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キョーリン製薬 21年3月期は減収減益 呼吸器科・耳鼻科など注力市場の受診抑制影響

公開日時 2021/05/13 04:49
キョーリン製薬ホールディングスの荻原豊社長は5月12日の決算会見で、2020年度(21年3月期)は減収減益となったと報告した。注力市場の呼吸器科、耳鼻咽喉科、小児科で起こったコロナ禍による受診抑制の影響が大きかった。連結売上は1029億円で前年度比6.4%減だった。ただ、注力市場は15%縮小したとして、「6.4%の減収で済んだ。残念ながら成長するまでには至らなかった」との認識も示した。過活動膀胱治療薬ベオーバの出荷調整の解除は2022年度中になることや、後発品の更なる需要や品質問題に対応するため新工場の設立を検討していることも明らかにした。

◎「デジタルだけでは競合品から切り替わらない」

コロナ禍で、HP市場を中心により厳しくなったMRの訪問規制に対応するため、同社もデジタルを活用したプロモーション活動に努めた。しかし、「デジタルだけでは競合品から切り替わらない」(荻原社長)との状況もあり、新薬の市場浸透に遅れが生じた。

荻原社長は、「一般的に、医療従事者から興味がわかないと、自ら情報を検索するなどの情報収集に動かない。興味があることについては非常に浸透しやすい」と述べ、顧客に当該新薬に対する興味・関心がある場合にはデジタルは有用で、新薬が市場浸透しやすいとの認識を示した。

一方で、当該新薬に対する興味・関心が必ずしも高くない顧客にどのように対応していくかが課題となる。この点について荻原社長は、「適正使用していただくための情報提供を行うことがMRの本分としてある」とした上で、「(医療従事者に)興味がない情報であっても、知っておいていただかなければならない情報はしっかり伝えられる状況を作らないと、MRの本分を全うできているとはならない」と指摘。デジタルとリアルを融合させつつ、伝えるべき情報をしっかり伝える活動に地道に取り組む意向を示した。

◎フルティフォーム 売上減も市場シェアは2.3ポイント上昇

20年度の連結業績は売上1029億円(前年度比6.4%減)、営業利益58億円(22.9%減)だった。コロナ禍による注力市場での受診抑制や、2%台の薬価改定影響が減収減益の主な理由となる。

製品売上や戦略を見てみる。最主力品の喘息治療に用いるICS/LABA配合剤フルティフォームの20年度売上は133億円(9.0%減)だった。同社によると、ICS/LABA市場は20年度に18%減少したが、フルティフォームの売上シェアは前年度から2.3ポイント増の15.5%に拡大した。今後もエアゾール製剤の有用性などを訴求し、喘息治療のファーストチョイスのポジショニングの確立を目指す。

◎デザレックス 内科の活動強化、夏場の皮膚疾患で処方獲得目指す

抗アレルギー薬デザレックスは57億円、前年度比120%増だった。しかし、20年11月に見直した売上計画に18億円届かなかった。コロナ禍による受診抑制などで抗ヒスタミン薬市場が20年度に12%減少した影響が大きかった。

とはいえ、同市場におけるデザレックスの売上シェアは前年度から3.3ポイント増の4.9%に伸びた。荻原社長は「いよいよ増加傾向が強まっている」とさらなる成長に自信を見せた。21年度は現在シェア3位の耳鼻科での処方獲得率1位を目指すとともに、内科での▽採用軒数拡大▽夏場の皮膚疾患での処方獲得――を目指して取り組む。

◎ベオーバ 21年度は20年度比1.5倍量に、22年度に出荷調整解除

想定以上の需要で出荷調整が続いているベオーバ(自社販売分)は売上73億円、前年度比70%増だった。荻原社長は、出荷調整が続いていることを陳謝した上で、「各製造委託先において設備増強等を進めるとともに、新たな製造先の立ち上げに総力を上げて取り組んでいる。出荷調整の解除は22年度中になる見込み」と説明した。なお、21年度は20年度比で1.5倍量の増産を見込んでいるとしている。

◎感染症領域の予防・診断・治療をミックスして「ソリューション」を提案

社会全体での感染対策の徹底により、感染症の罹患者数は激減した。これに伴い同社の分析では、経口抗菌薬市場は20年度に34%縮小した。同社の新規の合成抗菌薬ラスビックも影響を受け、20年度の売上は9億円(前年度比19.6%減)と、売上計画の半分にとどまった。

荻原社長は感染症治療薬市場について、「非常に市場は変化し、揺らいでる。一時は治療の市場であったが、いまは予防、ワクチン、診断の市場と、いろいろな形に揺らいでいる」と指摘した。同社が取り組みを加速させている感染症領域での予防・診断・治療をミックスして解決策を提案する「ソリューション提供活動」をより推進し、必要に応じてラスビックを訴求して経口抗菌薬売上でトップを目指す。

同社では、「ソリューション提供活動」を感染症領域からスタートさせており、感染症関連製品売上は20年度58億円、21年度は83億円に拡大する見込みとしている。

◎富山県高岡市に新工場設立へ 後発品の需要増などに対応

後発品事業の20年度売上は322億円で、前年度比3.9%増だった。薬価改定の影響は大きかったが、増収とした。オーソライズドジェネリック(AG)で後発品市場の過半数のシェアを獲得しており、ウリトスAGは後発品市場の57.5%、キプレス(成人製剤)は同56.7%、ナゾネックスAGは同79.5%――を占めているという。

荻原社長は会見で、今後も後発品の更なる需要に応えていくため、富山県高岡市に新工場を設立する計画があることを明らかにした。高岡市にある後発品事業を展開するキョーリンリメディオの高岡創剤研究所で後発品を自社開発する能力が高まったことや、業界全体の後発品の品質問題に対応するねらいもあると説明した。

【20年度連結業績(前年度比) 21年度予想(前年度比)】
売上高  1029億400万円(6.4%減) 1026億円(0.8%増)
営業利益  57億8600万円(22.9%減) 33億円(43.0%減)
親会社帰属純利益 61億3000万円(0.3%減) 27億円(56.0%減)

【20年度の国内主要製品売上高(前年度実績) 21年度予想、億円】
フルティフォーム 133(146)139
デザレックス 57(26)72
ベオーバ 73(43)86
ラスビック 9(11)28
ペンタサ 128(133)117
ウリトス 23(58)10
ナゾネックス 28(60)18
キプレス 83(118)69
ムコダイン 33(58)29
ジェネリック計 322(310)331
うち、キプレスAG 108(115)92
うち、ナゾネックスAG 38(28)35
うち、ウリトスAG 7(-)7

【訂正】下線部に誤りがありました。訂正しました。(5月13日10時00分)
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