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骨太原案 「診療報酬改定DX」導入へ 医療機関の機能・経営状況の“見える化”で国民目線の改革推進

公開日時 2022/06/01 04:52
政府の経済財政諮問会議が5月31日に公表した骨太方針原案(関連記事)では、「診療報酬改定DX」を行政や医療界、医学界、産業界が一体となって進めることを明記した。医療機関の経営状況について全国的な電子開示システムなどを整備することで、“見える化”を推進する考えを示した。病床機能やオンライン診療の実績など医療提供体制も見える化を進める。これにより、「機能分化と連携を一層重視した医療・介護提供体制等の国民目線での改革を進める」ことを目指す。骨太方針は与党調整を経て、6月上旬にも閣議決定される。

骨太方針原案では、医療提供体制のあり方について、「今後の医療ニーズや人口動態の変化、コロナ禍で顕在化した課題を踏まえ、質の高い医療を効率的に提供できる体制を構築するため、機能分化と連携を一層重視した医療・介護提供体制等の国民目線での改革を進める」と明記した。

昨夏のコロナ第5波では、即応病床と申告し、病床保険料を受け取りながらも新型コロナ患者の受け入れを伴わなかった幽霊病床の存在がクローズアップされており、病床機能の明確化の必要性が指摘されていた。一方で、22年度診療報酬改定をめぐる議論では、補助金を含めると、医療機関経営は黒字であることなども指摘されていた。

◎医療DX 医療・介護費の適正化、サービスの効率化・質向上へ


こうしたなかで、骨太方針原案では、医療・介護分野でデジタルトランスフォーメーション(DX)を進める必要性を明記。医療・介護費の適正化を進めるとともに、サービスの効率化・質向上を図る考えを示した。政府に総理を本部長とし関係閣僚により構成される「医療DX推進本部(仮称)」を設置する。

そのうえで、「経営実態の透明化の観点から、医療法人・介護サービス事業者の経営状況に関する全国的な電子開示システム等を整備するとともに、処遇改善を進めるに際して費用の見える化などの促進策を講じる」と明記した。補助金については、「事業収益と分けるなど、見える化できる内容の充実」も検討するとした。なお、現在医療法人事業報告書の電子開示システムの整備に向けた検討が進められている。また、「G-MISやレセプトデータ等を活用し、病床確保や使用率、オンライン診療実績など医療体制の稼働状況の徹底的な“見える化”を進める」ことも盛り込んだ。

◎「診療報酬やその改定に関する作業を大幅に効率化」


「診療報酬改定DX」については、「デジタル時代に対応した診療報酬やその改定に関する作業を大幅に効率化し、システムエンジニアの有効活用や費用の低廉化を目指すことをいう。これにより、医療保険制度全体の運営コスト削減につなげることが求められている」とした。診療報酬改定はこれまで、医療経済実態調査の結果を踏まえて、実施されてきた。ただ、サンプル数が少ないことや、厳密な診療報酬改定の影響が把握できないことが指摘されている。

財務省の財政制度等審議会は建議で、「医療機関の経営状況を迅速かつ広範に把握できないことが、財政支援が過大となる一因であることを踏まえれば、この「見える化」の仕組みを構築すべき」と指摘。社会福祉法人の WAM NET (社会福祉法人の財務諸表等電子開示システム)を例にあげ、「社会福祉法に準じた必要な法制上の措置を講じた上で医療法人の事業報告書等をアップロードで届出・公表し、一覧性があり、かつ誰もがアクセス可能な全国ベースの電子開示システムを早急に整えるべき」と主張していた。病床機能報告と連動する必要性も指摘していた。

◎リフィル処方箋「周知・広報の推進とあわせた普及・定着のための仕組みの整備を実現」


「タスク・シフティングや経営の大規模化・協働化、オンライン診療の活用を推進」することで、医療・介護サービスの生産性向上や医療DXの推進を図る考えを示した。2022年度診療報酬改定で導入されたリフィル処方箋については、「良質な医療を効率的に提供する体制の整備等の観点から、取組の検証を行うとともに、周知・広報の推進とあわせたリフィル処方箋の普及・定着のための仕組みの整備を実現する」とした。

医療DXのインフラとなるオンライン資格確認については、「保険医療機関・薬局に、2023年4月から導入を原則として義務付ける」と明記。22年度診療報酬改定で、オンライン資格確認を通じて取得した患者情報を活用して診療を実施することについての評価として新設された「電子的保健医療情報活用加算」については、中医協で見直しを検討することも明記された。

◎かかりつけ医 “国民目線で改革”

焦点となっていたかかりつけ医については、国民目線での改革を進め、「かかりつけ医機能が発揮される制度整備を行う」とされた。「今後、生産年齢人口が急速に減少していく中、高齢者人口がピークを迎えて減少に転ずる2040年頃を視野に入れつつ、新型コロナ禍で顕在化した課題を含め、2023年、2024年を見据えた短期的課題及び中長期的な各種の課題を全世代型社会保障構築会議において整理し、中長期的な改革事項を工程化した上で、政府全体として取組を進める」とされている。

なお、全世代型社会保障構築会議が5月17日に取りまとめた、議論の中間整理では、「今回のコロナ禍により、かかりつけ医機能などの地域医療の機能が十分作動せず総合病院に大きな負荷がかかるなどの課題に直面した。かかりつけ医機能が発揮される制度整備を含め、機能分化と連携を一層重視した医療・介護提供体制等の国民目線での改革を進めるべき」、地域医療構想についても「病院のみならずかかりつけ医機能や在宅医療等を対象に取り込み、しっかり議論を進めた上で、さらに生産年齢人口の減少が加速していく2040年に向けたバージョンアップを行う必要がある」としている。
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