開始から2か月を経た米国の新型コロナワクチン接種について、CDCが12月14日から1月13日までの最初の1ヶ月のデータをまとめたレポートを発表した。
https://www.cdc.gov/mmwr/volumes/70/wr/mm7008e3.htm?s_cid=mm7008e3_w
レポート以前の周知の事実は、①ファイザーとBioNTech、モデルナの2製品が使用されていること、②いずれもFDAの緊急使用許可下での使用(承認プロセスが短縮されており、使用許可は特定条件下で一時的であること)、③治験段階で若干の副作用が報告されているが、深刻な健康被害は報告されていないこと―である。
国民の間には、「緊急使用許可のワクチンを受けても大丈夫か?」の懸念・不安があると言われており、CDCのレポートはこうした国民の不安に応えるため、ワクチン副作用レポート・システム(VAERS:Vaccine Adverse Event Reporting SystemおよびV-safe)で収集中のデータを公開するためのものだ。
VAERSはCDCが運営しているワクチン副作用レポート・システム、V-safeは新型コロナワクチンのモニタリングのために特設されたシステムで、スマートフォンを用いて登録・参加でき、自分の接種後の経過データを送信できる有志参加のシステムである。
VAERS(https://www.cdc.gov/vaccinesafety/ensuringsafety/monitoring/vaers/index.html)
V-safe(https://vsafe.cdc.gov/?fbclid=IwAR04vrx7FIYFw8mgRckUZqxGym8MVttYXyvtmTJ1XWF86jZIvaiVSOPEK1E)
CDCのレポートによれば、2020年12月14日から2021年1月13日までに接種されたワクチンは合計13,794,904本で、このうち8,436,863 本(61.2%)が女性に接種されている。V-safeに入力されたデータによれば、V-safe登録者1,602,065 人のうち814,648 人(50.8%) が Pfizer-BioNTechのワクチンを、787,417 人(49.2%) がModerna のワクチンを受けている。
同じ期間にVAERSが受けつけた事故レポートは6994件であった。そのうち6354件(90.8%)は軽度の副作用の報告で、症状としては頭痛(22.4%)、倦怠感(16.4%)、めまい(16.5%)の順に多かった。また副作用の報告は2回目の接種後に有意に高い傾向が見られたが、これは期間内に2度目の接種を終えていたPfizer-BioNTechだけに関する結果で、Modernaについてはまだ2度目の接種が終わっていないため、今回はデータがない。
深刻な副作用の報告が640件(9.2%)あり、アナフィラキシーは100万接種あたり4.5件の発生頻度であった。他のワクチン接種後のアナフィラキシー出現頻度はインフルエンザ1.4件、肺炎2.5件、ヘルペス9.6件であることから、これまでのところCOVID19ワクチンが際立って高いとは言えない。
ワクチン接種後に亡くなったケースが113件あり、そのうち78件(65%)は長期療養施設入所者であった。死亡者については死亡報告書や解剖所見報告書が精査されており、また医療機関で治療中であった患者の場合には当該機関の診療録から、可能な限り詳細に死亡原因が検証され、COVID19ワクチンとの関連が追究されている。が、これまでのところ直接ワクチン接種に起因する死亡例はなく、いずれも別の医学的な諸問題に起因する死であったと報告されている。
以上から、CDCは実施最初の1ヶ月の副作用報告は治験結果から想定されていた範囲内にとどまっていると結論している。だが、同時にCDCは、VAERSとV-safeによるデータ収集・解析に基づくモニタリングの限界として、以下の3点を指摘している。
①VAERSはすでに確立されたシステムとはいえ、ワクチン接種業社や製薬企業等外部からの入力待ちの受動的調査方法をとっていることから、網羅的調査とはいえない。
②V-safeの参加はスマートフォン・ユーザーに限られ、また接種サイト等でのプロモーションによって参加率が左右されることから、サンプルに偏りがある可能性が高い。
③長期療養施設関連のデータについては、施設入所者とスタッフのデータの区別がついていない場合がある。
CDCは企業・医療機関等に対してはVAERSへの副作用レポートを確実に行うよう行政指導を強化し、ワクチン実施サイトの運営者に対してはV-safeへの参加の呼びかけを強化・徹底するよう求めるとともに、今後も副作用の動向を定期的にレポートすることで国民の啓発につとめ、広くデータ収集への協力を求めていく構えだ。(医療ジャーナリスト 西村由美子)