(142) 330←修正前349
うち、キプレスAG 45(54) 102←修正前107
うち、ナゾネックスAG 9(4) 35
うち、ウリトスAG 3(-) 8←修正前10
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